フラクショナル炭酸ガスレーザー治療のコツ | 美容外科開業医の独り言

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当院ではニキビ跡や傷跡の治療に、フラクショナルレーザーを多用します。
4種類導入していますが、そのうち2種類がフラクショナル炭酸ガスレーザー。eCO2とCO2REという強力コンビです。

同じタイプの機器なので2種類も必要ないというのが一般的です。しかしながらこの2台は特性が大きく違うために、ニキビ跡、傷跡を本格的に治療するためにはどうしても必要なのです。
第1世代に属するeCO2は、「じゃじゃ馬」のような機器であり、強く照射したりするとパワーコントロールが非常に難しいのですが、上手く扱えれば非常に有効です。ニキビ跡に関しては、弱く照射するなら他の機種が進歩した現在ではあまり価値があるレーザーではありません。
一方新世代ののCO2REは「サラブレッド」のように洗練された機器ですが、理に叶った部分から外れようとしてもそれを許してくれない、コンピューターで完全制御された機種です。マニュアルに沿って使用するなら非常に優れた機械で、誰でも使いやすい機器です。そして設定できるモードが多様であり、既存ではなかった削り方ができる機器です。その分自由度は高くはありません。

つまり、両者を組み合わせること、使い分けることでより良い治療が出来るため、現在では2種類が必要なのです。
よくeCO2は強く照射すれば効果が高いと言われていますが、その分肌への負担も大きくなります。この場合、ニキビ跡では非常に限局した範囲をしっかりと照射することが肝要となります。単純に強く照射するだけではよい結果が得られません。レーザーは出力だけでなく、密度と照射時間が重要で、これを上手くコントロールすると、ニキビ跡のように毛包壁が破れて下へ引っ張られ癒着している状態を外し、持ち上げる効果を得ることも可能になります。
一方、CO2REはfusion modeというリング状に平たく削る機能があり、アブレージョンという削る治療よりもやや弱く、かつ短いダウンタイムで効果を得ることが可能となります。

フラクショナル炭酸ガスレーザーの照射設定においては、通常は出力として1発あたりのmjで設定される数値を用いますが、これはいわゆる物理で言うところの仕事量。絶対的な照射エネルギーです。照射の密度(面積あたりの発数)が増えれば、単位面積あたりの仕事量は増えます。そして弱いパワーでも密度が上がれば全体としては仕事量が増えます。またmjが同じでレーザービーム径が大きくなるとその単位面積あたり仕事量は減りますから、結局は到達深度が浅くなります。同様に照射時間が長くなると今度は単位時間あたりの仕事量(W)が減りますので、到達深度が浅く、かつ周囲への熱影響が逆に増えます。
CO2REは照射時間が非常に短くコントロールできるので、同じ出力でもeCO2とはその熱作用は異なります。照射形状が異なれば、またさらに話は複雑です。

照射設定はこのような物理の計算上に成り立つものであり、ただ何mjで照射したから強いんだとは言い切れません。照射密度、面積、照射時間、照射ビームパターン、スキャナ形状、様々な要素を加味して治療を組み立てるためには設定を自由に可変したいところですが、1種類の機器では全てをカバーできないために、2種類を用いているのです。場合によっては小さいエリアに限って、皮膚を薄くそぎ取るようなフラクショナルではない炭酸ガスレーザーを併用して用いることだってあります。

誰もが同じ結果を得ることができないのが、このフラクショナル炭酸ガスレーザー治療の難しさではあります。どれだけ機器の性能を理解して、状態に応じた設定を選択していくか、私自身もまだまだ機器の性能を100%利用していないなというのが正直な感想です。
それだけにまだまだ発展性があると思います。
特にCO2REはソフトウェアの変更でeCO2同様のじゃじゃ馬のような機能を付加できるようですから、そうなるとさらにバリエーションに富んだ設定で、1台で全てをカバーできる時が来る可能性もあります。

気がつけば、マニアックな話になってしまいました....