消費税率を引き上げるなら、大幅な還付金制度を導入せよ! | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 消費税率の10%引き上げに関して、軽減税率の品目を定める方向性ではなく、マイナンバーカードの利用を通じて、1人あたり年額4000円を上限に還付金を採用する方針が検討されていることが明らかになりました。

 マイナンバーカードを提示して酒類を除く食料品の購入情報を記録すれば、あらかじめ登録した金融機関の口座に還付金が振り込まれるという仕組みについては、問題は大ありでしょう。制度設計が複雑で現実的ではないという点も問題ですが、そもそもマイナンバー制度というのは年金や医療における国民の利便性の向上と脱税の防止を目的としたものであって、国民の消費生活の把握は目的の対象外だという原点に立ち返って考えて頂きたいと思います。

 マイナンバー制度の必要性は同様の趣旨から推進が図られた30年前のグリーンカード構想の時からあったわけですが、プライバシーの侵害に当たるという反対が根強かったことから断念してきた経緯があります。食料品を購入するたびにマイナンバーカードを提示して、購入情報が国家に引き渡されるということについては、実害がどの程度あるかどうかは別として、不愉快に感じる方も多いことでしょう。プライバシーの侵害について慎重さが求められるべきところで、このような制度趣旨から外れた個人情報の収集とも取られかねない案を示してきたことには、デリカシーのなさを感じざるをえません。

 但し、軽減税率を適応する商品、適応しない商品の峻別と絡んで政治的な利権が発生する可能性が高い従来の検討案よりも、還付金方式は制度的には洗練している部分もあり、その点は評価したいと思います。また、収入の低い人ほど収入に対する納税額の比率が高まる、いわゆる税の逆進性を軽減できるという点もあり、運用次第では還付金方式というのは検討に値するものだと私は思います。

 では、こうした問題点を克服した上で還付金制度を運用するためにはどうすればよいでしょうか。私は国民1人当たり1年で100万円の支出は生活必需に基づくものであって、租税対象にそぐわないとみなし、そこには税金をかけないという仕組みにしてしまえばよいと考えます。つまり、100万円の10%に相当する10万円は、消費実態がどうなのかなど調べることなしに、あらかじめ登録した金融機関の口座に還付金として、一律に振り込んでしまえばよいと考えます。この案に基づくと、消費税額は当初想定の半額程度になるかと思いますが、税の逆進性によって懸念される問題は大筋解決できるのではないでしょうか。

 例えば、年間で100万円を生活費に充てている一人暮らしの方の場合、消費税10%が課されると10万円の負担が必要ですが、10万円が還付金名目で戻ってくるなら、実質的な負担額はゼロになります。つまりこの方の場合には消費税率は実質ゼロです。一方、年間で1000万円を生活費に充てている一人暮らしの方の場合、消費税10%が課されると100万円の負担が必要ですが、10万円が還付金名目で戻ってくるなら、実質的な負担額は90万円になります。つまりこの方の場合には1000万円の消費に対して負担額は90万円ですから、消費税率は実質9%です。一律の還付金制度を導入することによって、消費税が実質的には生活程度に対応した累進課税に変わるわけです。

 安倍政権は消費税率の10%への引き上げについては、景気の状況などに関わらず絶対に行う旨を表明しておりますが、このような還付金制度との抱き合わせであれば、実質的には消費税の国民負担を引き下げ、さらに税の逆進性の問題を解決しつつ、公約には一切違反しない形になります。その上、消費性向の高い低所得者ほど減税率が高いですから、景気回復にもダイレクトに効いてくることになります。財務省は激しく抵抗するでしょうが、将来の消費税率の引き上げの際にうまみが出てくることになるという方便を用いて、説得を試みてはいかがでしょうか。


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