ミレニアムコホート研究 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2013.2.23「妊娠しにくい方のお子さんは喘息が多い?」で、英国の大規模なミレニアムコホート研究を紹介致しました。本論文は、ミレニアムコホート研究第2弾で、予定外の妊娠と体外受精のお子さんは、発達障害が生じる確率が高いことを示しています。

Fertil Steril 2013; 99: 456(イギリス)
要約:ミレニアムコホート研究と称し、2000年~2002年に英国全土で出生した18818名の生後9ヶ月の単胎妊娠の赤ちゃんを対象とし、5歳と7歳でのデータを解析しました。母親にどのような形で妊娠したかと妊娠までに要した期間(TTP)を質問し、次の6群に分類しました:「予定外で困る(2039名)」「予定外だが幸せ(3645名)」「計画通り(TTP 1年未満)(6575名)」「妊娠しにくいが無治療(TTP 1年以上)(505名)」「排卵誘発剤使用(173名)」「体外受精(104名)」。発達障害は、SDQスコアの質問票で行いました。SDQスコアは、お子さんの行為面、多動性、情緒面、仲間関係、向社会性でのサポートが必要かどうかを調べるものです。保護者の方が20問の質問に答え、その得点を評価するもので、スコアの高いお子さんはサポートを必要とします。5歳児の12380名、7歳児の12695名のデータが得られました。SDQスコアは、「予定外で困る」が最もスコアが高く、「予定外だが幸せ」、「体外受精」の順番に高く、この3つは「計画通り(TTP 1年未満)」の方と比べ有意に高いスコアでした。また、「妊娠しにくいが無治療(TTP 1年以上)」「排卵誘発剤使用」では、「計画通り(TTP 1年未満)」の方と同じ程度のスコアでした。

解説:前回紹介した時にも記しましたが、「体外受精」の症例数が少ないため、もっと症例数を増やした検討が必要です。それにしても、望まれないお子さんで本当に発達障害が多いとしたら、妊娠中から出産後の母子関係の構築に問題があるということになるのでしょうか。現在、日本では「エコチル調査」を実施中ですので、その結果が待ち遠しいところです。