先日最高位戦のAリーグ全日程が終了し、
決定戦進出者と残留者、そして降級者が確定した。

そういえば協会の自分のことを書いてなかったので、
思うところを記録しておこうと思う。


木原浩一プロのブログマガジンに、こんな記事があった。

現役麻雀プロがガチで「天鳳位」を目指すブログマガジン

Aリーグ最終節の話と9月6日の十段坂

ご存知の方も多いと思うが、僕は今年の第13期Aリーグで15人中14位となって降級が決まった。(下位3人降級)

僕は第1期後期で入会し、第4期からAリーグに在籍した。
都合10年Aリーグにいたことになる。

今年の最終節は9月6日だった。
前節までの時点で僕は13位。
同卓の浪江が約90p上の12位だったので、浪江をまくっての残留は十分現実的なことだった。

初戦、浪江が起親でややリード。
その連荘中、北家の金が8巡目にリーチしてきた。

西家の自分の手牌は、せいぜいピンフ三色のリャンシャンテンというところ。
大した手でもないので、すでに場に2枚切れの白と北を抱えてスリムに構えていた。

リーグ戦の対局で、いい加減に打つことなどもちろんない。
3者それぞれに対し、後々何が切りにくくなるかは当然考えながら打っている。

問題は、この白も北も金の現物ではなかったことだ。
地獄単騎も警戒しないわけではないが、他に現物もなく、僕は一発目に白を切って、国士無双を放銃する。

競技生活13年目にして、初の役満放銃だった。

それでも、失敗したとか悔しいとかいう気持ちは微塵もなかった。
仕方ない、としか思わない。
白を残しただけの理由もあるし、金が国士と決めつけられる捨て牌でもなかった。

ハイ、と言って点棒を支払った。

あの時――白を1巡前に離していれば
もしかしたら浪江が掴んで自分が残留していたかもしれない――

そんな考えても仕方のない、本当に下らない結果論まで頭に浮かんで
1人虚無感に打ちひしがれる。そういうものなのだ。
(木原プロの記事より)


そうだね・・・。
まあ国士については、あまり思わなかったかな。
自分の中では、次の半荘のオーラスのことが、心残りではあるかも。


オーラス1本場。
僕は西家でトップ目だった。
北家の金が4500点差の2着目。すぐ下に親の達也がいた。

678p3577s チー345m ポン555p ドラ発

自分はこのテンパイ。

金が前々巡に僕から6pをポンしている。何点かはわからない。

ただ、トイトイではなく、普通の面子手だ。2着取りのタンヤオのようにも見える。

11巡目くらいか。ここに6sを持ってきた。

金は6pをポンしたとき、打6s。
次巡に手出しの6mだ。

・・・3sを切って、良いものだろうか?

しばし考えた。
金にドラアンコのカン3s待ち・・・あるだろうか。
逆に言えば、ドラアンコのカン3s待ちの場合のみ、切ってはいけない。

一応ここで降りても、ノーテン罰符ではまくられない。
ただラス親は達也で、達也はそのときトータルポイント首位。決定戦進出はほぼ確定していた。

その達也は、前局終盤に愚形リーチをかけて、親の一人テンパイにより連荘している。

これは打ち手によるのだが、そのときの決定戦確定の達也の思考は、「普通に打つ」であり、
「静観して流す」ではなかったことが見て取れる。

敵は、金だけではない。長引けば達也にもまくられると思っていた。

678p3577s チー345m ポン555p ツモ6s ドラ発

少考の後、僕はここで金の現物の6sを打たず、スジの3sを切った。

そして――、ドラアンコのカン3sに放銃した。


金は、

○○○67m66p246s発発発 ドラ発

こういう手格好から6pをポンし、打6s。
次巡、7mを重ねて打6mのテンパイであった。

採譜のない卓だったので今説明はしにくいが、金が場況に合わせた手組みだったのだろう。

金が、最後まで決定戦進出をあきらめない、トップを目指す意識が強いことを自分が理解していれば――、
僕はカン4sのままに受けられたと思う。

1000点の仕掛けのわけは、ないのだ。

この半荘はトップから3着落ち。
この放銃で都合68pの失点である。


そうして4回戦目。
現状はまだまだ浪江が上。
5回戦は抜け番なので、自分にとっては今年最後のリーグ戦の半荘だ。

ラス親の自分は点数を重ねてダントツ。2着の木原とは約25000点差だ。

5回戦目に浪江が大きなラスを引くことに賭け、まだ少しでも多くポイントを叩く必要がある。

西家の木原が序盤に1mをアンカンした。

それから9巡目くらいか、僕の上家が場に2枚目の発を切る。
対面の木原がポン。打7m。

すぐに回った僕の手番で、ツモ4m。

78m224678p23478s ツモ4m ドラ8s東

木原のホンイツを警戒して、前巡に3mを切っていた。

木原がポン出し7mだし、カン4mはあるかもしれない。
ドラは場に出ていたので、そこまで高くはないと思った。

この4mをツモ切って、僕のリーグ戦は終了する。

4555m南南南 ポン発発発 アンカン1111m

倍満。

(注:木原プロのブロマガの牌姿は、少し違います)

ギリギリ2着には残ったが、これも都合56pの失点。

最終的に12位浪江との差は80p少々だった。



「あれがなければ――これがなければ――」
反芻すればきりがない。

僕は今期序盤から負けが多かったので、暇があれば協会事務局に行き、
打った牌譜を全て見返していた。

他人の牌譜を見て打ち筋をチェックするというプロも多いだろうが、
僕自身は自分がきちんと打てているか、その確認をする主義だ。

相手がどう打つかは相手による。
自分が自分の思考に沿ってしっかり打てているならば、それでいいと思う。
結果は水物だ。麻雀なのだから。

とはいえ――、もちろん勝ちたかった。

最高位戦で降級した二人も、皆が認める実力者だ。
彼らの思いは知る由もないが、

木原プロの言うように、

これだけは断言しても良い。
勝ちに執着しない人はこの場には絶対にいないということだ。

たった1つだけ、それだけは紛うことなき真実であり、全員の本音だと確信している。


結果に恵まれなくとも、僕たちは無論真剣に打っている。
勝つために、必死でなかった者などいないのだ。


あの日、最終5回戦前。
僕は、金と木原と、隅の方でその日の対局について話をした。

僕はもう帰るだけ。
金と木原は最終戦の開始待ち。

僕から役満を和了った金にも、倍満を和了った木原にも、恨むような気持ちは毛頭ない。

ただただ、楽しかった。

こうやって、ずっと一緒にリーグ戦をやっている仲間と、その日の麻雀の話をするのが大好きだった。


悲しいのは、来年この場にいないこと。

少しだけ、気丈に振舞って、彼らが気を遣わないようにした。


まあ・・・あの人は気なんか遣わないか。

同期入会で、
大して話もしたことないくせに、
勝手に人の気持ちを代弁して。

礼なんか言わないし。