仮面ライダーアルズ 第4話 僕の胸に生きている 前編 | ぽやぽやエブリデイ

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第3話 力と技の風車が回る 後編 」の続きです。



注:この小説は創作小説です。現存する団体などには一切関連がありません。


バックナンバーは「こちら 」から!!



仮面ライダーアルズ

……Masked Rider Al-z



悪の秘密組織ブラックサタンによって親友を殺された城茂は!

自らブラックサタンに改造され電気人間となった!!

そして脳改造を逃れた後、ブラックサタンに復讐を誓った!!


――「仮面ライダーストロンガー」より



第4話 僕の胸に生きている 前編



「リチャード・グラース……三十五歳。先日の自爆テロに巻き込まれた、海兵か……」


資料に目を通しながら、彼……城茂(じょうしげる)は呟くように言った。


三十代後半程の男性だった。


その顔は彫りが深く、どこか年季の入った影を感じさせる。


彼の視線が、資料の一点に留まった。


城はニヤ、と小さく笑うと、資料を閉じて、テーブルに放った。


「趣味は海兵隊のアメフト部での活動か……」


「ジョー司令、このままではリチャードはまもなく息を引き取ります。許可を」


長机を囲むようにして、胸に勲章をつけた男たちが座っている。


その内の一人に言われ、城は黙って腕を頭の後ろに回し、ギィ……と椅子の背もたれに体を預けた。


そして長い足を伸ばし、重低音を立ててテーブルに両方を乗せる。


「本人の強い希望もあり、すぐにでも改造手術ができる準備が整っています」


「今回の施術では、人体の九十二パーセントを生体機械に置き換えます。体内には小型原子炉を内臓。リチャード・グラースの精神力ならば、改造手術に耐えうると見た末での結論です」


もう一人の男が口を開くと、その向かい側の男も、答えようとしない城に向けて言った。


「ご決断を。人体の六十五%以上の改造をするには、我が部隊の司令官である、あなたの許可が必要です」


城の着ている軍服には、多数の星がついた勲章が取り付けられていた。


それが天井の蛍光灯の光を浴びて、キラリと光る。


そこでドアがバシン、と開き、手術服を着た医者と思われる者が駆け込んできた。


彼は一度敬礼の姿勢を取ると、引きつった声を発した。


「報告します! リチャード・グラースの容態が急変しました! 意識混濁状態から、昏睡状態に! バイタル、危険値を示しています! 危篤です!」


「司令!」


男の一人が、掴みかからんばかりの勢いで、あらぬ方向を向いて口笛を吹いている城に向けて怒鳴った。


「真面目に聞いてください!」


「真面目? 俺はいつでもシリアスだぜ」


口笛を止め、彼は足を翻して床に立った。


そしてズボンのポケットに、手袋をした手を突っ込んで、背中を若干丸めて歩き出す。


「いいね、すごくいい」


「…………?」


疑問符を浮かべた周囲を見回し、彼はクックと喉を鳴らした。


「俺はその、リチャード・グラースという隊員のことは、データ上でしか知らない。お前らが持ってきた資料でしか、そいつの人格を図ることは出来ない。だから、お前らの言葉を信用しないわけじゃないが……全て鵜呑みにする訳にはいかないってのは、理解できるな?」


自分たちより、少なくとも「外見」は若い姿をしている城の言葉に、男たちが押し黙る。


「俺は、改造人間を増やすプロジェクトには反対だ。そうでなくても、俺達軍の兵士は、大体、体の何処かを改造してる。ギリギリ人間と呼べるラインの奴もいる。まぁ……確かに、お前らが戦力増強、技術向上のためにモルモットが欲しいってのを、俺は否定しないよ。科学部の、当たり前の要求だからな」


「ジョー司令、その実験を受けると、初めて完全了承したクランケが今死にかけている。話している時間は……」


手をあげて、発言した男性の言葉を打ち消し、城は続けた。


「だが……いいなぁ」


「何が……?」


「アメフトだよ」


男性の方を向いて、城は青年のような、明るい笑顔でニィと笑った。


「アメフト選手に悪い奴はいねぇ。最も、大抵の奴らが脳みそまで筋肉で出来てやがるから、アホだがな。いいぜ。やりな」


「許可が出たぞ! 直ちに施術に移れ!」


間髪をいれずに、別の男性が声を張り上げる。


医師は敬礼の姿勢を解いて、慌てて隣の部屋に消えた。


城はそちらを一瞥してから、ポケットからタバコの箱を取り出し、息をついた。


そして一本抜いて口にくわえる。


彼がタバコの先端で、パチン、と手袋の指を鳴らすと、軽くその場に青白い放電が走った。


それにより火がついたタバコの煙を吸って、思い切り吐き出した彼に、軍人の一人が顔をしかめて言う。


「ジョー司令、ここは禁煙です」


「知るか。俺は吸いたい時に吸いたい場所で吸うんだよ」


彼は意に介さず、といった具合で壁に背を預けると、またタバコの煙を吐き出した。


「USシティに駐屯してる国連軍が有する、初めての『パーフェクト・サイボーグ計画』だ。てめぇら、しくじったらぶっ殺すぞ」


あながち冗談ともつかない口調で、城が言う。


周囲に緊張感を含んだ張り詰めた空気が走った。


その中心にいる城は、しかし大きく伸びをすると、タバコの吸い殻を床に捨てて、足でグリグリと踏みしめた。


高価そうな絨毯に焼け焦げが広がる。


「俺は……寝るわ」



――やめて! お母さんに手出しをしないで!


手を、止めてしまった。


罠だとは頭のどこかで分かっていた。


反政府ゲリラのアジトに突入したリチャードが見たものは、今にも死にそうな程の拷問を受けた形跡がある女性と、物陰から飛び出してきた少年だった。


少年の言葉に、思わず動きを止めてしまったのだった。


目に何が映ろうとも、感情を殺し駆逐する。


それが自分の使命であり、仕事だ。


それが軍であり、そこには一個人としての感傷は全く必要ない。


分かっていた。


分かっていたはずだった。


真っ先に突入した先頭の自分が行動を起こさなければ、事態は最悪の結果をたどってしまう。


そんなことは、分かりきっていたはずだった。


しかし特殊警棒を持った手が震え、意図せぬ子供の出現。


声。


そして、血まみれの女性を見て、リチャードはその場に立ち尽くしてしまったのだった。


女性が、その一瞬を逃さないとばかりに立ち上がり、手に持った手榴弾のピンを抜いた。


待て。


そういう暇もなかった。


「どうしたリチャード!」


同僚たちが走ってくる。


来るな!


声が出ない。


逃げろ!


早く!


あたりを、閃光が包んだ。



軍兵士の死者十五人。


負傷者多数。


リチャードが潜入した部屋には、各所に爆薬が設置されていた。


その誘爆に巻き込まれて、彼の小隊は壊滅状態に陥ってしまった。


彼自身も、死に至る傷を負い、幾ばくもない命の中、思考する。


あれは罠だった。


それは分かっていた。


拷問を受けた傷も、おそらくフェイク。


自分達兵士を欺くための偽装だ。


元々生き残りには期待していなかった。


それに、あの女性はおそらくゲリラ側の人間だ。


人質ではない。


人質は全員救出した後の話だから、断言できる。


しかし……。


子供。


あの存在が、リチャードの動きを止めたのだった。


――やめて! お母さんに手出しをしないで!


声。


それが頭の中で幾重にも反響する。


あの子供も、フェイクだったのだろうか。



体中に点滴が刺され、鼻や喉に呼吸器が取り付けられた状態で、リチャードは歪む視界を無理やりあけた。


焼けるように体全体に激痛が走っている。


熱に浮かされ、手足が痺れ、激痛以外の感覚がない。


音が聞こえない。


声も出せない。


焼け焦げた皮膚から血が滴っているのが見えた。


手術台のようなところに寝かされていた。


他数の医師達が自分を取り囲んでいる。


リチャードはそれを見た瞬間、グルリと視界が暗転して意識を失った。



夢の中で、彼は真っ白いどこまでも広がる、何もない空間に立っていた。


白くまぶしすぎて、自分の体さえも見えない。


それは地面なのか、それとも自分は浮いているのか。


それさえも分からない。


少しして彼は、自分のすぐ脇に小さなテレビが置いてあることに気がついた。


それだけ白くなく、はっきりと見える。


リチャードはしゃがみこんでテレビのスイッチを入れた。


電源などどこからとっているのか分からないが、ブツリと音がして、古ぼけたブラウン管に医師の顔が映し出される。


マスクとゴーグルに隠れ、素顔が見えない。


「リチャード・グラース中尉。聞こえるかね? 今君の深層意識に、直接交信を送っている」


「あんたは……俺は、どうしたんだ……?」


「私が誰かなどどうでもいい。記憶が混濁しているようだな。現実の君のバイタルも微弱になってきた。もう保たない。率直に言おう。このままでは君は死ぬ」


「どういうことだ……?」


「反政府ゲリラの自爆テロに巻き込まれたと聞いている。体表の六十パーセントに熱傷を確認。外傷も多数。君の『体』は、もう使い物にはならない」


「…………」


唖然として、リチャードは言葉を失った。


全てを滝の流れのように思い出す。


そうだ、自分は。


自分のせいで、沢山の仲間を犠牲にして。


そして、作戦は……失敗したんだ。


「俺は……死ぬのか……」


絞りだすように声を発すると、医師は静かに言った。


「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」


「……意味がわからないな。何を言っている?」


「君には選択する自由がある。このまま何も知らずに死ぬか、それとも、地獄を見ながらも『生き残る』道を選ぶか。私からはどちらかを与えることは出来ない。君が選ぶのだ」


「地獄を……?」


リチャードは両拳を握りしめ、歯を噛んだ。


「地獄ならさっき見てきた! 嫌という程な! 俺は……俺は!」


膝をつき、彼は拳を地面に叩き付けた。


「最低だ……!」


「時間がない。選ぶのだ、中尉。私は嘘偽りは言っていない。このままでは君は確実に死ぬ」


「死ぬか生きるか、選択しろっていうのか……」


「そうだ」


しばらく沈黙して、リチャードは口を開いた。


「……改造人間計画だな?」


「…………」


黙り込んだ医師に、歯を噛んで彼は続けた。


「その被験体に俺を選んだんだな! 答えろ!」


「……その通りだ。軍は君を生かす代わりに、改造人間化計画の被験体にしようとしている。しかしそのためには本人の了承が必要だ。だから危険を冒してまで、意識野の最下層まで交信を飛ばしている」


「改造人間……俺が……」


リチャードの脳裏に、天使のように笑う赤ん坊の姿がフラッシュバックする。


そして、それを抱く女性。


握り拳を作り、彼は叫んだ。


「何故俺なんだ! 何故今更! 何故!」


「それを話す権利を私は持っていない。選ぶのだ中尉。悠長に話している時間はない」


「くっ……」


彼は言葉を飲み込み、そして目を閉じた。


しばらくしてふーっ、と息を吐きだして、リチャードは言った。


「……俺はまだ死ねない。死ぬ訳にはいかない。だから、実験にでもなんでも付き合ってやる。どうせ死ぬ命だ。好きに使うがいい」


「完全了承ととっていいのだな? 意識の最下層の返答は、嘘偽りのないものと記録される。それでもいいな?」


「…………当然だ!」


雄叫びを上げて、リチャードは拳をテレビに叩き付けた。


グシャリとテレビが崩れたケーキのように潰れ、あたりを白い光が包む。


そこでリチャードの意識は、光に飲み込まれて消えた。



その施設が、異様な集団に襲撃されたのは、リチャードの意識と何者かが交信した、数日後のことだった。


『ジョー司令! この駐屯基地が、アンノウンに襲撃されています! 敵の数不明! た、太刀打ちできませ……うわああ!』


ザザッ……と通信機の向こうからノイズが聞こえ、交信が途切れる。


城はそれを聞き、重苦しい顔で周囲を見回した。


駐屯基地の作戦会議室には、軍人達が集まっていた。


「今から五分前の通信だ。何か強力な、正体不明の敵にここは襲われている」


城がそう言うと、周囲の一同がゴクリと唾を飲んだ。


「目的はおそらく、リチャード・グラースの『破壊』だ。何としても阻止する。全戦力を投入して、叩け」


バサッ、と軍服を翻し、城は立ち上がった。


「ジョー司令、どこに?」


「俺も出る」


問いかけてきた軍人にそう返し、城は歯を噛んで続けた。


「この感覚……もし俺の考えていることが、外れではなければ、お前達では相手にならん」


「しかし……」


「死にたい奴はついてこい! 死にたくない奴は隅でヒィヒィ震えてろ!」


パンッ、と手袋をつけた拳を打ち鳴らし、城は大股で歩き出した。



「増援はまだなのか!」


「ひぃい! 誰かあ!」


困惑の声と絶叫が、燃え盛る駐屯基地の建物内に響いていた。


黒尽くめのボディスーツとヘルメットを被った軍兵士達が、一気に吹き飛ばされ、反対側の壁に折り重なってぶつかる。


「素直に被験体の居場所を吐けェ……でないと」


押し殺したようなくぐもった声が、あたりに響いた。


絶叫を上げて足をバタバタ振っている兵士の一人、そのヘルメットを掴んで持ち上げた、身長ニメートルを超える巨体の男は、クックと喉を鳴らして笑った。


「こうなる」


バキィッ! と重く低い嫌な音があたりに響いた。


粉々になったヘルメットの奥から、断末魔の表情で即死した兵士の顔が覗く。


それを脇にドチャリと放り、男は足を鳴らして一歩を踏み出した。


人間ではない。


それが一目で分かるほどの、異様な姿だった。


ニメートルを軽く超えている身長。


巨大な鎧を着込んでいる。


手には、まるで重機のような、人間一人分程の大きさがある、巨大な鉄球を持っている。


銀光りする鎧に炎を反射させながら、彼はまたズゥン、と鈍重そうに足を踏み出した。


「退避だ! 退避ィ!」


「下がれ! 下がれ!」


兵士達が鎧男に背を向け、一斉にその場を離脱しようとする。


「人の話を……聞けィ!」


鎧男は、鎖がついた鉄球を振りかぶると、まるで玩具を投げるように勢い良く片手で放った。


衝撃波と轟音をまとった鉄球が、逃げようとしていた兵士達に突き刺さった。


絶叫と断末魔の声が周囲に響き渡る。


「チィ……どいつもこいつも脆すぎる。折角襲撃の一番手を引いたってのに、これじゃ時間が来ちまうな……」


兵士達の屍を踏みしめて、男は更に奥へと進み始めた。


「どこだ……『被験体』は……」


兜の奥の目を怪しく赤く光らせながら、彼は足を進めようとし……そこで動きを止めた。


軍服を翻し、ポケットに両手を突っ込んだ姿勢で、城が少し離れた通路に立っていたからだった。


「……鋼鉄参謀か。久しぶりだな」


吐き捨てるように城がそう言う。


鋼鉄参謀と呼ばれた怪人は、それを聞いて動きを止めた。


そして数秒間沈黙した後、あたりをつんざくように笑い声を上げた。


「カァーカッカッカ! まさかここで貴様に会えるとはな! そうか! そういうことだったのか!」


「…………」


「俺に組み込まれたDNAがさっきからざわつくと思っていたんだ。何だそういうことか。貴様か……『俺を殺した』仮面ライダーだな?」


「どういうことだ……?」


「さぁな! だが俺の中の怨念が、貴様が敵だって喚くんでな! 殺らせてもらう!」


鉄球を振りかぶった鋼鉄参謀を見て、城は両手の手袋を脱ぎ捨てた。


そこから出てきたのは、コイル状になった機械の腕だった。


「変身ッ!」


彼は腕を振り上げると、両手のコイルを擦るように勢い良く打ち当てた。


「ストロンガー!」


電気が、あたりに走った。


「グゥ……!」


眩しすぎる強烈な放電に、鋼鉄参謀が思わず動きを止めて、片手で目を覆う。


「これが……コードネーム『仮面ライダーストロンガー』か……!」


放電が収まった通路で、周囲が真っ黒に焼け焦げている中、その中心に立った男を見て、鋼鉄参謀は重苦しく呟いた。


そして楽しそうに笑う。


「クク……貴様は脆くなさそうだ」


放電の中心に、異形の姿が立っていた。


緑の巨大な目。


カブトムシのような角。


白いマフラー。


アメフト選手のような、筋骨隆々としたボディアーマー。


彼は構えを鋼鉄参謀に向けてとると、静かに、通る声で言った。


「天が呼ぶ……地が呼ぶ、人が呼ぶ! 悪を倒せと俺を呼ぶ!」


腕を振り上げ、彼は床を蹴って一瞬で鋼鉄参謀に肉薄した。


「俺は正義の戦士! 仮面ライダー! ストロンガー!」


バチバチバチと音を立てて、彼の固めた拳に青白い放電が走る。


アッパーカットの要領で放たれたそれがかすった床が、真っ黒に焦げた軌跡を作り出す。


「電ンン! パンチィ!」


「チィ!」


拳を、鋼鉄参謀は鉄球を持ち上げてそれで受けた。


打ちあたった城の拳が、半ばまで巨大な鉄球にめり込んだ。


まるで、バターのように鉄の塊に肘まで突き刺さる。


「エレクトロ! サンダー!」


そのまま城は叫んだ。


彼の体が、一瞬周囲を灼く程に真っ白に発光した。


凄まじい放電が周囲に走り、それは鉄球を伝い、地面を伝い、鋼鉄参謀に襲いかかった。


「ククク……」


しかし鋼鉄参謀は不気味に笑うと、押し殺した声で言った。


「忘れたか! 電気返しの恐怖を!」


彼の体に吸い込まれた白い電流が、逆流して城に向けて放ち返された……と思った瞬間。


「ダブルエレクトロ……サンダー!」


城はそう叫んで、更に強い放電を体から放った。


それは逆流しようとしていた電気を飲み込み、一気に鋼鉄参謀に突き刺さり、吸い込まれて炸裂した。


「がああああ!」


絶叫が辺りに響き渡り、鋼鉄参謀は体の各部から白い煙を上げながら、片膝をその場についた。


城は腕に突き刺さった鉄球を、片手で持ち上げると、横に振って捨てた。


ズゥゥン……とそれが壁を倒壊させて、真っ黒に焦げた床にめり込む。


「てめぇの弱点は、一度戦った相手だからな。知ってるぜ。反射できる電撃には許容量がある。分析以上の電撃をぶつければ、それを破れるって寸法だ。てめぇのデータは古い俺だ。進化した今とは違う。鋼鉄参謀。蘇ったところを悪いが、速攻で決めさせてもらう」


「ククク……」


しかし鋼鉄参謀は、膝をついたままいやらしい声で笑った。


「愚かなり仮面ライダーストロンガー。貴様が進化したように、俺達も変化しているのだ!」


「……何?」


「目的のためなら! 手段は選ばん! それが今の我ら! デルザー軍団よ!」


城がそこで反射的に床を蹴り、飛び上がる。


今まで彼がいた場所を、刃のように何かが通りすぎた。


それはトランプだった。


トランプのカードが、スカカッ、と軽い音を立てて城が立っていた場所に突き刺さる。


「ジェネラルシャドウか!」


城が叫んだ瞬間、トランプのカードが膨れ上がり、爆弾のように爆発した。


それに煽られる形で、着地に失敗した城に、床を蹴り猛スピードで肉薄してきた鋼鉄参謀が、肩からぶつかる。


「ぬううう!」


受け身をうまく取れず、城はそのまま壁に突き刺さり、ブチ破って向こう側に抜けた。


鋼鉄参謀のタックルは止まるところなく、そのまま二枚、三枚と壁を打ち破って突き進む。


そして開けた部屋の中に飛び込んで、城は吹き飛ばされ、床をゴロゴロと転がってやっと止まった。


「ぐ……」


「ほう……これがもしや……『被験体』か?」


鋼鉄参謀が呟くように言う。


慌てて顔を上げた城の目に、逃げ惑う医師達と、手術台に寝かされている男……リチャード・グラースの姿が映った。


偶然にも、彼の手術室に到達してしまったのだ。


「何をしている! 早くリチャードを運び出せ!」


城が怒鳴る。


しかし鋼鉄参謀は、医師たちを薙ぎ払って進むと、腕を振り上げ……。


「被験体の破壊! 一番乗りだぜぇ!」


と叫んでそれを振り下ろした。


その瞬間だった。


筋骨隆々としたリチャードの腕が動き、振り降ろされた鋼鉄参謀の腕を、掴んで止めた。


「な、何ぃ!」


「……起動したか!」


城が押し殺した声で叫ぶ。


「リチャード・グラース! コード000(トリプルゼロ)だ! 変身を許可する!」


意識を感じさせない空虚な目で、リチャードが上半身を起こし、鋼鉄参謀の腕を絡み取り、横に投げ飛ばす。


「ぐああ!」


ゴロゴロと床を転がった彼の目に、ズシン、と地面にめり込むほどの……人間とは思えない重量で床に立った男、リチャードの姿が映った。


彼は空虚な瞳で、手術台の脇に置いてあった、機械が所々見えている、合金製と思われるベルトを手にとった。


そしてそれを、半裸の自分の腰に巻き付け、バチンと留める。


「コード000了承。変身します」


彼は誰に教えられたわけでもないのに、フゥゥ……と深く息を吐くと、ゆっくりと手を上げ、両手を胸の前で交差させ、叫んだ。


「変身!」


白い光が彼の体の周囲に溢れ出した。


それはまるでまとわりつくかのように、リチャードの体を包み込み……。


一瞬後、彼は異形の姿に変わっていた。


膨れ上がった上半身。


バッタのような頭部。


赤い目。


そして、背中にマントを翻し、彼は鋼鉄参謀に向けてキックボクシングの構えをとった。


「ぬう……変身を許したか! だがここで貴様は破壊させてもらう!」


鋼鉄参謀が起き上がり、肩口からリチャードに向けて突撃した。


しかし、鋼鉄参謀のタックルを受けても、リチャードの体はビクともしなかった。


彼は両手を広げて、自分を押す鋼鉄参謀の上で拳を固め、一気にそれを振り下ろした。


空気の破裂する音がして、鋼鉄参謀が床に叩きつけられ、床には放射状に打撃痕が広がった。


「お……俺は……自分は……」


リチャードが自分の手を見て、小さく呟く。


「リチャード……リチャード・グラース……中尉で、あります……」


「記憶が混濁している……チッ!」


城は呟くと、鋼鉄参謀に向けて構えを取った。


そして叫ぶ。


「チャージアップ!」


彼の胸の「S」というマークが、グルグルと回転を始める。


仮面ライダーストロンガーの体内に組み込まれた「超電子ダイナモ」の力で、二段変身をするのだ。


「S」の回転が止まり、城の体が白く輝く。


一瞬後、彼は銀色の角に、銀色のラインが入ったプロテクターを身にまとっていた。


「超電!」


城は叫ぶと、真っ白い放電が辺りに轟く中、床を蹴り、鋼鉄参謀に向けて光となった。


「ドリルゥ!」


一拍、彼の体が空中で静止し、真っ赤に発光する。


「キィィィック!」


そのまま高速に回転し、城は鋼鉄参謀の胸を貫通して、向こう側に抜け、床を数メートルも滑って止まった。


「グ……ッ! く……!」


口から青い液体を吐き出し、鋼鉄参謀は、胸に大穴が空いた状態で城に向けて振り返った。


「ククク……これで勝ったと思うなよ……ストロンガー……」


「…………」


「デルザー軍団は……不滅なり……」


仰向けに鋼鉄参謀が倒れる。


次いで、施設の中を大爆発が襲った。



「ふん……手助けをしてやったというのに、参謀は負けたか……」


駐屯基地を見下ろす形で、離れた崖に立っていた男が口を開く。


彼の周りには数人の男女が立っていた。


「あんな筋肉バカを一人で行かせるからこうなるのよ」


「次にストロンガーを倒すのはこの私だ。順番は守っていただこう」


一番最初に口を開いた男が、そう言って喉を鳴らす。


「だが今は時期ではない……時期を見て攻撃を掛ける。ここは一旦引くとしよう……」



第4話 後編に続く!!



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