羽黒山随身門。やはりあの道をそのまままっすぐだったのか。

門をくぐって最初は下り坂。でも最初だけだ。だって山ですもの。


樹齢千年という翁杉を拝み、もう一度翁杉の方を振り返ると、おいおい!あんなところに五重塔があるじゃん!杉木立とともに屹立している。





国宝・羽黒山五重塔。

出羽三山は、明治以前は、ご多分に漏れず神仏習合の地であった。というか、もともとは山岳そのものへの信仰があり、そこに仏教や神道が吸収されていった、と言った方が正確なはずだ。

が、明治の神道国教化政策・神仏分離令に端を発し、羽黒山にもすさまじい廃仏毀釈の嵐が吹き荒れた。でもこの仏教建築は残った。当たり前だ。壊せるわけないものね。

思想とか信条とか、そういうものを圧倒するものを本物とよぶ。羽黒山五重塔という物体は、神仏分離・廃仏毀釈の精神を超克した。でも、その五重塔も、もともとは誰かの精神の所産だったりするわけだ。ううむ。

興奮してああとかううとか言っていたら後ろに知らないおじさんが立っていた。彼はこのあと、(当たり前だが)私の後ろをついてくるような成り行きになった。彼が後ろにいてくれたから簡単にへこたれずに上れたのかもしれない。

羽黒山は414mで、高尾山よりずっと低いのだが、当時の私はたくさんの荷物をかかえていた。スケジュールの都合上、山頂からバスに乗らねばならなかったからだ。

五重塔は実は羽黒山の入り口である。このあと一の坂・二の坂・三の坂と続く。

一の坂を登り切ったかと思われる平坦な場所に出た。でまた坂。でも二の坂の表示が見当たらない。まさか、まだ一の坂なのかと絶望しかかったが、坂の入り口間際に二の坂の表示。やれやれ。

二の坂を登り切ったところに二の坂茶屋。もし神がいるとすれば、それは二の坂茶屋のことではないか?とまでは思わないが、とにかく助かった。

茶屋からの眺めも良い。

羽黒山最大の難所は、「油こぼし」も異名を持つ二の坂かと思ったが、実は三の坂だった。だらだら続く緩い坂は、確実に心身を消耗させる。

ようやく山頂。絶対に賽銭などださんからな!

が、三神合祭殿の威容に気圧される。

のんびり休憩している暇は実はなかった。0900山頂発のバスに乗らねばならない。だが、小銭がない!しまった……。賽銭箱に放り込んだんだった……。ううう。

山頂の土産物屋で土産を買ってくずすことにした。しかもバス出発まであと2分。店長お薦めとか言う生姜せんべいを買う。これがイマイチで、職場における私の威信が多少傷ついた。誤解の無いように言っておくと、もっと良さそうな土産はたくさんあった。やはり他者に判断を丸投げした私が悪かった。