突然の告白ですが私モラル、自動車免許を取得するため、教習所に通っております。

特別、免許を取ろうと思った理由なんてものはないのですが、まあ人生ずっと無免許でいるわけにはいかないなとは漠然と昔から考えていて、ちょっくらスケジュールに余裕が出来たこのタイミングで、思い切って取っちまえと腰を上げたわけです。

「え…むしろその歳まで免許なしでやって来たの!?」とか、そういうツッコミはまあまあ、いいじゃないですか。何はともあれ教習所の門を叩いた、その勇気を評価して頂きたい。


で、実際に通っている今、どんな感じかっちゅうと。
はい、もう一言で言いましょう。向いてないです、僕。

いや、学科はいい。学科はいいんだ。
元々勉強は出来る方だったし、毎時間、一番前の机に座って、しっかりメモを取りながらウンウン頷いております。「二段階右折」という言葉も、この歳で覚えました。

問題は、実際に車を運転する、技能の方。
これがもう、絶望的に駄目なわけです。
何か、車の運転の上手い下手って、その人の運動神経に直結する感じしませんか?
僕は、自分で言うのも何ですが、致命的に身体がバカなもんで、それがそのまま、ひどい運転に繋がっている気がします。

大体、速度のことを考えながら、同時にハンドルのことを考えるってのがハードル高すぎます。
アクセルばっかり気にしてたら教官に「ハンドル!」と怒鳴られ、ハンドルに気を取られていたら「アクセル!」と怒鳴られ。
パニックになって、他の教習車めがけて全力でアクセルを踏んで、血相を変えた教官が急ブレーキを踏んで。

しまいには、「僕も長年この仕事やってますけど、こんなに周囲を見ない人は初めてです…」と言われてしまいました。

屈辱。

普段、偉そうに演出家なんて名乗って、「ちゃんと周囲を見ろ」とか俳優に言っている僕が、「史上最も周囲を見ていない男」認定を受けたのです。





このアホ面をした男は、ウチの劇団の板倉武志。
舞台上でいつも余計なことをしては、演出家に怒られています(一度、外国の方の演出を受けた時に「板倉サン、トゥーマッチ…」と言われた事件はもはや伝説。併せて、その演出家さんがその舞台の初日を見届けて母国に帰るとき、「板倉サン、(演技を)ノーチェンジ、ノーチェンジ!」と彼にだけ何度も念を押して帰って行った事件ももはや伝説)。

ですが。その板倉は、運転免許を持っている。
しかも、難易度の高いマニュアルの免許です。


これ以上の屈辱はありません。
運転が上達するより前に、自分のプライドが粉々に砕け散ってしまいそうです。

しかし!!

あれですね、人間というものは環境に合わせて進化するといいますか、僕はついに、穏やかな精神を保ちながら教習を受ける手段を開発したのです。

それは、「フリーザ様ごっこ」です。

例えば教習中、教官に「ホラまた、速度落ちてるよ!」と怒られたとしましょう。
すると僕はすかさず、心の中で、ドラゴンボールのフリーザ様の言葉を呟くのです。


「はじめてですよ…この私をここまでコケにしたおバカさん達は…」






こうすることで、劇的に心の負担は軽減されました。
何ならもう、フリーザ様のセリフを言いたいがためにミスをしたいくらいのテンションです。

入学早々、登校拒否になりかけていたモラルですが、このメソッドで、ここから頑張っていこうと思います。