たるみ治療のスタンダード:ウルセラ | 美容外科開業医の独り言

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現在機器によるたるみ治療では、世界的にサマークールとウルセラが標準的な治療手技となっています。物理的に皮膚(真皮構造)や皮下組織を熱破壊し、再構築するremodelingという考え方によって引き締め、引き上げをおこないます。

もちろんこれだけで若返るのではありません。顔の老化は皮膚の構造変化や下垂、合わせて皮下脂肪や筋膜の下垂だけではなく骨・深部脂肪の萎縮・変形や靱帯の緩みなど多岐に渡ります。

そのなかで下垂、ゆるみという部分にフォーカスを当てるのがremodeling治療です。

サーマクールは熱を立体的に与えて三次元的に皮膚や皮下構造をremodelingさせます。つまり引き上げというよりは引き締めです。ちょうど牛肉を鉄板で焼く時に縦横高さ全体が縮んでいくイメージに近いものがあります。頬が細い人にサーマクールを実施すると時に「頬がこけたように」なるのはこれが原因です。引き上げではなく引き締めなのです。逆に皮膚のゆるみが強くてフェイスラインが「だらん」としているような場合には引き締めることで効果を得て、小顔にもなります。

一方のウルセラは二次元的な引き上げ効果です。照射によって立体的な熱変性はありません。決められた深さ(4.5ミリや3ミリ)を焦点として,その周囲1ミリ以下の範囲で熱変性が生じます。この点状の熱変性を多数生じさせ、一定深度において膜状に引き締めるのです。つまりしっかりとした支持構造のあるゾーンを狙って引き締めていかないと「無駄打ち」になります。

この膜状の引き締め効果が、顔全体で見ると引き上げになります。ポニーテールで引き上げるような効果です。サーマクールのような三次元的な「引き締め」効果は出ないので、これが使い分け、組み合わせのポイントとなるでしょう。

4.5ミリの深さは顔面における筋膜SMASという構造物に該当します。3ミリは皮膚直下です。これを一般医療で用いられるのと同じ超音波装置(エコー)で目視しつつ、押し付けたりしてきちんと照射ゾーンと一致させます。これによって効果を出していくのです。適当な照射では効果が出ません。患者側からすると、照射する時の密着具合や動かし方がクリニックによってかなり異なるそうです。

色々なコツがあり、機器が同じでも照射手法によって効果は全く異なったものとなります。

 

このウルセラ、実は当院が世界(諸説あり、間違いないのはアジア)で最初に購入しました。導入ではなく、購入と書いたのは理由があります。それまで大学などデータを取れる機関で導入されていましたが、あくまで結果を「検討」「研究」するためのものでした。このデータをもとにアメリカ国内での販売認可を取る計画でしたが、私自身、この機器は理論上非常に素晴らしく、アジアでも使いたいと熱望し、当院でデータを取ることを条件に、「お金」を払って購入したのです。

 

今考えると、無名な日本人医師がしゃしゃり出て、思い切ったことをしたものです。しかし、なぜか私の中でも確信がありました。その後は韓国での販売時に講演をさせて頂いたり、論文を書いたりとドメスティックな医師にとって良い経験をさせて頂きました。

 

 

最近はこの手の機器に技術革新がなく、また患者様に対しても医師に対してもビジネス第一のような状況になってしまっています。

現在ではピコ秒レーザー及び部分痩身の機器が技術革新の主たるものとなっています。

但し、ピコ秒レーザーはより良い治療をするための機器であって、今まで出来なかった事が出来るようになるものではありません。ビジネスではなくレーザーのプロが購入する機器です。

その一方で部分痩身の機器は今までなかったジャンルであり、革新的ではあります。