中国人の部屋 | メメントCの世界

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中国人の部屋

 

読書感想文です。

ケン・リュウの「紙の動物園」は最高だった。テネシー・ウイリアムズの「ガラスの動物園」へのオマージュに満ちている。

そして「愛のアルゴリズム」はAIに対する疑問に分かりやすく答えてくれる。チューリング・テストと「中国人の部屋」は、どの位、常識なんだろうか?私は全く「中国人の部屋」という概念を知らなかったけれど、それは誰でもわかる理屈だった。

チューリングといえば、戯曲「ブレイキング・ザ・コード」のアラン・チューリングのこと。今や生成系AIの時代になり、チューリングの時代のチューリング・テストは役に立たない。ただ、「中国人の部屋」の定義はまだまだ有効。逆に、人間の認知機能が損なわれて行く中では、全くこれらの機械的な処理の反応は役に立たないだろう。

 

 「中国人の部屋」引用です

 

中国語の部屋(英:Chinese Room)とは、ジョン・サール機能主義を批判し、強いAIの実現可能性を否定するため考案した思考実験である。

中国語が理解できない英国人に、沢山の中国語のカードが入った箱と、そのカードの使い方が書かれた分厚い英語のマニュアルを持って部屋に入ってもらう。部屋には小さな穴が開いていて、そこから英国人は中国語で書かれた質問を受け取る。そして英語のマニュアルに従って、決められた中国語のカードを返す。その英国人は中国語の質問と返答の「意味」がわからないにも関わらず、中国語によるコミュニケーションを成立させており、外部の人からは中国語を理解しているかのように見える。

この思考実験でサールが主張するのは、コンピューターが「計算」することと、「意味」を「理解」することは違うということである。

 

 「中国人の部屋」のことを考えたのは、某研究会で学校の道徳の授業について学習指導要領などの話を聞いたからだ。道徳の学習の目的やめあてが、それぞれに決まっているが、その教科書の文脈と目的の項目が微妙に??ずれていると感じた人が多かったからだ。ここで道徳が機能するための「中国人の部屋」的プログラミングのバグが証明されたように感じたのだ。どれほど、詳細な道徳的行動に対する対応マニュアルがあったとしても、それを知っても、多分、道徳心が理解されると言う事にはならない証明の様に思ったからだ。

 ケン・リュウはITエンジニアでもあり、それらのITの概念が(ガラスの動物園だけでなく)作品世界の骨格になっている。このロジックの深い理解が、原語の壁を超えてワールドワイドに読まれる要になっているのだろう。紙の動物園は、記憶の圧縮と解凍をアナログ的なもの・子ども時代に亡き母が折ってくれた動物の折り紙のメモリーに託した。一粒で3倍美味しい作品だった。