先日、35歳の独身女から
「飲み会を開いて欲しい」
と言われ、選りすぐりの男たちを集めて飲み会を開いたのだが、
「これじゃあ結婚できんわ」
とため息をつく瞬間が多々あった。

いや、確かに女たちは頑張っていたのだ。

男たちを盛り上げようと必死に話を聞いたり、努力している感じがひしひしと伝わってきた。

そして、それが、ダメなのである。

巷にあふれる恋愛マニュアルや婚活本には、
「女性としてのマナーを大切にしましょう」「男性が盛り上がるように聞き上手になりましょう」「男性の自尊心をくすぐるようなホメ言葉を言いましょう」 そんなことが書いてある。そしてそれを鵜呑みにする真面目な女子たちは頑張ってしまう。
 だが、その頑張りが


「この女、必死じゃね?」


となり、
はっきり言うとキモいのである。

こういうことを書くと「必死で何が悪いのよ。だいたいキモいで言ったらあんたの方が全然キモいわ。エロ漫画500冊て」となるのであるが、そして、実際に飲み会後に開いた居酒屋での反省会でそれに近いことを言われ、「俺もキモいが、お前もキモい!」と言い合いになったのだが、次第に「俺たちってキモいよね」と共感し、最後は「店員さん、アンキモ2つ!」と間違った方向で盛り上がることになってしまった。――こうなったら終わりである。互いに互いの傷を舐めあって一生を終えることになるだろう。

そこで、婚活を頑張るキモい女子は次の言葉を肝(キモ)に銘じること。

「お客のニーズを無視する努力はエゴである」

そして、現状、婚活に努力する女はエゴイストであり、何よりも「婚活」という言葉がそれを象徴している。
なぜなら「婚活」している女というのは、「結婚」を目的としていることを公言しているわけであり、つまりそれは目の前の男をちゃんと見るのではなく己の欲望を丸出しにしている言葉であり、婚活を男目線の言葉に直すとしたら


ヤリ活


である。

「僕、女とヤリたいんですよね。はい、バストは最低85は欲しいです。顔は長澤まさみまでとはいかないまでも、韓流アイドルとして通用するレベル? それくらいないと勃たないんス」

こんな男がいたら、キモいだろう。

しかし、これが「婚活」の実態であり、「婚活」という言葉をあっさりと日常会話に投げ込めてしまう女は、お客のニーズを汲めていない己を恥じよ。

では、冒頭の35歳女は飲み会において何をしなければならなかったのか。
お客様である「男」のニーズを満たす行動とは何なのか。
それは決して
「サラダを取り分ける」ことでもなく「聞き上手」になることではない。
飲み会においてお前たちが一番大事にしなければならないのは


ツッコミを入れること


である。

俺は大学4年間、六本木のカラオケパブでアルバイトをしていた。そこでは六本木のキャバクラや銀座のクラブのアフターで来る客が多く、そしてその中にはいわゆる美人ではないのに色んなお金持ちの男を連れてくる女がいて、俺は彼女たちがどのような会話をしているのかつぶさに研究していたのだ。
よく水商売で優秀な成績を持つ女たちは「政治や経済に詳しい」「仕草が優雅でやマナーに精通している」などと言われるが、まったく的を得ていない。

彼女らの特徴は、ただ一点。


ツッコミマスターであった。


なぜツッコミ上手な女がモテるのか。
これは、三つの理由があると考えられる。

まず、第一の理由。それはオーソドックスな理由であるが、正しいツッコミとは、その発言を相手がどのような意図を持っていたのかが理解できてはじめて可能になる。そして男にとって自分のセリフの意図を理解してもらえていることほど気持ち良いことはない。「キャッチボールがちゃんとできている」ことは気持ち良い会話の最低条件である。

次に、第二の理由。それはツッコミは、相手の問題を指摘したり、普通は口に出せない本音の言葉を会話に投げ込む行為なので、コミュニケーションにおける「予定調和を崩す」働きがあることだ。
これは、巷にあふれるコミュニケーションマニュアルのほとんどが見落としているのだがスパルタ婚活塾生はぜひ頭に叩き込んで欲しい方程式は


 魅力 = 予定調和を崩すこと

 
である。

 ※予定調和……受け手の予想する流れに沿って事態が動き、結果も予想通りであること

よく婚活マニュアルなどで「聞き上手になりましょう」などという記事には「相手に質問する」「相手の話にタイミング良く相槌を打つ」「相手の言葉をおうむ返しにする」などというテクニックが紹介されるが、はっきり言ってそんな女と話していてもクソ退屈である。しかもそういうテクニックを使う女が年頃だった場合「こいつ、結婚したいから聞きに回ってるんじゃね?」と邪推されることすらある。そういった相手の予想を裏切り、「今、自分は『本音』を正直に口に出している」というスタンスを明確にする意味でも、ツッコミは不可欠なのだ。

そして、第三の理由。これこそが、俺がお前たちに「ツッコミを極めよ」と口をすっぱくして言う最大の理由なのであるが、


ツッコミを入れることで、男の「上」に立てるのである。

そして、この「男の上に立つコミュニケーション」こそが、美しさを凌駕する必須スキルなのである。
具体的に説明していこう。

たとえば男が次の台詞を言ったとしよう。


「俺、料理得意なんだよね」


これに対して巷の婚活マニュアルの多くには次のような反応をせよと書いてある。


「料理得意なんてすごいね。今度食べさせて!」


 これは、男を盛り上げる、ホメる、さらに、次のデートをにおわせるなどを意図された台詞であるが、これが「退屈」であり、「必死に見えてキモい」ことはすでに述べたとおりである。

さて、ここでツッコミマスターはどう切り返すか。
もちろん状況は言い方など様々な要素が絡んでくるから一概に正解は言えないので「イメージ」してもらいたいのだが、たとえばこう返す。



男「俺、料理得意なんだよね」


「出た、料理得意アピール」



これである。
この台詞によって「私はお前より上だ」というスタンスを取っており、つまりは自分の方が価値が高いことを暗に宣言しているのである。
恋愛古典「ルールズ」で繰り返し述べられているように「男は手が届きそうで届かない価値のある女を求める」というのはまさにその通りであり、その意味で「私はお前の上である」ことを示せるツッコミは非常に有効なのである。
さらに、俺は、このように上から言われる行為を男が気持ち良く感じるのは、たぶん幼少期における女との関係が関係していると考えている。小学生の頃は、女の方が精神が発達が早いゆえに、女から「あんた何してんの」「バカじゃないの」と言われることが多々あった。それは同時に、少年の母親との関係性でもあり、心が形成されていくこの時期の女とのやりとりを男は心地よく感じるようになっているのではないだろうか。お前たちも幼少期を思い出して欲しい。「なんでこんな女の子が?」と思えるような可愛くない子も、男たちの上に立つコミュニケーションを取っていたという理由でモテていたはずだ。

先ほどの会話に話を戻そう。
たとえばツッコミマスターの女の会話は次のような流れになる。

男「俺、料理得意なんだよね」

女「出た、料理得意アピール。そうやって女の子部屋に誘ってんじゃないの?」

男「違うわ! 俺は本当に料理作るの好きなだけなんだって」

女「でも料理得意な人っていいよね。そういえば小栗旬って料理得意なんだよね」

男「へえ、そうなんだ」

女「(男を見て)あれ? 小栗旬に似てない?」

男「マジで?」

女「言われたことあるでしょ」

男「ないない」

女「いや似てるってー絶対」

男「(あれ、もしかしてこの女、俺に気があるんじゃ……)」

女「でも、私、小栗旬の顔あんまり好きじゃないんだよね(笑)」


これはコミュニケーション能力の高い女が使う「吊り橋トーク」である。気があるのかと思わせておいて否定する。否定したと思わせておいて、持ち上げる。男は揺さぶられ、気持ちを奪われていく。
そして、上記の会話は次の流れになる

女「じゃあ今度ホームパーティしようよ。料理うまいかどうか判定してあげるよ」

(後日、男の家で)

女「(男の手料理を食べて)めっちゃうまいじゃん!」

男「(まんざらでもない様子)」

こうした細かい会話テクニックは今後詳しく書いていくことになると思うが、今回俺がお前に一番伝えたいのは、男に対して「この女と付き合いたい」と思わせるためには男の上に立つコュニケーションをすることが非常に重要であるということだ。
そして繰り返すが婚活マニュアルでよく言われる聞き上手のセリフ

「料理上手な人ってすごいよね! 今度食べさせもらっていいですか!?」

がいかに魅力が乏しいものかお前には分かるだろう。
この台詞を言う女は、男の下になっている。自ら価値が低いということを宣告している。

ちなみに、「自分の価値を下げる」ことで男を落とすことができるのは、あらかじめ価値が高く設定されている女だけである。
たとえば長澤まさみとの会話で


男 「昨日、ランチどこで食べた?」

長澤「サイゼリア」


これだけで男は長澤まさみに惚れるであろう。
それが現実である。
しかし、もしこの話を聞いて「結局奇麗な女は得よね」などとほざく女がいるとしたら、俺はお前に対して団鬼六バリの折檻をしながらこう叫ばねばならない。


「美人じゃない方が得だがね!」と。


もし、自分を「生まれつきの美人ではない」と自覚する者は、その時点でとてつもない武器を手にすることができる。それは、もしかしたら人生における最大の武器と言えるかもしれない。


その武器とは「成長するモチベーション」である。


たとえば、先ほどの「吊り橋トーク」を始めとした卓越したコミュニケーション能力を身につけていたのは、美人ではない女か、今は美人に見えるが話をしてみると「昔は美人なじゃなかったから美人になるための努力をしてきた」女ばかりだった。
その結果、彼女たちは男の心の機微を読み、リスクを冒しながら相手を怒らせない絶妙なラインの言葉を会話の中に投げ入れられるようになったのである。

今から数年前の話になるが――俺の尊敬するツッコミマスターのチャコママという女性がいた。そしてたまたま俺が同席していたのだが、チャコママの客の男が仕事で中国に行くという話になった。「いつ日本に戻ってこれるか分からない」と男は泣きそうになっていた。 
――通常であればこの場面では「寂しくなるね」とか「いつ日本に戻ってきてもこの店は変わらないよ」とか「中国行ったら案内してよ」などという予定調和な言葉が飛び交うことになるだろう。しかし、チャコママは泣きそうになる男の肩にそっと手をおいて、こう言ったのだ。





 「SARSにかかって、死んで来い」


 ※ 当時、中国では「SARS(サーズ)」というウィルス性の風邪が大流行していた。



俺は、このときの男の笑顔を忘れることはできない。
男は泣きそうな顔で、爆笑していた。
――もちろん、この言葉の有効性はチャコママのキャラクターや男との関係性によって左右される。そしてチャコママ自身も、この台詞を選択したのは感覚的なものであっただろう。

ただ、この台詞はすごく愛らしかった。暴言に裏に「あなたと会えなくなるのがさびしい、その気持ちが嫌だからとんでもない憎まれ口を叩く」女のいじらしさのようなものが垣間見えたのだ。
この言葉はある種の芸術性を帯びており、俺はすごく美しいと感じた。

顔の形や骨格が魅力的でない女は良い。

しかし、退屈でつまらない女は絶対に許さない。

なぜならコミュニケーションは、己の努力次第でどこまでも成長させられる分野だからである。


そして、スパルタ婚活塾においては、女が努力で手に入れられる魅力のジャンルとして次の三つを掲げている。


「コミュニケーション」


「ファッション」


「立ちション」



この三大ジャンルにおいては今後徹底的に叩き込むことになるので覚悟しておくように。



第三講 まとめ

■ツッコミマスターとなれ

コミュニケーションにおいて最も大事にしなければならないのは、優しいことでも、気が遣えることでも、ホメることでも、良いタイミングで相槌を打つことでもない。
「魅力的なツッコミを入れること」である。


会話で魅力的なツッコミを入れた女だけが、魅力的な男からツッコんでもらえる(色んな意味で)。 水野愛也



■吊り橋トーク

 男を持ち上げたと思ったら落とし、落としたと思ったら持ち上げることで心を揺さぶるトーク技術。会話の中に小さな「押しと引き」を作るイメージを持つこと。
 



それでは来週火曜日、この場所で会おう。





「スパルタ婚活塾」が本になりました!


スパルタ婚活塾

 「男からプロポーズを引き出す方法」など書籍版オリジナル理論も多数追加されています。よろしくお願いします!