複数の種類の年金受給権があっても1つの年金しか受けられないが… | 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座

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知れば知るほど奥深い年金制度!
僕も日々勉強ですが、一人でも多くの方に年金の事を知って欲しいと思います。
年金は…正確に書くように努めてはいますが、少しでも年金の事を知っていただければ幸いであります。
一緒に年金について考えてみませんか?

例えば、昭和30年5月生まれの女性の方で、すでに60歳前に遺族厚生年金、障害厚生年金2級の2つの年金の受給権があったとします。

また、厚生年金納めた期間が1年以上であれば、60歳から特別支給の老齢厚生年金の受給権も発生します(特別支給の老齢厚生年金は報酬比例部分と定額部分の2階建てで構成されていますが、この人は65歳まで報酬比例部分のみの支給。共済年金なら62歳から受給権発生)。


60歳時点で3つもの年金の受給権がありますが、65歳までは一番有利な年金1種類(遺族年金なら遺族厚生年金と遺族基礎年金のように種類が同じもの)を選択します。

他の年金受給に変更する場合は選択申出書が必要です。申出月の翌月から選択した年金を受給します(特別支給の老齢厚生年金の受給権発生年齢になる前に年金事務所で試算してもらう事をオススメします。)。


どんなに多くの受給権を持ってても65歳までは1種類しか受給できません。
他の年金は停止します。


ところが、65歳になると受給の組み合わせが増えます。
(共済年金も基本的に同じですが、遺族年金は少~し異なる)

①障害基礎年金+老齢厚生年金

②障害基礎年金+遺族厚生年金(老齢厚生年金があれば老齢厚生年金を超えた分を遺族厚生年金として差額支給)

③遺族基礎年金+遺族厚生年金

④障害基礎年金+障害厚生年金

⑤障害厚生年金3級のみ(例の人は2級ですが…)

⑥老齢基礎年金+遺族厚生年金(老齢厚生年金があれば老齢厚生年金を超えた分を遺族厚生年金として差額支給)

⑦老齢基礎年金+老齢厚生年金

から最も有利な年金を受給します。

特別支給の老齢厚生年金をもらってた人は65歳誕生月に老齢基礎、老齢厚生年金の65歳請求ハガキが送られてくるため、それを出せば⑥⑦を受給する場合は自動で併給してくれますが、他の組み合わせを選択したい場合は選択申出書を提出する必要があります。

また、選択申出書を出した翌月から選択した併給が適用される為、65歳誕生月までに年金事務所なりに試算してもらって65歳誕生月に選択申出書を出すといいでしょう。

どれが一番有利なのかわからない場合は一番有利な支給方法で!と請求すればやってくれます(^^;;


ところでちょっと気をつけてもらいたいのは、この例の人は障害年金の受給権者です。

通常だと、特別支給の老齢厚生年金は報酬比例部分のみですが、この人は障害年金の受給権者の為、60歳からの特別支給の老齢厚生年金を大きく増やす事が可能です(障害者特例)

更に、60歳時点で厚生年金期間が20年以上であれば、この特別支給の老齢厚生年金を増やすことができる障害者特例により定額部分の発生はもちろんですが場合によっては加給年金(配偶者390,100円、18歳年度末前の子がいるなら224,500円。子が3人目以降74,800円)が発生する為、より一層増えることがあります。

ただ、特別支給の老齢厚生年金などの老齢給付は年額108万以上(65歳以上158万以上)で課税対象になるのに対し、障害年金や遺族年金は非課税なのでその辺も加味して有利なほうを選択するといいですね。

また、老齢基礎年金と遺族厚生年金の組み合わせは老齢基礎年金に付く振替加算と付加年金、遺族厚生年金に付く経過的寡婦加算が支給されるのに対し、障害基礎年金と遺族厚生年金の組み合わせだと、老齢基礎年金に付く振替加算や付加年金、遺族厚生年金に付く経過的寡婦加算(昭和31年4月1日以前生まれの人で、生年月日により額が異なる)が支給停止になります。