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↑リリース記念お祝い絵として描かせていただいたイラストです。明日のM3での購入特典イラストカードになりました!



るんこさんにソロアルバム収録曲提供のオファーを頂いたのは2021年の1月の話でした。


アルバムコンセプトは「私が好きだと思うアーティストさんにお声がけして楽曲を提供してもらい、夢のアルバムを作ろう」というもので、言わばるんこさんの考えるドリームメンバーに選ばれたわけで、とても嬉しく思いました。


るんこさんには過去、「地下鉄に乗るっ!」の非公式イメージソング「地下鉄にのって」を提供したり、僕の作品「君にEXPO」(アルバム「みんなでプリズムジャンプ」にボーナストラックとして収録)を歌っていただいたりしたこともありました、


オファーを頂いた瞬間に「よくばり」というタイトルと歌詞の方向性は決まりました。


僕は、曲を書く対象(楽曲提供するアーティストやイメソンを書くキャラクター)と自分の共通点や「気持ちが重なるところ」を抽出し、「我がこととして」曲を書くという手法をよく使うのですが、るんこさんと僕の共通点は「マルチに活動してること」でした。るんこさんは歌だけでなく、絵を描き、コスプレをしたり、楽器を弾いたり...。加えて、好きなものが非常に多い方で、休日には映画やライブや展示会などに行ったりと、忙しく動いていて、その生き方の在りようはまさに「よくばり」だなと。そして、それを肯定的に描きたいなと。自分が作り、るんこさんが歌う曲のタイトルとしてはこれ以上にハマるものはないなと、すぐに決めました。


もう一つ、早い段階で決めたこととして「メインではない曲」というのがありました。今回はアルバムの中の1曲ですし、想定されるるんこさんの作曲家人脈を鑑みて、自分は「メインではなく、実験的だったり、全体のスパイスになったり、足りないものを埋めるようなもの」にしようというものでした。自作曲がシングルで出るのであれば、正統派の曲を目指しますが、今回はそうではないと自分の役割を規定しました。


そこまで決めはしましたが、先行する案件がたくさんあり、実際に着手できたのは夏頃でした。


その頃、歌詞について、あれこれ考えていましたが、決定的になったのは、何かの作業中につけていたテレビから「ヒップホップとバレエどちらかを選べなんて言われても困る!」というようなセリフを聞いたことでした。確かNHKの海外ドラマでしたが、それが天啓みたいに響いたので、そのワードをそのまま歌詞にしました。

(あとで調べたら「ファインド・ミー〜パリでタイムトラベル〜」というドラマのようです)


「海外のドラマでヒロインがヒップホップとバレエどちらか一つだけ選べなんて言われても困るって嘆いているのを見て」という、ほんとにそれだけのフレーズに何十パターンものメロを当てはめるという試みをずっとやりました。

このフレーズはサビの歌詞っぽくないので、敢えてサビにしたら印象的になるかもしれないという考えからです。近年のボカロ曲っぽい速い譜割とか、めちゃくちゃ明るくてポップなメロとか、色々と試しましたが、最終的には、クールなものに落ち着きました。「ヒップホップとバレエ」なので、ビート感が効いたラップのようなもの+流麗さ、みたいな感じです。


あと、この頃は「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の影響もあって、宇多田ヒカルさんをめちゃくちゃ聴いていたんですが、「クールなサウンドに、一見それにそぐわないワードを当てはめる」みたいなセンスがとても好きで、それをやろうと思ったという意図もあります。「少年マンガ」とか「年賀状」とか。


それと、今回は作編曲のやり方をやや変えました。いつもはメロと歌詞とコードが完全に決まってからトラック作りに入るのですが、今回はトラックも平行して作り、トラックに合わせて歌って最終的なメロを決めるという方法を採っています。トラックに合わせて歌ったものをピッチ補正ツールのVari Audioで検証して、トラックのコードを調整する、みたいな。

そのため、るんこさんに送ったデモは、この曲のメロが生まれた最初のテイクをそのまま使ったと記憶しています。

Cメロの"研ぎ澄まされた普遍性は先鋭性も内包する"

"フェティッシュであることとは自分と受け手(あなた)を信じること"という歌詞はトラックを作りながら降りてきたフレーズです。その直前で「初期衝動よ」と言ったので、それに合わせてトライバルなリズムが入るとか、作詞とトラック作りがリアルタイムで連動するみたいな、そんな作り方をしました。

結果、作り方を変えたことでこれまでとは違った面白さが生まれたのではないかと。


楽曲提供作品なのに随分と攻めた作りにしたので受け入れられるか不安でしたが、るんこさんがそれを面白がってくれたので一安心しました。


20219月末頃にデモを提出。その後、12週間くらいでるんこさんのレコーディングがありましたが、デモを受け取って間がなかったにも関わらず、レコーディングはスムーズに行ったみたいです(今回はレコーディングに立ち会っていません)。前述したように、るんこさんとは過去何作かご一緒しましたが、毎回スキルが上がっていることに驚かされています。


レコーディング後、るんこさんのボーカル素材を受け取って、コーラスを作ったり、カットアップや逆回転などの編集を行って、エンジニアを担当してくださったフナハシダイチさんに提出しました。今回のアルバムは歌をメインにした、所謂ボーカル・アルバムなので、そのボーカル素材にオクターバーをかけて変調させたりしたことで変化がつき、「アルバムの中のスパイス」というこの楽曲の役割はよりクリアになったと思います。


ここから、エンジニアのフナハシさんによるミックスを経て音源が完成。そこからはるんこさんによる作業やリリースについての諸々を経て、20228月に、CDの現物が届きました。このあたりの多くは割愛しますが、アルバムを実際に手にして、実際に聞いた時の印象は「るんこさん、本当によく頑張ったなあ。すごいアルバムをほんとに作ったんだなあ」でした。宝箱のようなアルバムという意味で「Casket」と命名されただけあって、本当にどの楽曲も煌めく宝石のようで、その中の一つになれているのであれば光栄であります。


本作はCD及び各種配信サービスで配信されておりますので、是非その宝箱をあなたの目で確かめてください。


↓歌詞です!


yokubari



「一周だけバイキング」なんて

上手にこなせる自信なんて、ない

だって私よくばりなんだって

抱え切れなくても抱えちゃうの


singing,drawing,cos-playing

なんでこんな同時進行

まるで一人のヴィレッジのヴァンガード

フル回転する製造ラインって

逼迫している!


一筋は美しいけれど

諦めた好きだった人のこと

思い出すでしょう


だから私・・・


海外のドラマでヒロインが

「ヒップホップとバレエどちらか一つだけ

選べなんて言われても困る」って嘆いているのを見て

私は大きく頷いて

cubaseibisを開きました

さあ過集中という楽園へ飛び込もう


会社が定時やや過ぎで終わり

私のための季節の始まり

さてと変身 ここからなんだって

深呼吸して推しと待ち合わせ


人生光陰矢の如し

48時間(four eight hours)ないし

プリヴィズ通り作るのは難しい

大変そうに見えたって

楽しんでいるのさ


「神様は二物与えた」なんて

手に入れたその喜び、忘れてるでしょう


あ・・・

跳ねたイメージが心地よく響いて

私は急に人形アニメを独学で作ろうと思い立ち

blender?紙粘土?どっちがいいか迷い始めました

初期衝動よ!


"研ぎ澄まされた普遍性は

先鋭性も内包する"

"フェティッシュであることとは

自分と受け手(あなた)を信じること"


さあラスト1verse


さあ世界に満ちた面白いもの

私という存在を通り抜けてゆけ

苦悩も喜びも

ありふれているかもしれないが

絵もまんがも歌も

アニメも実写も映画も小説もなんでもいいよ

私は煌めくおもちゃ箱を届けたいんだ

届けるから



【るんこさんによるブログ】

https://note.com/runrunko/n/n8a646d1cf8f5


【試聴動画】

‎⁦‪youtu.be/6q_D7ktHkUw‬⁩


【タワレコ】

https://tower.jp/item/5462046/Casket


iTunes

https://music.apple.com/jp/album/casket/1642655583


srotify

https://open.spotify.com/artist/0mcOAoKmq8Zlrs0UeWe0WO




ここまでで裏話はひと段落ですが、歌詞中に出てくる「あまり一般的ではない言葉」について解説しておきます。


・一周だけバイキング......「テレビ千鳥」の企画名。一周しかできないバイキングで隠れた人間性を暴くというもの。企画内の芸人さんの抱えきれないほどの料理を抱えてしまう姿はこの曲のテーマと合致します。


Cubase......音楽制作ソフト。プロからアマチュアまで非常に多くの方が使っているソフトです。僕も使っています。


・アイビス......アイビスペイント。無料のスマホアプリですが、充分イラストに使える優秀なペイントアプリです。僕も使っています。


・プリヴィズ......プリヴィジュアライゼーションの略。僕が敬愛する庵野秀明監督が「シン・ゴジラ」から導入した手法。仮の映像を組み合わせて本編制作前に作られる映像。音楽で言えばデモ。


Blender.......3DCGを作るソフト。僕自身は持っていませんし、使ったこともないです。