パリの同時多発テロに潜む不可解さ | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 パリで同時多発テロが発生し、非常に多くの死傷者が出ました。被害に遭われた方々は本当にお気の毒な話で、謹んで哀悼の意を捧げます。

 フランスのオランド大統領はISの犯行を明言し、ISも犯行声明を発表しました。フランスがシリア問題に介入してISに対する空爆を実施したことが今回のテロを実行した理由だといいます。

 確かに表面的にはこの通りなんでしょうが、どうもすっきりしないものを私は感じてしまいます。

 フランスは捕らえられた自国民の身代金をISに支払ってきたとみなされている国です。仮に身代金ビジネスが彼らにとって有力な資金源の一つであるなら、フランスではない別の地域を攻撃対象にする方が「適切」ではないでしょうか。フランス以外にも身代金を払ってきたとみなされている国はありますが、フランスがテロの対象とされるのであれば、自分たちだって身代金を払っていてもいつ狙われるかわからないという思いに駆り立てることになるでしょう。つまり、身代金ビジネスをやりにくい環境に自らを追い込んだともいえます。ISはその程度の計算もできない間抜けな連中だということになりそうです。

 また、自爆テロの容疑者1人の遺体の近くから、シリアのパスポートが見つかったというのもいかにもという感じがします。もし彼らがフランスや欧州を潰すのを戦略的な目的としているなら、今後も難民の大量流入が続いていった方が「適切」だと言えるでしょう。この事件をきっかけにして、フランスに限らず欧州はみな難民の排除の方向に舵を切るでしょう。つまり、フランスや欧州を助ける役割をISは実行しているということになります。

 そもそもISの資金源はどうなっているのでしょうか。支配地域の油田から取れる原油を横流ししているからだという話がありましたが、まじめに空爆をやっているなら油田施設はことごとく破壊され、油の積み出しルートも徹底的に絶たれているはずで、そんなビジネスが成立しないのは明らかです。しかも世界的な景気減速を背景にした原油価格の下落は、仮に横流しが未だにできるとしても、決して利益の上がるビジネスではなくなってきているはずです。サウジアラビアなどが裏から支援しているという話がありますが、送金状況を徹底的に洗いさえすれば、資金源を断つことはそんなに難しいことではないでしょうし、そもそもサウジ自体が原油価格の低迷で、資金的な余裕もなくなってきているはずです。その上、身代金ビジネスさえできなくなるような環境にISが自らを追い込んでいるとなると、ますます資金源については怪しさを感じざるをえません。

 フランスをはじめとする欧州とアメリカは、アサド政権に打撃を与えるためにIS叩きを口実としてシリア介入をしてきたふしがあります。つまり、IS叩きは建前にすぎず、アサド叩きこそが本音であったということです。そうでなければ、これだけ四面楚歌になっているはずのISがどんどん支配勢力を拡大するなんてことができるはずがありません。そして、そんなことは当事者であるISが最もよくわかっている話でしょう。

 ついにロシアがアサド政権を守る立場からシリアに軍事介入しました。この時点では本気でISに敵対する立場にいるのはロシアだけであったはずです。ロシアに対するテロはその立場からは「理解」できなくもありません。しかし今回わざわざロシア以外も本気で敵に回すようなことを実行してくれたわけです。これにより、欧州とロシアが手を結ぶきっかけになる可能性は極めて高いでしょう。同じISのテロの被害にあったという点で、ロシアと欧州は感情的にも強い共感を持ち合う関係になります。

 ISというのは、こうしたことの計算も全くできない、完全にアホな組織なんでしょうか。私にはそうだとはとても信じられないわけです。それゆえに、今回の同時多発テロの背景も報道されている内容を素直に受け取ることができないのです。


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