まず前提として、私は一つの事実を認めなければならない。
そう。
自分は太っているのだ……ということを。
かつての私は、むしろ痩せ型であった。
それは、親が作ってくれる栄養バランスの取れた食事だったり、坂道が続く長い通学路を毎日歩いていたことだったり、そして若さゆえの新陳代謝だったり、そんな様々な外的要因お陰だったわけなのだけれど、私はすっかり「俺は太らない人間なんや!」と油断してしまい、二十五歳ごろから、坂を転がり落ちるように体重が増加していった。
むろん私とてこの事態を、手をこまねいて見ていたわけではない。
二十代の後半、私は何度も、ダイエットに挑戦してきた。
そして、挑戦した回数だけ、惜敗してきた。
いや、惜敗、という言い方では、ちょっと自分に甘すぎるだろう。
惜しかったことなんて一度もない。
毎度毎度、光の速度で諦めてきた。
そんな私が、三十代を迎えて出した、一つの答え。
それは、「もういいや」あった。
別に、体型なんてどうだってええやないか~い。
人生、楽しんだもん勝ちやないか~い。
こうして私の、美意識の時計は、時を刻むのを止めたのである……。
ところが、である。
先日、銭湯に行った時の話。
私は、脱衣所の壁一面の鏡が映し出す自分の裸体を見て、思ってしまったのだ。
なんて、だらしない身体なんだ……と。
「わたしという戦うボディ」とBoAは歌ったが、こんな身体では、戦いなどできようはずもない。
その瞬間、私は懲りずにもう一度、ダイエットへの道を歩くことを決意したのだ!
私は、考えた。
一体なぜ自分は今まで、ことごとくダイエットに失敗してきたのか。
そして、「いつも秘密裏に事を運ぼうとしていた」からではないか、という仮説に辿り着いた。
自分としては、人知れず努力を重ねて、ある日突然、誰もが息をのむようなボディに変化して周囲を驚かせる……という、理想的なパターンがあるわけである。
しかし、「秘密にしている」ということは、「挫折しても誰にも知られないから恥をかかない」ということでもある。
今までの私は、まさにこのパターンであった。
誰にも知られず、「痩せているかもしれないモラル」と「痩せていないかもしれないモラル」が重なり合う、そんなシュレディンガーのモラルが無数に存在していたわけである。
いや、まあ、痩せてないんだけどさ。
なので私は、同じ失敗を繰り返さないために、今までの「成功した姿を見せよう」という甘い夢を捨てて、現在の決意と、その経過をつぶさに世に報告しよう、と決意した。
それがこの記事から始まる、「ほのぼのダイエット紀行」シリーズである。
ここから不定期に、更新していきたいと思っている。
このシリーズは、従来のダイエットブログとは一線を画す。
「こうすれば痩せる」だとか、「こうすれば決意が続く」だとか、そういったハウツー的な側面は、一切期待しないで欲しい。
はっきり言うが、私は意志薄弱だ。
かつて、「完本するまで預かっていて欲しい」と友人に渡したニンテンドーDSを、完本前に取り返したこともある。
自分で言うのも何だが、そんな私が、強い意志を持ち続けたままダイエットできるとは到底思えない。
時には、いや、しばし、甘いものも食べるだろう。
タガが外れて、暴飲暴食をする日もあるかもしれない。
極端に言えば、一週間後に全部なかったことにする可能性だってある。
また、本来であれば、私の現在の体重をここに書くべきなのであろうが、私はそれをしない。
なぜなら、言いたくないからである。
このブログを今書いていて、自分はつくづく、自意識が強い人間なのだと思い知らされる。
例えば、この写真を見て欲しい。
これは先日参加したワークショップで、「二人一組になって、相手の写真を撮る」という時に撮ってもらった、私の写真である。
この一枚に辿り着くまで、私は膨大なオーダーを相手の方に出してしまった。
「ここは写さないで欲しい」であるとか、「この角度はやめて欲しい」であるとか。
今の私には、まだ「ありのままの自分」と向き合う勇気はない。
ただ、私は思っている。
このブログを通して、体型だけでなく、自意識にまみれた自分の心も変えていきたい、と。
自分の体重も堂々と言えるようになりたいし、変な写り方をした自分の写真も公開できるようになりたい。
そう。
これはもはや、単なるダイエットブログではない。
人間の弱さや強さ、人を信じる心などをありのまま描き出す純文学なのである。
皆さんには是非、これからしばらくの間、この文学にお付き合いいただきたい。
そして、私がこの話をしなくなった暁には、止めたんだなと察して欲しい。
もし、応援してくださる方がいれば、コメントなどをいただけると、とても励みになります。
そして、「一緒に運動しようぜ」的なお誘い、大歓迎です。
もしくはいっそ、「一日くらい好きなもん食べちゃえよ」という悪魔のお誘いでも。
さて。次回からはいよいよ、実践編に入っていこうと思っている。
果たして、その時まで続いているのか……?
そして、現在のモラルの体重は一体……?
気になることだらけのこのシリーズ、どうぞよろしくお願いいたします!