(新譜入荷)山仁 『センチメンタル・ジャンキー』

 

 

【略歴】

2000年代初頭、LOOP JUNKTIONとしてソニーミュージックよりデビュー。当時、日本で生バンドのヒップホップとしては開拓者であった。キャリア絶頂期、SOULIVEの来日ツアーのオープニングアクト@横浜ベイホールにてライブ前に起こした傷害事件が発端となりバンドは解散。

 

リアルサグ(REAL THUG:米国HIPHOPで "マジのワル"の意。2PACの腹にあったタトゥーが有名)過ぎる山仁は表の業界とは一線画したアンダーグラウンドに潜伏しながら、旺盛な作品リリースを重ね、伝説のラッパーとなる。

 

その後、人生の紆余曲折、アップアンドダウンの激しさは相変わらずに、しばし世から消えることもしばしば。その間に、彼のイズムから大きく影響を受けた若いラッパーたちが世に羽ばたき続けて、ヒップホップの地平を開拓してきた。今や、若年層に最も影響を与えるジャンルの1つ。

 

舐達麻(なめだるま)のようなハッキリ物言うストロングスタイルが絶大な支持を得る土壌も、元はと言えば山仁や若かりし頃のMC漢たちが実直にストリートの現実を謳って耕してきた畑だ。覚悟の半端なサラリーマン的な業界には到底、扱えないジャンル。

 

【店主との関係】

何の因果か、その2000年代初頭に東京のライブシーン、特にクラブタイムのライブシーンで犬式とLOOP JUNKTIONは出会い、スタイルの違いを超えてリスペクトを感じ合い、人生の機微を分かち合い、友情を重ねてきた。

 

愛憎そして笑と情、入り混じる、最も古い兄弟の1人、忌憚なき理解者、

時に永遠に無理解な同志、そして好敵手。

 

付き合いはタメだが、実は2個上のソウル従兄弟。

 

【例えて言うなら】

60年代米国のBEAT文学に大きく影響を受けた店主としては、彼はジャック・ケルアックの書き記した『路上 "On the road "』における主要人物「ディーン・モリアティ」の原型となったニール・キャサディそのものである。わかる人にはわかるだろう。わからない人にはなんと説明したらいいだろう。『路上』は全てのウッドストック世代のバイブルとして、グレートフルデッドにもボブディランにも、ニール・ヤングやカート・コバーンに至るまで影響を与えた書物であり、『イージーライダー』など全てのロードムービーの原型とも言われている。

 

【近年の活動】

どこかアングラに潜伏していた感のある山仁ではあるが、内容はそのままにさらにズルむけた不良の現実を引っさげたまま、遅ればせながら始めたSNSなどを通じて旺盛に発信をし始めたのはコロナがきっかけだったか。

 

長野の山奥に暮らしながら4児の父としても奮闘しながら、田んぼなんかもやりながら、山と街を行き来しながら活動を繰り広げている。かつて東京ブロンクス・町田のトップランカーであった頃からは、野生味がさら増して、何段もアップグレードしている。

 

【当作品】

これは、山仁のキャリアにおいて、1つの分岐点、金字塔となる名盤となるだろう。

 

若いラッパーたちが「昔よく聴いてました!」から「今、まさに聴いてます!」になるだろう。

 

ミドルエイジのヘビー級のワンパンチ。

 

岡山に拠点を置く、ラッパーHanabis率いるハイライフレコードの面々との協力によって出来上がったアルバム。

 

半分以上の曲のトラックをプロデュースしたフラッシュピストンの腕が冴える!(残り半分は山仁率いるプリティスクワッドによる)。フラッシュ特有のファンクネスの軸が通った、そして奇を衒わないが藤浪晋太郎の豪速球のような、天然の変化球をバンバン投げ込んでいる。山仁のエネルギーと熱量、ワードローブの広大さを素直に生かしている点で、近年の作品の中でもピカイチのノリを生み出すことに成功している。

 

やたらと共感ばかりが求められがちな時代に、ラップの内容に主義主張にいちいち合意することを全く求めることもないまま(どうせ誰も追いつけないから)、山仁とフラッシュピストンの楽曲は多彩なゲストラッパーを織り交ぜながらズンズン進む。それが気持ち良い。

 

そして多分なんだが、彼らとは双極なすような世の草食男子たちにすら、「俺、このままでいいんだ」と図太い勇気を与えてくれる得体の知れないエネルギードリンクのような1枚に仕上がっている。

 

時代に必要とされているんじゃないかな、こういうラップこそが。

 

悪ぶってる暇なんかないんだよね、本物たちは。

本物はむしろ、可愛いさが売りだこれからは。

キュートな悪魔は微笑みながら天使を演じ始めた。皆の中の己のために。

 

いろんなボックスに自分を閉じ込めて悩んでるあなた。

吹き飛ばしてくれるぜ、多分ね。

 

ジャケットは『AKIRA』作者の息子である、大友昇平であることも漏らさず記入しておこう。

 

既に初版はソールドアウト。その貴重なアーカイブを君のレコード棚に贈る。

 

必聴!

 

(店主・三宅洋平)

 

このCD以外にも1点は他商品を買ってくれルト、三宅商店は嬉しい!。

世の中変えたいなら、バビロンから物買うな、なるべくなら。

(三宅商店)↓

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