キム・チョヒ『チャンシルさんには福が多いね』。映画の仕事一筋で生きてきた女性が突然職を失い、仕事なし、家族なし、金なし、のなか、じんせいをもさくしてゆく映画。タンクトップ姿で現れるおしゃべりで不思議な幽霊や下宿先の老人、家政婦のしごとをくれる若手女優、フランス語の家庭教師のバイトをする短編映画の監督など、チャンシルさんのまわりには少ないけれどかの女をきにかけてくれる愛すべきひとたちがいて、カウリスマキ『浮き雲』のような、無口で表情のすくないひとたちの愛にあふれた映画。少しの、少しずつの、愛というもの。