本編2 「静かに語る猫」 | 飽くなき妄想の果て

本編2 「静かに語る猫」

独自妄想その3。
新選組の面々は薄桜鬼のキャラをワタシの脳内解釈の偏見あれど、そのまんまってことで(>_<)

しかし、時間軸が進まない… 
まだ冒頭なので、しょうがないかっ

では、いってらっさいまし!

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「俺の背中がそんなにおもしろいか?」
「!?」

たよりない明かりの中で書をしたためていた土方は、コトリと筆を置き、その背中をゆらめかせた。
そして、部屋の隅でじっと瞳をこらしているモノに向かってやってくる。

「手荒なマネだとは思うがなぁ… 勘弁してくれよ」

両手両足を縛られ、その上猿轡を噛まされたモノがゴソリと身を引く。

「気分はどうだ… 血は今んとこ止まってるみてぇだが…」
「ふぅ~ ぅん」
「おっとすまね そのまんまじゃしゃべれねぇな」

暴れる様子はないその瞳が、ゆっくりと閉じられた。
それを見て、土方はゆっくりと頭の後ろに手を回し猿轡を取り去ってやる。
すると、弱い灯火が映る、深く沈んだ翠の瞳が、大きく2度ほど瞬き見開く。

「夜中に何度も呻きながら暴れまわりやがって… さすがのこっちも寝不足でいい迷惑だ…」

沖田の部屋で起きたようなひどい暴れ方ではないが、あれから彼女は何度も覚醒しては、苦しんでいた。その度に土方は、傷口を押さえて締め上げ何度も止血していた。

「ヒジカタ? トシ?」

かすれてはいたが、確かにその翠の暗い瞳は言葉を紡いだ。
それを聞いて土方は、目を見開く。
こんなに落ち着いて言葉を紡いでいるのを、始めて見たからだ。

「あ ああ 俺は土方だ…」
「ヒジカタ…」

片言で力なくしゃべる口元はひどく扱けていた。

「そういや お前ここ何日も食ってねぇだろ…」
「クッテネェ…?」
「そう 食う」

そう言って、口元で箸を動かすような動作をしてみせるが、相手に反応は無い。
本当に、まるで猫に話しかけているようだ。
そのまましばらく止まったような時間が続く。

「あ~~… 一体どうなっちまってるんだか」
「…」

そこで、「あ」という小さな文字を口に漏らし、土方はゴソゴソと私物を漁りはじめた。
そして、ほどなく小さな紙包みをとり出した。

「そうして起きてて意識あるんなら、薬くらい飲めるだろう」
「クスリっ!?」
「そうっ この薬はな、石田散薬と言って、傷!打ち身!どんな怪我でもたちどころに… っ!?」
「ア… ァァ…」
「おい どうした? またか?」

実家で作っている薬の効能を、小慣れた口調で得意げに口上をあげた矢先、彼女が顔をしかめた。涙を滲ませるその瞳には、いつものような狂気は宿っていない。
それを見て、土方は少しばかりホッとした。

「クスリはダメ…」
「ああ? なぁ~に言ってやがる すこ~し苦いくらいで嫌がるんじゃねぇ ガキがっ!」
「もう少し もう少しで抜ける…」

「抜ける」という意味は到底理解し得なかったが、土方はあきれ顔の後に、ニヤリと口の端をあげた。

「本当に、ここでお前に死なれちゃぁ 寝覚めが悪すぎるってぇもんだ 飲まねぇよりはマシだ!無理にでも飲んでもらう!」

言うが速いか、土方はさ湯が入った自分の湯飲みを引っ掴み、小さな紙包みの中身を自分の口に含み、さらにすばやくさ湯を口に含んだ。
そして、けが人を扱うという気遣いは一切なく、素早く馬乗りになって、彼女の肩を抱きかかえるとその鼻柱を力いっぱいつまんで、自分の口を彼女の口へグイと押し付けた。

「うっ ぅぅぅっ!」

しばらく彼女の身体は抵抗をしていたが、どうにもならない束縛に観念したのか、力を抜き口に含まれたモノをゴクリと身体へ流し込んだ。
それを確認して、土方は掴んでいた鼻柱を開放した。
そこで、すぐに唇も開放するはずだったが、触れた唇の柔らかさに少しばかり名残惜しくなったというのは、心に留めておこうと思った。

「土方さん 何やってんのさ…」

その声にハッと顔を離した頬に追い討ちがあった。
無表情の漆黒に近い翠の瞳が、ギロリと動き、その唾が土方の頬にぺたりと張り付いた。

「欲求不満?」
「…だとしたら、お前のせいだ総司…」
「クスクスクス」

土方は、頬の唾をぬぐいながらゆっくりと起き上がった。

「こいつに薬をやってただけだ」
「ふぅ~ん…」

総司は、ニヤリとした口を作った。

「最終手段でああなったって事で、勘弁しとくよ クスクス」
「それにしても 総司! 部屋に入るなら声くらいかけやがれ! 俺は、大事な書面やっつけてる最中なんだ!」
「あれ~? 声かけたけどな~」
「一日に何度も俺の部屋に来やがって!しかも、今ぁ夜中じゃねぇか!」
「その猫拾ってきたのは僕だもの~ それにさっ 土方さん言ったじゃない?「返せって言っても返さない!」って、でも会いに来ちゃいけないなんて言われてないし~」
「お前… 狙ってやっただろぅ…」
「さぁね~ でさぁ 何かシャクじゃない? この子の笑顔とか一番に見るのが土方さんだったりってさ」

あまりにも悪たれる沖田に、土方は「勝手にしろ」とばかりに肩を落とし、最初の位置に戻って、墨をギリギリと音を立てて磨り始めた。

「気分どう?」

変わり身の速さは彼の特徴なのだろう。
総司は、じぃ~~っと彼女の様子を窺うように、深い翠の瞳に飛びついていた。

「…大丈夫」
「君の名前聞かせてよ まだ聞いてないし」
「猫」
「……本当に猫なの? 気を使って僕の冗談に付き合わなくていいのに クスクス」
「…」
「ちゃんと名前を聞かせてよ 名前がわからなきゃ話も楽しくない」

彼女は、「number zero」と言いかけて思いとどまり、言い直した。

「零番」
「へ? 「ぜろ ばん」? それ名前なの? 変わってるねぇ…」
「そう呼ばれてた」

腕を組んで頭をかしげながら総司は、続けた。

「じゃぁさ 君 いくつ?」
「…?」
「歳だよっ 年齢っ 17?18?19?」
「12で拉致されてから数えてないからわからない」
「ら… ち?」

総司の質問が始まってから、手元に集中しきれなくなっていた土方も、思わず振り返った。

「12で、組織に入ってからすぐに訓練が始まって… 実動したのはたぶん2年」
「ん~~ と ちょっとよくわからないんだけど、どういう事になるのかなぁ」

辛そうに薄く開かれた瞳に更なる影が落とされて、聞き手の二人は次の言葉をじっと待っていた。

「訓練中に、5回か6回ほど冬を見たんだと思う。本当の冬を見ていたかどうか知らない… けど… だから19か20か…」

沖田は少し考えてから言った。

「じゃぁ 19でいいよね 僕より1個下ってことでさ!」
「お… おめぇなぁ…」

安易な決めつけに、土方は今回の件で何度落としたかわからない肩を、疲れ気味に落とした。

「どこ出身?」
「しゅっしん?」
「え~と どこで生まれたのかって事だよ」
「あまり… 記憶がしっかり無い… 冬は、激しく重たい雪が降り積もった、夏は、湿気の多いじっとりとした暑さ…」
「ふ~ん その表現、今、まさに感じるよね こんなに夏が長いなんてさぁ… 湿気が多くてとっても暑いよ 不快だ~  こ~んなに暑いのにさ、土方さんは絶対いっつも障子を開けっぱなしにはしないんだよね~」

沖田は、抗議めいた口ぶりで、わざとらしくパタパタと手で首筋を扇ぐ。

「あ~ そうそう 何で君女の子なのにさ 傷だらけだし、そんな身体してるの?」
「女… ノコ?」
「女の子ってこうさぁ もっと華奢で柔らかいもんだって思ってたからさぁ」
「性別か?」
「あ~ うん そういうことなのかな?」
「女じゃない」
「え~ でも、男の子じゃないよね」

わずかな躊躇いを見せながら、彼女は静かに言った。

「子宮がない…」
「ん~?? シキュウ?」
「…」

どう説明すればよいものかと、彼女は眉間にしわを寄せ、考えあぐねた末に何かを言いかけ、また言いよどんだ。
土方は嫌な予感がして、止めようと腰をあげかけたが彼女の声の方が先だった。

「女が子供を宿す場所が奪われた 俺の腹の一番下にまだ傷が残っているはずだ」 

彼女が言う内容を理解しきったわけではないが、話に起ち上がりかけていた土方が息を呑んだ後に問うた。

「にわかには信じ硬てぇが… 臓物の何とやらが取られてるってことか?」
「…臓物っていうのか?内臓の一部だ」
「そんなことが出来るものか! そんなことしたら、死んぢまうだろうがよ普通!」
「だ… だよねぇ~」
「でも 生きてる、そのおかげかどうかはわからないが、女の子?では出し切れなかったかもしれない身体能力を得た…」

半信半疑で彼女を観察する目が身体に向かう。
そして、総司の脳裏に始めて会った時の… 目に、追いきれなかった彼女の身体の動きがよみがえった。

「あ~~ ねぇ あれっ 何て技だったの?あんな流儀初めて見たよ」
「技?リュウギ?」
「僕の目の前でさ、君… 六人も殺したんだよね~」

すると、彼女は目を伏せ…。

「…”技”という意味も”リュウギ”という言葉もわからない… それに、あまり覚えていない…」
「あれ… もう一回見たいなぁ~」
「…それは… つまり、また俺が人を殺す所を見せろという事か?」

成り行きに、いつしか突っ立ったままになっていた土方が、聞こえるようにため息を漏らした。

「総司… それに、あ~ん… 猫ぉ? 零番だったっけか? 何て物騒な事をぬけぬけと言いやがる」
「僕は、別にひどい事言ってないよ」
「同じだろ!こいつにこんな言葉吐かせるような質問したのはお前だ!」

怒られて、しゅんとしたのは、総司だけでなく彼女も同じだった。

「とにかく、総司は自分の部屋に戻って寝ろ お前、明日早番だろっ! 白猫!お前も!とっとと寝やがれ!」

土方は、そう怒鳴ると更に何かの文句を小さく口にしながら、先程よりも激しく墨をギリギリと磨り始めた。

「しょうがないな~ 副長にそう言われちゃったらそうするしかないよね おやすみっ 僕の猫ちゃんっ」
「俺の猫だろがっ! 今んところは!」

ああ そうでしたと、大げさなしぐさを残して、総司は部屋を去っていった。
それを見届け、また土方は熱心に書の続きに熱中しようとしたのだが… 視線が未だ背中にあるのが気になって、声を荒げた。

「ああん? 何だ? まだ何かあんのか?」
「ヒジカタ…? ヒジカタ…」
「何だっ!」

振り返った土方の顔を二つの瞳が捕らえ

「ここは、ニホン?」
「ああ? 何言ってやがる 日本以外のどこだってぇんだ!」

すると、静かに返ってきた言葉と見たものに、土方は吸いはじめていた息を呑んだ。

「はぁ… 良かった…」
「………」

今までに聞かなかった女っぽい声色とともに…

「こいつ… 今… 微笑みやがったか…?」

声色の後には、もうその微笑みは消えていたが、確かに安堵した微笑みを見た。
そして、その主はもう眠りに落ちている。

「たくさんしゃべったからな… ゆっくり安め…」

土方も、つられて久しぶりの微笑みを浮かべた。


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第3回目だったっけか?はここまで

次は、土方さんお漏らししちゃうかもねっ!(嘘)
でわっ