彼女がたくさんの困りごとを抱えて不安でいっぱいだと感じていれば、離したくても目は離れないし、無意識にサポートの手が伸びるはずでした。でも、今、この家の中でいちばん困っている人は私であり、私がケアすべき対象は私だという認識でした。
そういう緊張状態を引きずりながら、春から夏の終わりまでを過ごしました。
そして、私たちは二人きりのドライブ旅行に出かけました。おいしいものを食べたいというので、鳥取県の境港に宿泊して市場に通い、岩ガキやウニを食べました。それは、口の中いっぱいに海が広がるような、脳が海と一体化したような体験でした。
5日間で1100㎞を車で走り、日中は鳥取砂丘や大山に点在する牧場でゆえを遊ばせて、毎晩おふろは皆生温泉へ通いました。ゆえは予定していた美術館などには行かず、毎日毎日、動物と触れ合える場所を求め、広々した自然の中を遠くまで走っていました。
ご機嫌でぴょんぴょん飛んだり走ったり、砂丘で熱中症になりかけたり、わくわくのびのびどこまでも彼女は自由でした。その姿は幼児さんの頃、家で過ごしていた小学生の頃と同じに見えました。
彼女はしっかりした感じで大学やバイト先では頑張っているけれど、変身を解いたら今もあの頃のままのゆえなのだとわかりました。大きな自然の中で、遠目だからこそ見えてくる姿がありました。それでも、もう、動物を怒らせて嚙まれたり、勝手に柵を乗り越えて動物に近づいたりはしないので、やっぱりあの頃とは違うし、とても楽になりました。ゆえはゆえ、そう思いました。
大学生としての彼女は着々と履修単位を積み上げ、バイト代を貯め、家ではストイックに作品を作り続けています。彼氏もいるし、友達もいっぱいいる大学生が、母親と旅行したい気持ちが私には分かりませんでしたが、母娘二人で鳥取に行けてとてもよかったです。長いと思った5日間でしたが、私たちには必要な時間だったと思います。
ゆえは変身して俗世を生きている自由人なので、時々はありのままの姿に戻ります。日常においては頑張って社会適応していますが、やはり誰かの見守りや、時にはサポートを必要とします。それを私に求めているのです。
今、やっと腑に落ちた感じがしています。
私の能力にも命にも限界はあるので、どこまで、いつまでとは約束できないけれど、それはそれ、私のありのままで。
何かとご心配をおかけして申し訳ありません。いつもありがとうございます。皆さまもお身体を大切に、無理なくお過ごしくださいませ。
それでは、また、近いうちに。