サラダとチョコレートを買うために、


おもてへ、出る。





「あなたさん、おもてへ出ていますか」


と質問がきた。


サラダとチョコレートを買うために


おもてへ、出て、いる。


ひとを、ばかにしてはいけない。





けれども、


そういっても、


相手は、


「そうですか」


と平気の平佐である。


これには、わたしも


おどろいた。


なかなか豪胆な人間だと


思った。





今日もまたサラダとチョコレートを


買いにおもてへ出たばかりだ。


いい宵だった。


こんなにいい宵が続くなら、


明日はもっともっととおくまで


歩いていける気がする、


とわたしはいった。いって、やった。


くやしかったのである。





だが、相手は、


「それもいいでしょう」


と、こうである。


なんだか、


のらりくらりしている。


とても尋常とは思えない。





それでも、


わたしはサラダとチョコレートを


買うために、宵闇をかきわけて、


いくと、思う。


ときどきは、


眼をつむって、闇の感触を


たしかめたりもする。


闇の息吹にぞくぞくして、


内臓がもぞもぞしてくる。


わたしは、闇と


たわむれて、いる。


そういうことも、


ちゃんと、やっている。


そうか、それをあいつに


伝えればよかったんだ、


と帰路をいそいだけれど、


相手の名前さえ


しらなかった。