本編3 「裁縫する猫」 | 飽くなき妄想の果て

本編3 「裁縫する猫」

独自妄想その4。
新選組の面々は薄桜鬼のキャラをワタシの脳内解釈の偏見あれど、そのまんまってことで?(>_<)

いやぁ ちょっと随分先も書き進めて行ってるんすけど、こりゃ薄桜鬼じゃないわ(>_<)
プロットにSF的なモノが入ってきちゃったよぅ というか、もうすでにそうだけんど-_-;)

では、いってらっさいまし!
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「あ あのさぁ! 土方さんッ その手ぇ どうしたのさっ!何か問題あった?」

土方が箸を持つ手に、木綿が巻かれているのをここ二日見ていて、同士の面々はどうしても聞き出せずにいていたのだが、とうとう声に出して問えたのは藤堂だった。
その背中を、「よくやった!」とばかりに、両側にいた永倉と原田の手が同時に痛みを伴う平手打ちが見舞われる。
そして、当の藤堂が背中の痛みに抗議する目を双方に向けている頃合い。その先程の質問に周囲全員が息を呑んで答えを待っていた。
しかし、それに答えたのは、笑いをかみ殺せなくなった総司だった。

「猫に ガブーッ!って噛みつかれたんだよねぇ~ クスクスクス」
「総司!」

その様子に、色男に起こった”何か”を悟った一同は、目を上に「あ~」とあげて黙り、朝げの続きをいつものように黙々とむさぼった。
その中で、気まずそうになりながら、ものすごい勢いで膳を一番先にさらえたのは土方だった。
終いに茶をすすり すっと起ち上がると、いつもの不機嫌そうな顔で言い放った。

「斉藤さん! 後で手が空いたら俺の部屋へ来てくれ… 用件がある」
「わかりました…」

静かに答える斉藤の向こうで、それをニコニコと見ていた総司が付け加えるように言い放った。

「僕も 土方さん”とこ”に用があるんだけど後で行っていい?」
「……ああ 勝手にしろぃ」

そこで、斉藤も膳を済ませて起ち上がり、朝げを供にした面々を確認しながら、土方のそばにささっと近寄り、耳打ちする。

「膳を全て片づけたらすぐに伺う事にします」

その目に何かが仕込まれているのを見て、土方も「ああ」と、うなずいた。

                 **

自室にたどり着いた土方は、部屋の中を見られまいと、そそくさと障子を閉め深いため息をついた。これでは間男のようではないかと、自分自身へのため息だった。
部屋の中で一番に確認するのは、猫がここ2日どおり寝息を立てて眠っている姿だった。
だが、今朝に限っては様子が違った。

「なにしてやがる!」

土方が見たものは、異様な光景だった!
脇腹に出来た血の固まりを、苦悶の表情でまさぐっている猫がいた。

「死にてぇのか!」

フーフーと息を吐く猫は、答えた。

「たぶん…私は死んでる… 死んで尚も生きようとする… 力がアルなら… 生きるしかないだろう」
「わからねえよ!」
「縫い合わせる」
「はぁ?」
「縫い合わせれば… 二・三日ほどでふさがるはず…」

見れば、傍らに縫い針と絹の糸が無造作に置かれ、寒気を覚える光景が彼女の脇腹からしたたっていた。

「じっ… 自分で縫ってやがんのか!」
「他に誰がいる?」
「どっから針と糸持ってきた!?」
「ソウジに頼んだ… こうでもしないと、何度も傷が開いてカラダが持たない」

驚愕にもほどがある光景に、さすがの土方も意識を遠のきかけた。
割れた傷口をしばるように、彼女は自分で自分の皮と肉に針を刺して縫っていこうとしていたのだった。

「マズイ… 事なのか?」

息耐えそうな呼吸を漏らしているくせに不安の表情で問うてくる言葉に、土方は痛い思いをしているだろう本人よりも痛そうな顔をしていた。
それを不思議そうに猫は、痛みによる苦悶の表情を押し殺して瞳を上げていた。

「見ている方が痛くて辛い…」
「…じゃぁ 見るな…」

その命令口調に、土方はそのまま動けず、どれだけの長い時を過ごしたのだろうか。
猫の激しい呼吸がおさまりかけた頃合いに静かな声が部屋の外に落ちた。

「副長… 斉藤です。遅くなりました。」
「あ? あ~ あー… ちょっと待ってくれ」
「御意」

土方は、柄にもなく声をひっくり返しながら答えると、猫に着物を無造作に羽織らせた。

「入れ」

すると、障子がスラリと開けられ、斉藤が部屋に入ろうと顔を上げた瞬間、彼はぎょっとしたままの目で固まってしまった。

「あ~ もうその反応はいいからとっとと閉めやがれっ」
「わ わかりました」

いつもの彼の所作からおよそ見当も付かないような慌てぶりで、斉藤は音を立てないように気をつけながら素早く障子を閉めた。
そして、猫をちらちらと見ながら、聞いていいものかどうかと思案を巡らせているようだった。
その斉藤の様子を無視して、土方は語った。

「で?新見さんは相変わらずか…」
「あ… はい、調べたところ… 遊蕩甚だしく祇園新地にて… 昨夜で五日の連泊とのこと… 今朝方早くに… 屯所へ金子の細則が…」
「はぁ…… そうか で、芹沢さんは?」 
「別邸にて… おとなしく… 妾… と…」

フーフーと畳に両手をついて座ったままの猫が気になって、報告内容を紡ぐ言葉が途切れた。

「はっ」と、呆れ気味に短く息を吐いたのは土方。

「俺は、今からすぐに出掛けなきゃなんねぇ 近藤さんとな… 斉藤さん 今日確か非番だったよな?」
「確かにそうですが…?」
「斉藤さんなら適任だし好都合だ… こいつの面倒… あ~いや、調書の続きを頼んだ」
「調書…?」
「そこに俺が取った今までの分がある」

スクリと起ち上がった土方は、書きかけの書面を指し、身支度を整え始めた。

「いやしかし、どういった調書を…?それに、沖田君を待たなくても良いのですか?」
「総司は別に俺へ用事があるわけじゃねぇんだ こいつの事も総司に聞くといい… 素はアイツが蒔いた種だ」
「沖田君が?」
「そいつの名前は「猫」… おいっ それでいいのか?あん?」

フーフーとしていた息を飲んで、猫は答える。

「ただの個体名だ… ネコでもいい…」
「だそうだ 歳は18~20 定かじゃねぇ」
「…」

突然押し付けられた使命に困惑を隠せないでいる斉藤に、土方は更に付け加えた。

「こいつが瞳孔開いて苦しみだしたら、遠慮はいらねぇ 手足を縛り上げろ 斉藤さんの方が痛い目を見る」

そう言って、土方は木綿に巻かれた右手の親指の付け根を擦った。
斉藤は、「あ」と小さな文字を漏らして合点した。
「では 行ってくる」と言いかけた土方に猫が待ったをかけた。

「俺の持ち物を出しておいてくれ 大事なものが… やっておかなければならない事が… 悪い事は… 絶対しない」
「…ん~」
「どうせ、抜糸するまでちょっとも動けない…」
「あー… そうだな… いい子にしとけよ お前の私物は、そこのお仕入れん中だ 斉藤さん 出してやってくれ 妙なモノばかりで面食らっちまうかもしれねぇがな と、後… 調書は、さっきこいつが何してたか?から始めてくれ」 
「はい わかりました…」

足早に部屋を出ていく土方を、残される二人は無表情に見送った。
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「わかった」と言った手前、実際どこから手をつければ良いものか、どうすれば事がうまく運ぶのか、そう考える事に斉藤は時間を長く使ってしまい、余計に手をつけられなくなっていく。
ふぃと、猫に目を向けてすぐに目をそらした。
彼女は、斉藤が始めに目にした時と同じ状態でじっと動かない。

「(ど… どうする… あれは、どう見ても女子の ぐっ ぅぅん ち ちち乳房の膨らみ(決して大きくは無いようだが)、晒しがそこかしこに巻かれていると言えども、は はは 裸同然… 着物などただお粗末にかぶさっているだけではないか… まずはそこから指摘すれば良いのか? いやいや、それとも気付かぬふりをして、早急に調書へ移るべきか… ええっと 押し入れにあるというモノを…)」
「サ… サイト…?」
「!?」
「名前…」
「あ いや ”さいとう”だ」
「サイトウ…」
「…」

彼女は、名前をあまりにも無機質な発音で言葉にするのが不思議で、斉藤は訝しんだ。

「何かしゃっべってくれ 意識が… 落ちそうだ」
「意識?」
「糸が馴染むまで… 血が止まるまで… 眠るわけにはいかない…」 
「血!」

はっと気付いた斉藤はそうだとばかりに目をむいた。

「(この部屋に入った時の違和感は、彼女にまとわりつく血の臭いおも含んだものだったではないか!?)」
「傷口を縫い合わせたばかりだ 動けない…」
「傷口だと!?見せろ!」

すると、猫は、すこしばかり左に首をかしげて指した。
それを確認すると、斉藤は着物の左側をめくった。

「っ!!」

声にならない驚愕の悲鳴。
斉藤が見た、彼女の腰には、古い血に新しい血が折り重なるように、横一列無数に流れていた!

「土方さんっっ!!」

呼び戻しに行こうと起ち上がった斉藤の着物の裾を、猫は弱く掴んで止める。

「行かないで… ダメだ… ヒジカタは知ってる…」
「副長がこれをっ!?」
「いや 自分で… やった」
「不可能だ!」
「ヒジカタは… 見てただけ…」

あまりの状況に、斉藤は信じられないという表情で青ざめたが、すぐに思考を戻した。

「兎に角!消毒せねばなるまいっ… 少しだけ待っていろ…」

そう言い捨てて、足早に障子を開ける斉藤の視界に、沖田が廊下を渡ってくる姿をとらえた。
それを見て、一足飛びに駆け寄った斉藤は、沖田の胸ぐらを静かに掴んで、努めて小さな声を出した。

「屯所内でいい 一番強い酒を急いで持ってくるんだ」
「え?え? 何かあったの~?」
「早くしろ!」
「承知した~」
「急げ!」
「はいはい…」

足早に去っていく沖田を見て、斉藤はきびすを返し土方の自室へと戻った。

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第4回目だったっけかは、ここまで

次は、あの某漫才トリオにも見つかっちまうかもww
でわっ