演劇の公演の受付は、当日券を要求された場合、すんなり売るべきである。
「すんなり」どころか、喜びを若干強めに表すべきだとさえ思う。

「関係者にお知り合いはいませんか?」と訊いてはいけない。
fringeの受け売りなのだけれど、この考え方に全面的に同意している。
自分の劇団では絶対に訊かないようにしていた。

客演さんたちには前もって「訊きませんからね」と言い、外注の制作さんには「訊かないでください」と頼んでいた。

参考:2.受付時の『劇団員の中に知り合いの方はいらっしゃいますか?』ってのなんで? | Rush!ブログ

昔、下北沢のとある劇場で、ただの飛び込みで当日券を買おうとした時、「え? 誰の知り合いでもないの? じゃあ何なのコイツ?」みたいな顔をされたことがある。
それはたまたまその担当者がひどかったということだろうけれど、「演劇の受付とは役者のお客さんに応対するもの」という認識でいる制作さんは少なくないと思う。

たいていの公演で、「役者の知り合い」が客席の9割以上を占めるのは事実。
そこは否定しても仕方がない。
しかし、誰の知り合いでもないお客さんが増えない限りカンパニーの成長は望めないわけで、誰の知り合いでもないお客さんが来るには受け入れ態勢が整っていなければならない。

けれども。

チケットノルマとかチケットバックとか、カンパニーと役者個々の力関係とかのアレコレで、「関係者にお知り合いはいませんか?」と訊かざるを得ない状況というのはどうしてもあると思う。

たぶん、制作をやっている人で、fringeの主張が理解できないという人はいないだろう。
でも、理想と現実は違う。
偉そうなこと言ってんじゃねえよ俺の客来たんだからカウントしろよ、という考え方の役者もいて、公演としてそいつを排除できないなら「関係者にお知り合いはいませんか?」を訊くしかない。

それなら。

せめて訊き方を変えてほしい。
「関係者の知り合い」を直に訊くのは、あまりにも裏事情が透け過ぎている。

「本日はどちらでこの公演をお知りになりましたか?」……というのはイマイチ日本語がきれいではないけれど、関係者の知り合いを訊くよりは百倍マシだと思う。
その訊き方でも、関係者の知り合いなら「○○の紹介で来ました」と答えるはずだから、必要な情報は得られる。



身内同士で見合う「発表会」なら、知り合いでもなんでも訊いて、みんな前売料金にしてしまえばいい。
けど、世の中に開かれた「公演」であるなら、一見さんにつべこべ訊かず、あっさりと通してあげてほしい。