第2話 「親父の死亡診断書」はこちら
僕らは、親父の住んでいたアパートの大家さんの家を訪れた。
大家さん夫婦は、70歳ぐらいの老夫婦だった。
リングに案内され、少し話をした。
親父の第一発見者は、叔父さんと大家さんの奥さんだった。
奥さんの話では…
「相当苦しかったんでしょうね…(右腕で)左胸をギューっと抑えた感じで死んでましたよ…」
「でもね…顔は穏やかでしたよ…苦しさから解放された安堵の顔だったのかな…」
そう言って、奥さんは涙を流してくれた。
しばらく話をした後、親父の居た部屋に行った。
親父の部屋は、風呂なしトイレ付きの2Kの間取りだった。
部屋の中は大量の焼酎のペットボトルやビールの空き缶、ゴミなどが散乱していた。
部屋の状態は予想はしていたが、燦々たるものだった…
叔父さんはポツリと言った…
「僕が部屋を訪れた時は、酒なんて全くなかったんだよ…きっと、押し入れに隠していたんだろうね…」
叔父さんが部屋の隅にある布団を指差し、
「ここで死んでいたんだよ…」
と言った。
ここで親父が死んだ…
誰にも看取られることなく、1人寂しく逝った親父…
しばらく沈黙した後、叔父さんが…
「部屋の荷物はどうする?」
母は、
「……残しておいてもしょうがないから、処分してください…」
冷たい様だが、母は離婚まで考えていた相手の遺品なんて、欲しいとは思わなかった…
僕らは部屋を出て、そして親父の死亡の手続きや書類などを用意する為、自宅に戻る事にした。
そして行きと同じ様に、一般道で5時間以上をかけて、自宅に帰った。
自宅に帰ったのは深夜2時を過ぎ、1人で運転し切った僕は、親父の死を悲しむ余裕もなく、倒れる様に眠った…
こうして僕らの長い1日は終わった…
続く…
親父の死んだ時の話の3回目です…
話にもある通り、親父の遺品はほとんど残ってません…
僕が唯一持っている物は親父の組長スーツだけ、弟達も時計やら何かでやはり1つぐらいしかありません…
写真も嫌いな人だったので、写真も少なく、特に晩年の写真は全くありません…
親父の思い出は本当に記憶の中だけになっていますね…
次回は、親父が働いていたタクシー会社を訪れた時の話です。