「世界で一番企業が活躍しやすい国」での残業時間 | 御苑のベンゴシ 森川文人のブログ

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 「日本を代表する広告会社の電通に対し、東京労働局が抜き打ち調査に踏み切った。女性新人社員の過労自殺をきっかけに、違法な長時間労働が常態化していた疑いが表面化し、刑事事件に発展する可能性が出てきた。」とのこと(朝日10/15)。

 記事は、「今回の調査には、長時間労働の是正に取り組む安倍政権の姿勢も垣間見える。」なんて続きますが、ほんまかいな?と思います。
 なにしろ、アベノミクスは「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざすわけですからね。「企業=資本天国、労働者地獄」が国家目標とされています。

 加重労働撲滅特別対策班(かとく)の活躍を取り上げていますが、そもそも、資本主義という仕組み自体が本質的に加重労働を労働者に強いるものです。
資本家が労働者の労働に支払う(労働時間で計られる)額と、労働者が資本家に与える額との差が「剰余価値」であり、それを資本家が取る。その「剰余価値」で資本は豊かになる。マルクスは、この剰余価値の資本家の収奪を「搾取」と名付けました。

 資本主義の下、資本は、剰余価値の増大を追求し、そのために労働時間をできる限り延長しようとし、また、技術革新による生産性の向上を求めます。

「働き方改革」?そりゃもっと効率的に、持続可能性をもって搾取されてくれよ、ってことじゃないでしょうか。「違法な長時間労働が常態化」と指摘していますが、そもそも「違法な長時間労働」と「合法な時間」をなんとか区別させたのも19世紀の労働者が文字通り血を流しながら「8時間労働制」を獲得していた過程があったからこそ。「長時間労働の是正に取り組む安倍政権の姿勢」?「かとく」?そんな「お上」が労働者を守ってくれるなんてポーズに決まってるじゃないか!と思います。
 
 亡くなった元女性社員の方は「生きているために働いているのか、働くために生きているのかわからなくなってからが人生」などとSNSで発信していたとのこと。まさに、搾取そして疎外された21世紀の労働者の叫びでしょう。


 同じ日の朝日の「経済気象台」というコラムでは「もっと労組はモノ申せ」というタイトルで「安倍政権の最低賃金の引き上げをはじめとする賃上げへの誘導姿勢は、労使への過剰介入といってよい。」「労組は賃上げにもっと熱心であってもよい。労組の経営への物わかりのよさは目に余るものがある。」「旧民主党(民進党)の支持団体としての連合は一体何を考えているのだろう。内部留保の増大と実質賃金の低下は、一義的に当事者としての労組の不作為に原因があるといえるだろう。野党も労組も安倍内閣を批判する資格はない。」「『同一労働・同一賃金』『一億総活躍社会』も、労組は基本的に働き方への政治の介入に対し、もっと腹を立てるのが、当然ではないか。『自分たちでやるから、ほうっておいてくれ』と抗議すべきがスジである。」と同じ新聞とは思えない痛快な指摘の連発。

 そう、どう見せかけようとしても、労使は本質的に非和解的に利害が対立しているのであって、政府や法律が勝手に残業時間をなんとかしてくれるなんてことはありえない。だからこそ、フランスや韓国でゼネストが闘われているのだから。ましてや、電通というのは資本の代表的な広報機関。電通広報部は「全面的に調査に協力している」との素晴らしい、ウケのよいキャッチコピー、じゃなくてコメントを出しているとのこと(同10/15)。協力するのは、電通広報部の労働者。協力しすぎて長時間労働にならないようにね!