さえこ(彩輝なお)のマレーネ・ディートリッヒ | CD&コンサート制作日誌

CD&コンサート制作日誌

音楽プロデューサーとしての毎日を書きとめます。

先週 ようやく「ピアフ」を拝見。
大竹しのぶの熱演、怪演に、ラストは涙が止まらなかった。

舞台は短いシークエンス、エピソードを繋いでゆくのだけれども、
そこに登場するピアフの歌は特にその時代に発表されているわけではない。
時代考証的にはおかしいところもあるが、そこが舞台。

以前「上海バンスキング」が映画化された際、戦後の歌が登場して
白けたのとはわけが違う。

冒頭の街角で歌うシーン
フレールという歌手のモノマネをしていたピアフは
フレールの十八番の「雀のように」をお得意にしていた。
ピアフという名前はここからとられている。

一人の死ぬ間際の娼婦が、少女から身をもちくずして
転落して死の淵を迎えるまでを雀になぞらえて回顧する歌だ。
数ある娼婦ものの中でもメロディーが異質であろう。

私は1936年からデビュー当時のピアフの音源を昔から好きで
LP,CDともによく聴く。

さて、舞台。
ピアフが大竹しのぶに憑依したのではと思わせるほどで、
あっけにとられてみていた。
もともと、クリエは芸術座。
菊田一夫が小林翁から「道楽はほどほどに」と
自分の好きな演劇をリスクを少なく上演できるようにと
東宝劇場の向かいに作られたのがはじまりだ。
この劇場を黒字にしたのが宮城まり子の「まり子自叙伝」だ。
下積みを経て大スターになるまでの物語を菊田が脚色。数か月のロングランとなった。
宮城はその後、菊田と疎遠になり
「放浪記」の主役をゆずらねばならなかった。

私はピアフを見ながら
「これ宮城さんが昔やってたら さぞかしぴったりだろうな」と
思ったりもした。芸術座の初期のにおいを大竹の中に見出した。

最後に、さえこ(彩輝なお)のマレーネ・ディートリッヒ
これは圧巻。
この役はフランスでもアメリカでも無理なのではないか!
この味を出すのは。

「間諜X27号」「上海特急」「西班牙狂想曲」でおなじみの
マレーネに21世紀の東京で再会するなんて。

さえこの軍服とイブニングが未だ目に焼き付いて離れない。
当たり役にめぐりあえて彼女は幸せだ。

私の公演にも参加している彩輝なおの光り輝く魅力を
再発見できた一日だった。