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映画日記は三日坊主。

映画大好き現役高校生の映画批評ブログです。
劇場で鑑賞した作品や何度見ても素晴らしい名作、または記憶から消したくても消えないトンデモ作品をレビューしていきたいと思います。

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「スーパーマンはいない。」

<作品解説>
全米公開時に予想外の反響を巻き起こし、大ヒットを記録したアクション・サスペンス。
仲の良い3人の若者たちがある日、偶然“特殊能力“を手にいれ、次第に強大なその力に振り回されるようになる様を描く。
ありふれた高校生の日常が次第に変化し、想像を絶するバトルが繰り広げられる様を新鋭ジョシュ・トランク監督が見事に演出している。

<感想>
ビデオカメラで撮影したような映像を使い、まるで自分が映画の中にいるかのような疑似体験を味わえるPOV
日本では『パラノーマル・アクティビティ』が話題になりましたが、今となると新鮮味はほぼゼロに等しいジャンルです。
リアルな演出を追い求めすぎて脚本を駄目にしたり、ワーキャーうるさいパニック映画になってしまうので僕はあまり好きな手法ではないです。
POVは映画の新境地を開いたと同時に映画の醍醐味を潰してしまった、と思っていましたが...
この『クロニクル』は一味違います。
主人公のアンドリューはビデオカメラを通して自分と向き合うようにしている高校生。
気弱な性格から学校ではイジメを受け、アル中の父に暴力を振るわれる毎日。
そんな中、社交的な従兄弟のマットとアメフト部のスターであるスティーヴに誘われて謎の洞穴に入るアンドリュー。
3人はそこで、物を触らずに動かすことができる「テレキネシス」という能力を身につけます。
主観映像だけに絞らないというのが斬新で、アンドリューが使っているビデオカメラの他にも病院の監視カメラやスマホも扱われていてバラエティに富んだ映像が楽しめます。
クライマックスに近づくにつれてアトラクション的な面白さも加わり、POVのいい部分を理解して作られていることが分かります。
また、ドラマ性をしっかり持たせたストーリーが素晴らしいです。
まだ精神状態が未熟な高校生たちが悪ふざけとして超能力を使う軽快な前半がアンドリューが周りの人間関係と自分のパワーに翻弄されるシリアスな後半へのエッセンスとして重要な役目を果たします。
伏線の張り方も含め、脚本が実に丁寧です。
アンドリューが他の2人より強力な力を手に入れたのは、彼に"悲しみ"や"怒り"という強い感情が深く刻み込まれていたからなのだと思います。
アンドリューの周りを取り巻く人間の無責任な行動や言動が最終的に彼をモンスターに仕立て上げてしまったのだとしたら…
今作はそういう若者の繊細な心情をPOVという形で丹念に描いています。
もしも自分が超能力を持っていたとしたら、その力を使って人助けをしたいと思うでしょうか?
「憎いあいつをこの力で...」と思う人のほうが多いでしょう。
結局はその力に酔いしれてしまい、自ら破滅を招いてしまう。
スーパーマンは宇宙人であり人間ではない、人間であれば負の感情に負けて汚い道を選んでいた。
悲しいですが、そう考えるほうが自然かもしれませんね。

点数…84点


(2013.10/1   TOHOシネマズ海老名にて鑑賞。)