新築マンションの「即日完売」とは? | 「不動産コンシェルジェ」 三井健太のブログ

「不動産コンシェルジェ」 三井健太のブログ

住宅マンションの購入で後悔しないための情報とアドバイスをお届け。
大手マンション業者に在籍し業界の裏側を知り尽くした者の目線で、
住宅購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないための
ハウツーを委細ご紹介します。

東日本大震災以降、一時停滞していた新築マンション市況が好調さを取り戻しつつあるらしく、好調さのバロメーター「即日完売」物件が増えているようです。

ところで、「即日完売」とは、どういうことでしょうか?マンションのような高額商品が発売したその日に全部売れてしまうことはないのでは?その疑問にお答えしましょう。

マンション以外の商品では、事前の広告で話題になり、評判が高まった後に、いよいよ発売となったときに客が押し寄せて半日で完売する、早いものは5分完売といったことがありますね。

商品に対する前評判は、普通、次のような流れで膨らんでいくものです。

先ず、メーカーがプレス発表する。直ちにニュースとして流される。次には、ニュース以外の記事や番組として取り上げてもらうため、報道機関に限定した商品発表会を催す。マスコミ各社は、商品を詳細に分析して紹介する。メーカーは、ホームページで告知する。同時に、顧客リストや取引企業などにも知らせる。これらが、助走です。ここまでの反応を確認しながら、続いて宣伝広告を大々的に実施します。

こうして、問い合わせの数などから販売予測が確実なものになっていきます。最近の顕著な例を挙げると、日産自動車の電気自動車「リーフ」は、201012月の発売を前に8カ月も前にプレス発表していますが、評判は上々で、既に予約だけで目標台数は達成することが分かっていました。それまでには、ゴ―ン社長自ら雑誌のインタビューなどに応じながら、リーフの売り込みを図っていました。

また、三洋電機のお米粒から作るパン焼き機「ゴパン」は、予約が殺到し、製造台数を大きく超える注文数を得たことで話題を集めました。このため、発売を延期する決定をしたほどでした。

どちらの商品も、発売前には用意した商品が品切れ状態になる、すなわち即日完売が予想されたわけです。

このように、即日で完売するというのは、前もって宣伝をしておくことで、用意した数が即日でなくなる状態をいうわけです。

マンションでも同じことで、違いがあるとすれば、発売の前に商品をモデルルームの形で一般に公開することでしょうか。大抵の場合、発売の数か月前にモデルルームを公開し、様子を見ながら発売日を決めるということも違いと言ってよいかもしれません。

数か月前からの広告宣伝によって集まったモデルルーム見学者は、二度、三度販売事務所(モデルルーム)を訪れて発売日までに態度を決めます。その結果、全住戸(商品は一つしかないのが不動産の特徴でもある)にそれぞれ買い手がつけば完売。それが発売当日に達成できたら、即日完売のマンションとなるわけです。

補足すると、発売日というのは、土曜日から翌週の日曜日までの9日間を受付期間とし、最終日を発売日と定義することも多いので、厳密には即日完売というのはなく、受付の最終日までに完売になったものを言うのですね。

さらに、最近の即日完売というマンション事業者の発表には、おかしなことがあることをお伝えしておきましょう。

マンションの総販売予定戸数が100戸あっても、25戸ずつ4回に分割して発売するという「期分け販売」のことです。モデルルームを公開し、訪れた客と商談すれば、購入見込み数が読めます。その数が期待はずれならば、発売戸数を減らすのです。つまり、当初は25戸を販売する計画だったが、買ってくれそうな見込み客が10人(=売れそうな住戸が10戸)しかいないと判断できたら、発売戸数を10戸に絞れば、即日完売を達成できることになるわけです。この場合の契約率は100%です。

仮に、25戸発売して10戸しか売れなかったら、契約率は40%に過ぎません。ところが、10戸に発売戸数を絞れば、見せかけの「高契約率」を達成できるわけです。従って、「おかげさまで好評裡に完売しました。とても良いマンションです」と売り手が次の発売に向けて広告に記載したり、見学者に言ったりしても、その話は眉唾ものと言わざるを得ないのです。

こんなマンション業界の商慣習も知っておくとよいと思います。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com )までお気軽にどうぞ。

無料相談」と「無料マンション評価サービス」等があります