この日は仕事がたまってしまっているのでこっそり出社した。

三鷹駅北口の「サンライズ」は古ぼけたビルの2階にある、1時間いくらでカラオケの歌えるパブで、昼は500円で定食が食える。前から気になっていたが、ランチは三鷹に来る前に済ませるのが通例なので、この日初めて入ったのが1330頃。



「豚ロースバジル」とかなんとかいうのをたのみ、コンクリート剥き出しの天井にへばりつく冷房から落ちる水滴を目に見、耳に聞きつつ、ああ、バジルは失敗だったかな、前にこういう店で食べて香りのあまりの強烈な個性に箸が動かせなくなったのを思い出した。





が、結論からすれば、まあこんなものかと。500円の味だなと。で、僕はこういう店がけっこう好きだったりする。

ところが、帰る客帰る客みなが懇ろな別れを接客係のおばさんに告げるのを見るにつれ、この店が実はこの日で閉店するという事実にだんだんに気づかされた。

初めて入った店で、店史上最後の客となってしまった。

「今日で最後なのですか?」と帰り際訪ねると、「そうなんですよ、オーナーが体調を崩してしまって……」と泣き出しそうになるおばさん。初対面のおばさんに泣かれては困るねえ、などと思ってしまう自分の酷薄さに心底呆れる。

こういうことは、どの一瞬においてもこの世界のどこかで起こっているはずだ。出会いがあれば別れもあるのさ。May peace prevail on earth.


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