まどろんでいると、


やつぎばやに訪問客が


おとずれてきて、


いれかわり、


たちかわりしていくんだが、


なにしろ、


まどろんでいるせいもあって、


それが、男だか女だかひとなんだか


どうにも判然としない。


馬や豚もまぎれこんでいるのだか、


どうにもぞっとしないこと


このうえない。





そのうちに、


ぬっと手が差しのべられたので


すえぜんくわぬはなんとかと


とっさに思いたち、


その手をにぎりしめようとしたんだが、


ぜんぜん届く気配が、ない。


届くどころか、どんどん


手が離れていくので、


ますますその手が


いとおしくなって、くる。





そう思ったとたんに、


からだがずぶずぶと


しずみだしたんで


これはたまったもんじゃないと


もがきはじめた。


もがけば、もがくほど


そこの方にしずんで、いく。





あんな手ごときに


執着をおこしたわたしが


ばかだったんだ、と


後悔したが


あの手はどうも


父の手だったんじゃないかと


しずみながら


ゆっくりと


かんがえて、いた。