HIFUでコラーゲンが。。。。 | 美容外科開業医の独り言

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美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

今年最初のブログです。

 

またHIFUのお話。最近患者様からよく質問される内容についてです。

以前に書いたブログが反響を呼んで、もう少し詳しく知りたいという意見が多いので、学術的な根拠もありますが、一部私個人の考えも交えて書いてみようと思います。医学的に誤りがあるかもしれませんが、整合性のある内容だとは思います。

 

 

最近巷ではたるみ治療機器としてハイフが大流行です。エステやセルフでできる機器まで。作用としてコラーゲンが増加して引き上がると書かれているのがほとんどです。

打った瞬間に引き上がるので、顔半分施術して鏡で見てビックリとか、メディアなどでは色々宣伝されています。

 

さて、どうやってコラーゲンは増えるのでしょう?前にも書きましたが、あくまで熱で組織を破壊して、傷を作って、それを治す力を利用しているのです。だからこそヤケドの副作用などもあります。弱い機器でも一点を集中して当ててしまうとヤケドや場合によっては神経損傷などを引き起こします。

さて、熱で壊してからコラーゲンが増えるまで、どれくらいの時間がかかるのでしょう?どんなに早くても3週間以上はかかります。医学的には最大の効果を発揮するまで3ヶ月ほどかかるとされています。これは怪我してから傷跡が硬くなる、落ち着くまでの過程を考えるとほぼ同じです。人体における傷の治癒メカニズムに従った変化をします。HIFUだから魔法のような特別な変化が起きる訳ではありません。

 

いえ、そんな事はない、即引き上がるから良いんだ。

なぜ?

 

瞬時にコラーゲンが増えて引き上がることはあり得ません。直後の引き上がりとコラーゲン増加は別の話です。

理由は強い熱でコラーゲンなどの線維組織が収縮するから、肉を調理する時と同じ。鳥の皮などは焼くとすごく縮みます。ダメージを受けることで熱収縮し、まず即時効果が出て、そのあとに損傷した組織が再構築(リモデリング)されていくことで本質的な引き上げ効果を発揮していきます。強い熱を与えてたるみ治療をする機器は、HIFUに限らずみんな同じです。即時効果は本質的ではないですが、患者満足度は高いものです。

 

しかしこれだけではないのが厄介です。

よく考えたら、弱いHIFUで大して痛くもないのにコラーゲンが収縮するほど熱ダメージはあるのでしょうか?痛くないから楽です、即時効果もあります、コラーゲン増えます。。。。

そんな夢のような話はありません。

 

ここに腫れの問題があります。熱ダメージによって腫れが生じます。軽いダメージであるほどコラーゲンは壊れず、軽い腫脹が起こります(実際には3重らせん構造のコラーゲン線維の変性やその他の細胞外基質と言われる種々の物質の変化があり、単純な腫れではありません)。特に深部のSMASというHIFUが標的とする筋膜周囲の腫脹はその構造特性上、トランポリン効果と言われるような強い張り感を生じます。軽いヤケドによって張りを生じた組織変化は2週間程度は持続されるため、軽いHIFUの効果は2〜3週なんて思われる患者様も多いようです。

よくテレビやSNSなどで「即時効果が実感できたけど1ヵ月経ったから効果も切れたのでまた施術受けなきゃ!」なんて言っているのはこの効果であって、本質ではありません。そして何よりこの効果はたるみに対してではないので、若い人でも実感できます。果たしてこれが良いのか悪いのか。。。。

効果を感じるからこそ受けてみたいと思うわけであって、これはこれで「あり」なのかもしれません。

 

ただ、医師がHIFUは即時にコラーゲンが増えて効果てきめん!なんて言うのは恥ずかしいから止めてほしいです(笑)

もちろん受ける組織損傷、ダメージと長い将来への影響を考えると、私自身は「たるみ治療」としてのHIFUは若い頃に受けるのはお勧めしません(熱ダメージで形状を変えるHIFU:痩身目的やリニアタイプでのあご下治療はまた別の話になります)。受けるならむしろ軽い痛みが少ないHIFUでしょう。ダメージ少なければ、さほど問題にはならないとは思います。一方で年齢が上がれば、しっかりしたHIFUでたるみの予防としての効果も考えた方が良いでしょう。

 

もう一つ、ウルセラのような強いHIFUは即時効果が劣ります。弱いHIFUほど即時効果は高くなります。本質的な効果を取るか、一時的な即効性を取るか。。。。

その効果の相違について、証明はされておらず理論上の話にはなりますが、ウルセラは完全に熱損傷で組織破壊が起こるため、もう一歩先に進んでしまい、程良い張りのある腫れ感が出にくいようです。その代わり、組織のリモデリングは確実に生じますので、1〜3ヵ月かけてしっかりと引き上がり、外観上の変化は長期間持続していきます。

 

最近はSNSなどで様々な治療について若い医師の発言が多数見受けられますが、正しいことを言っていると限らなくなっているのが昨今の現状です。情報発信が自由である事は良いことですが、誤った情報の拡散は修正するのがなかなか大変です。医師であれば、自分の思い込みではなく、情報源の分からないネット(私のブログも含め情報が全て正しいわけではありません!)で調べるのではなく、論文を読んで学会に参加して勉強して発言を心がけないと、患者様の不利益になります。若くしてカリスマや日本一の症例、も良いですが、医学は科学なのでというのが私個人の意見です。

私はカリスマでも神の手でもないですし、症例数も普通だし失敗もする平凡な医師ですので、偉そうなことは言えませんが、もう少しだけでも美容医療が真っ当な世界になってほしいなと思います。