長引くコロナ禍において、子どもの成長・発達に関して危惧されることがあります。それは、コミュニケーション不足による言語機能の低下です。 


 米国ブラウン大学のショーン・ディオーニ博士による、米国の0歳から3歳までの子どもの言葉の発達の調査(「親の声を認識するか」「簡単な指示を理解するか」といった反応から、ことばをどのくらい理解(認知)しているか)によると、コロナ禍以降の幼児の言語機能は基準値100を大きく下回る60という結果になったそうです。 


 言語は単語そのものだけでなく、それを使う時の状況やその場にいる人との関係性、その時の表情によって使い分けられます。このように、単語の意味を理解するためには、言葉そのものの意味と文脈が不可欠です。


 しかし、マスク生活によって表情がわかりにくくなり、この表情の時はこんな気持ちだろう、それならこの言葉を使おうと言う判断と選択が難しくなります。 そのため、言語の理解が妨げられ、上記のような言語機能の低下に繋がったものと考えられます。 


 言語は物事を考える際の基礎となるものであり、言語機能の低下により、この基礎がしっかりしていないと、学力の低下はもちろんのこと、人間関係を築くことも困難になります。

 
 では、それを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。それは、感情の社会化を行うことです。感情の社会化とは、その言葉がどのような状況で使われるかを大人が言語化して子どもに伝えていくことで達成されます。
 

 具体的には、子どもが嬉しそうな表情を見せたら、「嬉しいね」、しかめっつらでイライラした表情なら「イライラするよね」など、子どもの気持ちに合った言葉をかけることです。

 そうすることで、親子の共感的なコミュニケーションが図れるだけでなく、子どもにとっては気持ちやその時の状況と言葉が合致するので、他者との関係でも気持ちを推測することができるようになり、人間関係において適切な言葉掛けができるようになるのです。

 依然として、外出時にマスクが欠かせない状況ですが、家庭内において、まずは親自身が楽しめることを行い、楽しい表情を見せ、その時の気持ちを言葉に出してみる。そうすることで、子どもは親の気持ちの変化を感じ取ります。それが言語の社会化に繋がり、さらにコミュニケーションを再び活発にするきっかけになります。

 それだけでなく、大人も子どもも、何となく感じてきたここ数年の閉塞感を解き放つきっかけになるのではないでしょうか。