雑誌ホトトギスと戦争のドキュメンタリーを見ていて、とくに紹介もされず、すみっこにうつっていた句だけれども、「空襲になれて月夜を歩きをり」という句がよかった。どんな世界でもそれになれてしまって、ふっと月夜をあるいているじぶんがいる。危険とか平和とかも関係がなく、どこかでゾンビが出たというニュースにも関係なく、月のした、むかし教えられたたいせつなことを思い出したり思い出さなかったりして、しんしんとひとり歩いている。わたしを月が、月をわたしがてらしている。そういうことってあるよな、と。あるほうの世界をあるく。