Q&A3979 初期胚・胚盤胞につきご教示ください | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 初期胚・胚盤胞につきご教示ください(リプロ大阪通院中)。

胚盤胞到達率が悪く、初期胚を検討するかを悩んでおり、その観点からもご教示いただけますと幸いです。
① かつて、妊活関係の統合医療を受け、その際「卵に力があるから胚盤胞になる(卵に力がないから胚盤胞にならない)」という趣旨のことを言われたことがあります。この見解は正しいのでしょうか。


初期胚凍結・移植につきまして
② これまでの胚盤胞にならなかった胚を初期胚で移植していたら、着床し、妊娠・出産に至っていた可能性はあるのでしょうか。
③ それが「ある」場合、どれくらいの確率でしょうか(①の見解がもし正しいのであれば、「力のない胚」が着床して問題なく生育するのか、という疑問です)。


初期胚に染色体異常が発生していた場合、
④ 染色体異常胚が着床する可能性はどれくらいあるのでしょうかか。
⑤ 胚に染色体異常が発生している場合の自然妊娠と体外受精の着床率に差異はあるのでしょうか(体外受精の方が、着床率が高い?低い?同等?)自然妊娠したものの、安定期直前に、染色体異常に起因する死産を経験しており、初期胚検討にあたり、慎重になっております。

 

A 

① このような非科学的な表現を用いた説明は(概念的に納得させるための説明であり)正しくありません。
② 体外培養で一度も胚盤胞にならなかい方が、初期胚移植ですんなり妊娠されることは、しばしば経験します。胚盤胞にならなければ着床できませんので、その方は生体内では胚盤胞になっていることを示しています。つまり、体外培養は生体内と同じ環境ではありません。
③ 調査した論文がないため確率は不明ですが、初期胚と胚盤胞の正常率は同じであるとの論文があるため、それなりの確率はあるものと考えます(2022.4.10「☆胚盤胞にならないのは染色体異常のせい?」の記事を参照)。
④ 調査した論文がないためその確率は不明ですが、流産+化学流産の多くが染色体異常と考えられますので、それなりの確率はあるものと考えます。
⑤ 一般に流産率は妊娠方法によらないとされています。着床率や妊娠率は、調査した論文がないため不明です。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。