口約束でも良いのですか。
衝撃的な裁判例をご紹介します。
誤解ありがち度 3(5段階)
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A 口約束でも「婚約」は成立します。
しかし「誠心誠意」がないと認められません。
ピロートークは,特に「誠心誠意状態ではない」となりやすいです。
【婚約】
結婚を約束して交際してきたのに,彼から「別れる」と言われました。
結婚の約束は法律で保護されないのでしょうか。
→婚約に基づいて結婚を強制することはできません。婚約破棄は,債務不履行として損害賠償責任が生じます。
「結婚をする約束」のことを「婚約」と言います。
分析的に解釈すると,婚姻の予約契約,となります。
「婚約」として認められても,婚姻(結婚)を強制することはできません。
自由な意思が尊重されるからです(日本国憲法24条)。
とは言っても,責任のない自由,というわけではありません。
「婚約」を一方的・合理的理由なく破棄した場合は,債務不履行となります。
債務不履行によって生じた損害を賠償する責任が発生します(民法415条)。
【婚約の認定】
どのような場合に「婚約」として認められるのでしょうか。
→両親への挨拶など,一定のイベントがポイントとなります。
理論的には,「結婚しよう」「結婚します」という口約束で婚約は成立します。
契約書などは必要ありません。
しかし,一言そのようなセリフのやり取りがあったからといって即婚約が成立するわけではありません。
2人が誠心誠意をもって「将来夫婦として生活する」という約束を交わした,という場合に限られます。
そして,結納,両親の同意などがなくても成立するとされています(大審院昭和6年2月20日等多数)。
しかし,実務においては,通常,言葉のやりとりだけではなく,客観的なイベントが重要な婚約認定のポイントとなります。
証拠上の問題や,「真意」と言えるかどうか,というハードルがある程度高いのです。
繰り返しですが,以下のイベントがないと婚約が成立しないわけではありません。
あくまでも「婚約が認定されやすくなる」という意味です。
<婚約成立の認定で重視される客観的イベント>
・婚約指輪を渡した
・結納を済ませた
・継続的な性的関係(妊娠・出産に至った)
ただし,避妊をしない性的関係があったが婚約が否定された裁判例もあります(後掲)
・親族・両親に結婚する旨挨拶した
・知人・友人に結婚することを説明(公表)した
[東京地方裁判所平成16年(ワ)第25008号、平成17年(ワ)第1335号損害賠償請求事件、損害賠償反訴請求事件平成18年1月16日(抜粋)]
原告に対して原告と結婚すると明確な言葉によってはっきりと意思表示をし,そのことを前提とした何らかの具体的な行動をとった事実は認められず(原告と被告とがそれぞれの両親や兄弟又は第三者に対して正式に婚約したと伝えた具体的な事実や,原・被告両名が婚約したとの共通の認識を持つに至るような何らか儀式又は儀式的な出来事があった事実なども認められない。),結局,原告と被告との間に法的拘束力を持った婚約(社会的にも意味のあるものとして存在するに至ったと認識できるような結婚の合意)が成立したとまで断定することはできない。
原告は,原告と被告とが避妊方法もとらずに頻繁に肉体関係を持ったことや原告と被告とが同棲と評価することのできるような生活を送っていたことなどを指摘し,被告が原告と結婚することを前提に行動していたとして,被告の言動について種々主張し供述するが,原告が指摘する上記の事実などから直ちに被告が原告に結婚を約束したと推認することはできないし,また,被告の主張・供述に照らすと,被告の言動に関する原告の供述をにわかに採用することもできない。
【婚約が認定されなかった事例】
結婚の約束が真意ではないとして認められなかったケースはあるのでしょうか。
→いわゆる「ベッドの上での約束は無効」と要約される裁判例があります。
性的関係(情交関係)があり,口頭や手紙で「結婚する」という約束がされていたケースで,最終的に婚約が否定された裁判例が多数あります(後掲)。
理由を要約すると,男女間では,性的関係を持つ前後で,「結婚しよう」と話すことがあるが,これは「婚約」とは認めない,ということです。
つまり,このようなセリフは睦言(現代風に言えば”ピロートーク”)である→誠心誠意の約束ではない,ということです。
時代がやや古いだけに,「男性優位の不公平な判断」ではないかと言われることもあります。
ただ,詳細に読み返してみると,「婚約が成立した場合に発生する責任の重さ」から逆算して,婚約認定のハードルを上げた,ということが分かります。
[東京高等裁判所昭和27年(ネ)第2071号婚姻予約不履行に基く損害賠償請求控訴昭和28年8月19日(抜粋)]
被控訴人が控訴人の婚姻の申込に対し承諾したとはいえ、かくの如きことは本件当事者のような若い男女間には有り勝ちなことで、前示の各証拠を綜合するに双方の一時の情熱に浮かれた行為と認められ、いまだ誠心誠意をもつて将来夫婦たるべき合意が成立したものとは認定し難い。要するに本件当事者のした約束は未だ法律的保護に値する程度の確実な婚姻の予約とは判断し難い。
[大阪地方裁判所昭和24年(タ)第35号慰籍料等請求訴訟事件昭和26年5月15日(抜粋)]
当時原告は当二十一年、被告は当二十五年であつて、前認定のような関係から互に懇親の間柄となり、当初は映画見物やハイキングを共にするに過ぎなかつたが、遂には被告の誘うまま前記の旅館において情交関係を結ぶに至り、前後六七回に亘つてその関係を継続したものであるが、その相互の将来について語り合つたのは、ただ第二回目の関係の前に被告が前記旅館で「親が反対しても一緒になる」と言い、原告もまた「一緒にならう」と話したことがあるだけで、その他には第一回の関係に至るまでの間にも、また第二回の関係以後にも全然何等の話合をもしたことはないのであつて、
(略)
原被告の関係を考えて見れば、右第二回目の関係の前における被告の言も果してどれ程の真面目さを以つて語られ、原告もまたこれをどれ程の真面目さを以て受けたものか、その前後の事情から考え合せ頗る疑問なきを得ないのであつて、結局右原被告の言は所謂閨房の睦言の類を出です、相互間真剣に将来婚姻に至るべきことを約し合つたものとは認めることはできないのであつて、所詮原被告の関係は単純なる双方合意の情交関係に過ぎなかつたものであり、原告妊娠後における被告の態度には道義上遺憾の点が少くはないが、しかもこれを法律上婚姻予約の不履行があるものとは考えることはできないのであつて、右不履行を原因とする原告の慰藉料請求は到底これを容れることはできない。
[前橋地方裁判所昭和23年(ワ)第6号慰藉料並に不当利得金返還請求事件昭和25年8月24日(抜粋)]
たとえ被告が原告に宛て前記の如き文言ある手紙を書き送り、又原被告が將來夫婦となるべきことを語り合つたとしても、右は恋愛関係にある男女の睦言ともいうべく、右事実を目して原被告間に誠心誠意を以て終生の結合を誓う婚姻予約が成立したものとは認め得られず、寧ろ右原被告間の関係は性的享楽を旨としたかりそめの結合たる私通関係に過ぎないものと見るのが相当である。
【婚約破棄の「正当な理由」】
しっかりとした婚約が認められる場合,婚約を破棄すると責任が生じるということでしょうか。
→婚約破棄が,一方的に正当な理由なく,行われた場合に債務不履行責任が生じます。
基本的には,一方的に婚約を破棄された場合,債務不履行として損害賠償請求が可能です。
しかし,正当な理由がある場合は,債務不履行責任は生じません。
正当な理由の例を示します。
<婚約破棄の正当な理由の例>
・被害者に他に交際相手が居た
・被害者側が重要な事情についてウソを言っていた
例えば実際とはかけ離れた収入(給与)額を言っていたり,職業を偽っていたなどです。
・性的不能を隠していた
子孫を残す(出産)は夫婦の重要なイベントとして考えられています。
・被害者側が回復不能な病気にかかった
・被害者側の経済状態が日常生活に支障が出る程度に悪化した
【賠償の対象(損害の内容)】
どのような損害について賠償請求をできるのでしょうか。
→慰謝料請求,その他の損害についての賠償請求が可能です。
賠償請求の対象となる「損害」は,債務不履行(つまり婚約破棄)と相当因果関係を持つ範囲の損害,となります(民法416条1項)。
常識的に,婚約破棄がなければ生じなかった被害だ,と言える範囲という意味です。
また,精神的な苦痛も対象となります。
精神的損害賠償を「慰謝料」と呼びます(民法710条)。
具体例としては次のとおりです。
<婚約破棄の損害賠償の内容(例)>
・結婚式場のキャンセル費用
・結婚に際して同居するために要した賃貸マンションの初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など)
・同居のために購入した家具などの費用
・新婚旅行のキャンセル費用
・婚約指輪の購入代金
・精神的損害(慰謝料)
[民法]
(損害賠償の範囲)
第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
(略)
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
【婚約破棄の慰謝料相場】
婚約破棄による慰謝料としてはどのくらいが相場でしょうか。
→被害者側の過失がゼロという前提では,統計上,30万~300万円程度と広く分布しています。
このように,幅が広いのは,個別的事情による「精神的苦痛の程度」が大きく異なるからです。
<慰謝料額が大きくなる要素>
・女性が結婚を理由として,キャリアーをあきらめた(退職した)
・女性が妊娠(出産)している
・婚約破棄の理由が,「加害者が別の異性と交際を始めた」という悪質なものである
・婚約成立後長期間が経過しており,今後,被害者が別の異性と交際・結婚・出産することが困難になっている
<慰謝料が小さくなる要素>
・上記の逆のケース
・被害者側にも仲を悪くする原因があった
過失相殺(民法722条2項)と同じ考え方です。
・一応婚約は成立しているが,曖昧であり,周囲の認識もそれ程深いものではなかった
なお,「結婚の約束の具体的内容・程度」によってはそもそも「婚約」として認められないこともあります。
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