美容院で働きはじめた私は

 

社会人1年生のようなもんで右も左もわからない状態
先輩達はどの人も優しかったが
仕事になると、途端に厳しくなる。
 
 
 
私がこの頃やっていた仕事は
スタイリストのアシスタントをしていた。
アシスタントの仕事は様々あって
 
 
 
シャンプーをすることが主ではあったが
あるスタイリストのお客様が2〜3人同時に施術
しなければならないシーンが多々あり
アシスタントは指名が被っているスタイリストを
動かすために
周りをみて考えながら行動することが求められていた。
 
 
 
 
土日や祝日は来店するお客様も多いため
フルに頭を使って
"どう行動したら、あのスタイリストさんを
素早く動かすことが出来るかな?"
と周りをみて考えながら行動するため
土日や祝日の閉店間際には
いつもヘロヘロになっていた。
 
 
 
 
少しでも、行動が間違うと先輩から怒られる日々...
正直怒られることに慣れていない私は
(こっちの気もしらないで!)
と不機嫌になることもしばしばあった。
 
 
 
 
こんなに働いているのに
先輩には怒られるは、給料は安いはで
何度も辞めたいと思っていた私ではあったが.....
 
 
 
私以上に怒られている同じアシスタントの
1年上の先輩とたまたま夜、練習をしていた時に
「美容師って楽しいよね!
大変なこともあるけどさー!そう思わない?」
 
「先輩はあんなに怒られていても、心折れないのが
不思議です(笑)」
 
「もう‼︎バカにしてるでしょー!!(笑)
確かにね、私も心が折れそうな時あるけど
好きで選んだ仕事だからね」
 
「そう、いえば先輩が美容師になったきっかけって
何なんですか?」
 
「あー!実は学生の頃に
初めていった東京の美容院で髪を染めてもらったの
私は普通に茶色でお願いしますって言ったんだけど
"君は茶色より赤茶色の方が絶対可愛いよ"
って言われて、言われるがままにやってもらったの。
仕上げに私が普段やらない髪まで巻いてくれてね。」
 
 
 
「鏡を見た瞬間、別人.....って思っちゃうくらい
鏡の中の私が可愛いって思っちゃったんだ。
そこで思ったの!!私もこの美容師さんみたいに
お客様も知らない自分に出会わせてあげる
職業って素敵だなってね。」
 
 
「そして、当時私の髪をやってくれた人が
私の今の彼氏!!」
 
 
「何それ?出会いが映画みたいですね!
素敵だなぁー!」
 
「まゆちゃんも、美容師になるのが夢だから
ここに就職したんでしょ?」
 
「あっ....えっ....まぁ〜」
 
「お互い夢のために頑張ろうね」
 
そう言われた時に、夢や好きなことがない私は
心にポカンと穴が空いた気分になった。
 
 
(あっ...そういえば、高校の頃にも
同じ気持ちになったことあったっけな.....
華子が夢を語ってる時だったっけ...懐かしい
華子も先輩も羨ましいなぁー)
 
 
それから、何となく始めた美容院での仕事は
練習も苦に感じてしまい
元々、夢やめっちゃくちゃ好きなことでもない
美容院での仕事は夢中になれず
嫌なところばかりが見えてしまって
約1年経ったころには、文句ばかりが増えていた。
 
 
 
 
そして、ついに私は
社会人になって初めて働いた美容院を1年以内で
辞めてしまっていた。
 
 
 
まぁー、家に帰れば
「あんただから言ったでしょ!
美容師は無理だって!
あんなに言ったのに言うこと聞かないから。
辞めたんだったら、再就職しなさい」
と母親からの愚痴が待っていたが
 
 
 
(まだ、私20歳だよ?
若いからどこでも、雇ってくれるでしょ)
とタカをくくっていた。
 
 
 
 
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華子とのランチをしていて
美容師の道を諦めた理由を聞かれていた私は
色んなことが、走馬灯のように巡ってきて昔を思い返していた。
 
 
「美容師の夢を描いていたけど....
アシスタントは給料も安いし
夜も遅いし休みは月曜日しかないし
なんか、私には合わなかったみたい........」
と華子の目を見ずに美容師を諦めた理由を語る私。
 
 
 
そんな私の様子を察したのか
「そっか...美容師さんって確かに大変って言うしね。」
とフォローを入れてくれた華子。
 
 
 
本当はね、華子.....
美容師の夢を諦めたなんてカッコいいこと言ったけど
私は元々美容師を目指そうとしてた訳じゃないんだ。
 
 
 
 
そう、心でいいながら
冷めたスープを飲んでいた。



 
 
◼︎前回の小説はこちらから