手の温もり | 美容外科開業医の独り言

美容外科開業医の独り言

美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

私が研修医で、何もできなかった頃のお話しです。
ある小さな施術を受ける患者様がいらして、処置室のベッドにご案内しました。
もちろん私ができるような施術ではなく、上司を呼びに行き、施術が始まりました。
上司はこんな簡単な治療なのだからと気軽に「さあ始めますよ」なんて声をかけていましたが、実はその直前のある出来事でご機嫌斜めの状態でした。さっさと終わらせようとしているのが私の目からもはっきりと分かりました。
患者様は大変不安がっていましたが、上司はお構いなしに施術をしています。
すると突然患者様が手を握ってほしいと言いました。ちょっと躊躇しましたが、言われるまま(そして上司の機嫌が悪くなっていくのが目に見えていたので)、施術中ずっと手を握っていました。
もちろん何事もなく無事に終わったのですが、後日患者様からお手紙が届きました。
「あの時の手の温もり、すごく安心しました。これからも患者の気持ちが分かる医師でいてください」と。
私はそんな気持ちではなく、ただ単に頼まれたから、そして上司が怖くて手を握ったのですが、患者様にとって何が最も大事なのか、痛感した出来事でした。
ふっと学生時代に入院したときのことを思い出しました。ある治療を受けることになって、医師にとっては簡単で当たり前の治療のために満足な説明も受けず、当日を迎えました。正直どういった手順で治療が行われるかさえ知りませんでした。ちょっとびびっていたら、いきなり麻酔の注射です。と、その時看護婦さんがそっと手を握ってくれました。当時私は医学生で、その看護婦さんは知り合いだったのですが、気恥ずかしさよりも、すごく安心しました。なぜとか、そんな理由なく、人って手を握ってもらうと安心します。

ただ単に治療が上手くいけばいいのじゃなく、安心してもらうこと、心のケアも治療の可否を大きく左右する医療技術なのです。


人はみんなそうですよね。
客観的に見れば小さなことでも、その人にとって大きな問題であれば、すぐに不安になります。心の拠り所がほしいし、安心したい。相手の言葉に嘘があるんじゃないかと心配したり、大丈夫かなと疑ってみたりします。もちろん信頼関係があれば、言葉だけで安心できるのでしょうが、まだまだそれが拙い場合は、誠意を持って、ほんの小さな事でも相手の側に立って考えること、どんなに当たり前と思うことでも、ちゃんと説明したり、根拠や証拠を提示してあげること、すごく大事だと思います。
医療という世界では、まだまだその部分が足りないと思います。特に美容外科は人の繊細な心を扱う領域です。普通よりもずっと敏感に察知して、安心していただけるように努力しなくてはいけません。
私はまだまだ未熟ですが、優しい患者様達から多くのことを学ばせていただいていますし、そんなことが当たり前にできる医師になりたいと思います。