大阪万博について連日の報道が続いています。


8月7日に自民党の船田氏の「撤退も視野に」という発言に対し、
二階氏がそれを封じた格好。
 


8月8日、自民党の「大阪・関西万博推進本部」は会合を開き、準備の遅れが懸念されている大阪万博の成功に向け、与党として最大限の支援をする方針を確認した。
 会合の冒頭、本部長をつとめる二階俊博元幹事長はこうあいさつし、党をあげて全力を尽くす方針を示した。
「工事の遅れなどでいろいろ言われているが、国家の威信をかけて成功させる必要がある。成功に向けて党をあげて全力を尽くしたい」


この発言に、太平洋戦争かよ!日本軍かよ!といった声が広がっています。

 

党をあげて全力を尽くす、とのことですが、
今回の問題はパビリオンの建設ですから、全力を尽くすのはゼネコンなんですよね。

 

そのゼネコンが、「無理です」と言い出しているわけだから、
政治家の人が出来るのは、ゼネコンが仕事をやりやすいようにするしかない。

その方法は、普通の建設工事なら、予算を増やす、工期を延ばす、職人を連れてくるの3つしかない。
予算については、たぶん簡単、財務省が万博予算を増やすだけ
工期を延ばす、これは一応万博協会BIEの総会に持ち込まないといけない。
職人を連れてくる、これは無理。首都圏の工事も止めて地方の公共事業も止めて、万博工事に人を集めるのは無理です。なぜなら根本的に人が足りないから。
職人は人夫じゃないから、技術の習得も必要だから急には増えない。

仮に、二階さんが戦国時代の織田信長だとして、天下普請のために他の大名は地元の工事を中止して大阪に集合!じゃないと侵略する!と脅したとしても、無理。
現場には橋が二本しかないから、大量の人員や資材の運搬ができない。



ここまでの通勤移動や運搬や通いはしんどい。
ならば、時代と逆行するかもしれませんが、
夢洲には飯場を設けるしかないんではないでしょうか?

パビリオンについてばかり現地レイアウトを検討しているようですが、
パビリオンを建てるための現地滞在エリアが必要です。
昔でいうところの「飯場」です。
英語ではBunkhouseといいます。



 

これは、かつての昭和の黒部ダム工事現場です。


飯場と聞くと、こういうのを思い浮かべる人もいると思いますが。

が、現在は飯場といっても、普通にワンルームマンションの個室に
ビジネスホテルの朝食バイキングぐらいは当たり前でしょう。




それに、そうしないと人を集めることなど無理でしょう。

建設も戦争もロジスティクスが一番大事なのです。

ロジスティクスは、生産、保管、出荷、配送などに関わる「物が効率よく生産・流通する仕組み」を構築することです。

この場合、現場で働く人の働きやすさと資材の運搬効率を確保することが大事なんですね。

そこが!出来ていない。

新しい街をつくるようなものなのだから、それを作る人たちのための生活拠点が必要になるのです。

世界的にも有名な話で、ブラジルの新首都ブラジリアのケースがあります。



オスカー・ニーマイヤーというブラジル建築界の巨匠を中心として、未来都市としての新しい首都を、なにもないジャングルを開拓してつくりました。
もう、国会議事堂から庁舎から、全部がパビリオンみたいなものです。
1960年代のことでした。

この新首都を建設するために莫大な予算と人が動員されましたが、
なにもない場所で建設をおこなうわけですから、
首都の前に、建設する人々のための町が必要になるわけです。
が、建築家はそれを忘れていましたね、もしかしたら気づいていたかもしれませんが、

そっちの設計はやっていないし、政府に頼まれてもいません。

なので、新首都ブラジリアが出来る前にできたのが、建設労働者のための町です。
「飯場都市」と呼ばれていて、当時から、新首都ブラジリアよりも活気があって、よほど都市らしいと言われていました。

都市計画家のあいだでも、人工的にデザインされ大規模なブロックに大通りで分割されたブラジリアと、自然発生的に生まれたバラックの宿泊所や食堂や飲み屋がひしめく路地と、どっちが本物の都市なのか?と世界的な議論の対象になりました。


現在では、ブラジリアの衛星都市としていくつかの町があります。



そういう飯場の街をつくっておかないと、
国家の威信をかけようが、なにしようが、パビリオン工事は進まないんですよ、
と申し上げておきます。

となると、この街づくりの予算をさらに準備しておかなくてはなりません。
が、もし、飯場の町が出来たならば、定食屋やお好み焼き屋などの粉モンや、
居酒屋や小料理屋、スナックやバーがひしめき合う路地が連なり、

そこはきっと、万博後も活気のある大阪名物の観光地になるでしょうね。