ヒアル顔 | 美容外科開業医の独り言

美容外科開業医の独り言

美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

最近はヒアルロン酸注入が一般的になりました。私が注入療法を始めた20数年前は単に窪んでいる部分を埋めるように注入していたものが、顔の解剖が明確になるにつれ、また技術的な進歩もあり、最近ではリフトアップを兼ねて若く見せる治療が盛んにおこなわれるようになってきました。

しかし一見して不自然な、いかにも「入れました」という顔になる例も多く見られるようになってきました。一つには単なる入れすぎ、窪みや皺が気になるからといって闇雲に入れると、当たり前ですが球形に近づきます。局所がパンパンになってしまいます。グラマラスな顔も悪くはないかもしれませんがナチュラルから遠ざかり、over filled syndrome (入れすぎ症候群)という状態になってしまいます。頬が膨らみ眼が埋まった状態やまんまる過ぎる額、腫れぼったい唇など。

沢山入れてなくても不自然になることもあります。

なんとも言えず違和感のある顔貌、特に表情を作った時に不自然になりやすいです。


顔の脂肪にはコンパートメントがあります。房状になって区切られているのです。


浅い層の脂肪についての加齢変化です。


こちらは深い層の変化


コンパートメントが小さくなり、隙間ができ、弛みや溝を呈します。これを埋めようとベタッと入れると、塊のようにくっついてしまいます。コンパートメント間は自由度高く動かないといけません。広くベタッと入れると一塊となり、顔が固まったような感じになるのです。

コンパートメントを意識して、深くから隙間を持ち上げるように、かつはみ出さないように注入すると自然な形状と表情を得ることができます。そのためには自然な窪みは完全に消さないよう、バランス良く注入することが肝心です。

その他にも顔を支える支持靭帯の補強や緩んだ脂肪層の張りを戻すこと、加齢により変化した骨の形状を正しく埋めるなど様々なテクニックを用いて、自然に若く顔を作る事こそがヒアルロン酸注入の醍醐味です。

もちろん最小限の量で結果を出すことを目指します。一種のアートです。作品なので好き嫌いはあるかもしれませんが、私自身はナチュラル志向なので多くの人が納得頂けると思っています。

但し個人の独りよがりでの治療は好ましくないと思ってます。芸術でも基礎は大事。どんなに前衛的な作品の作者でも美しいデッサンが書けるものです。そのための勉強は大事。最近ではwebで海外Dr.の講演も多々ありますし、時々は個人的に海外の友人達にメールして疑問点など教えてもらっています。

それでも、注入は怖いとか、医師の技術に不安を持っている人も多いと思います。客観的に自身の技量を示すものはないのですが、

これは2018年にシンガポールで解剖の勉強をした参加証。


ヒアルロン酸の会社からも賞状頂きました。注入のトレーナーとしての仕事もしています。

少しでも安心して頂くために、今後も研鑽したいと思います。

ただ、それでもなお、製剤にまつわる副作用などはあり、「絶対大丈夫」とは言えないので、何かあった時の対処も勉強してます。