「ダモクレスの剣」 | 武藤貴也オフィシャルブログ「私には、守りたい日本がある。」Powered by Ameba

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国家主権、国家の尊厳と誇りを取り戻す挑戦!品格と優しさ、初志貫徹の気概を持って(滋賀四区衆議院議員武藤貴也のブログ)

 ヨーロッパの古い言葉に「ダモクレスの剣」という言葉がある。ギリシャ神話の中に出てくるシラクサの王ディオニシオスが、王位の権力と栄光を羨む臣下ダモクレスに対し、天井から馬尾の毛一本で剣をつるした王座に座るよう命じ、一見豪華で幸福に見える王者の身辺は、実際は常に危険があること悟らせたという逸話に基づいたヨーロッパの故事成語である。

 昨日、天皇皇后両陛下ご臨席の下行われた東日本大震災二周年追悼式に出席した。愛する家族を一度に失った数多くの遺族に出会った。特に宮城県の遺族代表として言葉を述べた西城卓也さんの話は、涙を誘うものだった。彼はまだ若いが、震災で妻と子どもを失った。妻と一緒に家事をしたり、子どもと遊んだりして過ごした家族との日々を今も思い出すと語っていた。御霊前で言葉を述べている間、会場全体が涙に包まれていた。彼ら遺族の方々は、本当に深い悲しみを乗り越えて、必死で生きようとしている。

 東日本大震災が私たちに示した教訓は数多くあるが、その中に政治の役割の一つとして「災害に強い国づくり」がある。まさしく再び大切な家族を失わないために、いかに「災害に強い国」をつくるか、それが今政治に課せられた非常に大切な課題である。そしてそれが本当の「日本強靭化」なのである。

 京都大学の藤井聡教授は、著書『列島強靭化論』の中で驚くべき歴史的事実を述べている。宮城県沖でM8以上の地震が起きたことは過去2000年間で4回あって、その4回とも前後10年以内に首都直下型地震を伴っているということだ。しかも4回のうち3回は18年以内に南海トラフ地震を伴っているという。

 その歴史的事実について地震科学者は「いくら歴史的にそうだとしても、地震のメカニズムとして連動して起こるかどうかはわからない。だからそういうことは科学的でないから言うべきではない」と言う。しかし政治は、歴史も教訓に最悪の事態を想定して備える必要がある。いざという時に国民の命を守ることこそが政治の使命だからである。

 一方で大半の野党やマスコミは今、自民党が進めている「災害に強い国づくり」、いわゆる「国土強靭化計画」について、「公共事業のバラマキだ」などと批判している。確かに、これまでに明らかになってきたように公共事業をめぐる「政治と金」の問題は存在する。しかし「悪」なのは公共事業をめぐる「政官業の癒着構造」そのものであって、「公共事業」そのものではない。最近の議論はそこをはき違え、公共事業すべてを「悪」としてしまっている。民主党が掲げた「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズはその象徴である。

 しかし、先に述べた京大の藤井教授は、歴史的事実から、8年以内に再び大地震が来る可能性を指摘している。つまり「日本強靭化」は喫緊の課題なのである。東日本大震災を機に、私たちは本当に必要なものは何か、もう一度見直すべきだろう。世界有数の先進国として裕福に見える日本国民は、再び近く起こるかもしれない大震災というまさに「ダモクレスの剣」の下で暮らしていることに気づかなければならないのである。