『baL cafe』のこと
よく晴れた日の土曜日。
いつもの街角で。
昔、よく遊んでいた見慣れたビルをふと見上げると・・・。
そこには
新しいカフェの看板が。
このビルのラセン階段を最後に3階まで登ったのは一体何年前だっただろうか?
そう、思っている間に私の足はこの看板を目指していた。
最後の階段を登り終えると
「どうぞ、お入り下さい」
と言わんばかりにお日様の陽射しが廊下に白の絨毯を敷く。
「いらっしゃいませ~~~ッ!!!」
テンションの高いウェイトレスが出てきた。
「・・・・・・・。あの、一人なんですけど。」
「お好きな場所へどうぞ・・・。」
そこの女店主と思われる女性は、少々けだるそうに私を席へと促す。
「言っとくけど、窓際は陽射しがきついから暑いよ。 カーテンが今日のオープンに間に合わなくてネ。」
なるほど。
今日がオープン初日なのか。
居心地の良さそうな奥のテーブルに進み腰をかける。
注文を取りに来たウェイトレスにコーヒーを頼み、しばらく店内に目を泳がす。
こだわりすぎない事へのこだわりや、懐かしい匂いがする空間。
暖かさや、人の笑い声。
ワタシの座ったこの席で、これから何人の人達がいろんな時間を過ごしては帰っていき、また訪れるのだろう?
女店主が炒れたコーヒーで、これから何人の人達が温まり癒されては笑顔をこの場所に落としていくのだろう?
満足の笑顔。
少し濃いコーヒーをほとんど飲み終える頃、気がつくと店内は満席になっていた。
支払いを済まし、いつの間にか陽射しが柔らかくなっていた外に出る。
ラセン階段を下りながら、テーブルの上のメニューを思い出し
来週は「フレーバーコーヒーを飲んでみよう。」
そう思いながら『baL cafe』を後にした。
退屈な週末や、友達がつかまらない一人ぼっちの休日。
おしゃべりが止まらない恋人達。
考え事を楽しむ余裕。
きっと、それぞれの時間が交差する場所。