外交敗北 「第二の河野談話」になりかねない | 武藤貴也オフィシャルブログ「私には、守りたい日本がある。」Powered by Ameba

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国家主権、国家の尊厳と誇りを取り戻す挑戦!品格と優しさ、初志貫徹の気概を持って(滋賀四区衆議院議員武藤貴也のブログ)

「外交敗北」
 昨日、「明治日本の産業革命遺産」が「世界文化遺産」に登録されたということで、各地で喜びの声が上がっている。

 しかし、事はそう単純に喜べる状況ではない。なぜならば、今回の件で日本政府は、「朝鮮人の強制連行や強制労働」(英語で「brought against their will」や「forced to work under harsh conditions」などを使用)を世界の公式の場で認めた挙句、当該遺産に関して「この犠牲者のことを忘れないようにする情報センターの設置など、適切な措置を取る用意がある」と公言してしまったからである。明治産業革命は1850年代から1910年頃までであり、その間朝鮮人徴用工は一人もいないので、本来無関係であったはずなのに、韓国の言い分を受け入れてしまった。

 こんな条件付きの「世界遺産登録」では、日韓の未来志向どころか、過去に縛られる材料をまた新たに作ってしまったといっても過言ではない。今回外務省がすべきだったのは、韓国が反対しても採択に持ち込み、やむを得ない場合は韓国が反対したとしても韓国以外の国の賛同を得て「世界遺産登録」を成し遂げることだったと私は思う。


解決済みの「徴用工賃金未払問題」
 そもそも問題とされている徴用工は、1944年9月から1945年8月終戦までの11ヶ月間、労働力不足を補うために国民徴用令の適用を免除されていた朝鮮人にもそれが適用されたというものだが、当時朝鮮半島は1910年の「韓国併合に関する条約」によって国際法上日本の一部であった為、日本人同様朝鮮人に対して徴用を行ったということ自体は、法的に問題はない。従って戦後、問題となったのは、朝鮮人徴用工の一部賃金未払に関する補償だったのだが、それに関しても1965年の「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」(日韓請求権協定)で解決されたはずだった。

 50年前のこの協定により、日本が韓国に対し、無償3億ドル・有償2億ドルの計5億ドル、さらに民間融資として3億ドルの経済支援をする代わりに、韓国は個人・法人の請求権を放棄するという合意がなされた。協定の第2条1項では請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と明記されている。つまり、徴用工の賃金未払に関しては、日本政府からの経済支援金を使って、韓国政府が元徴用工らへ補償を行なうはずだったわけだ。

 しかし当時の朴正熙大統領(朴槿恵大統領の父)は、この協定の内容を国民に公表することなく、経済支援金を全て公共事業など経済政策に活用した。当時の韓国の国家予算は3億5000万ドル程度で、8億ドルの支援は文字通り莫大な額だった。それにより韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げたとされるが、その一方で元徴用工の補償は行なわれなかった。

 日本の資金援助による経済発展の恩恵は、元徴用工を含む全ての韓国人が享受してきたのであるから、朴正煕大統領の経済政策が完全に誤りであったとは私は思わない。日本からの経済支援の大部分が個人補償や法人補償に当てられていたら、韓国の発展はなかっただろう。しかし個人補償に当てられなかった事を盾にして、元徴用工が日本政府を相手取り賠償請求訴訟を乱発したり、「日韓請求権協定」に合意した韓国政府自身が日本政府を責めたりする今の状況は、全く道理に合わない。日本からすると、まさに開いた口がふさがらない。


国際法無視の韓国政府
 朝鮮問題に詳しい東京基督教大学の西岡力教授は次のように述べている。「反日姿勢を鮮明にしていた盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は、2005年に日韓国交正常化交渉の外交文書を公開し、『韓日会談文書公開の後続対策に関連する民官共同委員会』を作って日本への賠償請求を検討させました。そこでの検討ですら、日本に補償を求めるのは無理と2006年に結論づけられ、元徴用工らには韓国政府が支援すべきだとしていました。しかし、それを『個人の請求権は消失していない』と無理矢理ひっくり返したのが2012年5月の韓国大法院(最高裁判所)判決です。元徴用工や遺族9人による新日鉄(現・新日鉄住金)と三菱重工を相手取った訴訟で、原告の請求権を認める判決を下したのです。これは国際法を無視した判決です。もし、こういうことが今後も起きるのなら、どの国も韓国とは何の条約も結べなくなります」

 今回の「世界遺産登録」の際に日本政府・外務省がすべきだったのは、世界各国にこうした歴史的経緯を繰り返し何度も説明することであり、それに加えて解決済みの問題を覆し、国際法を無視する韓国政府を批判することであったと思う。その上で、どうしても韓国の賛成を得られないのであれば、採決で反対に回られてもやむなしという態度で臨むべきだっただろう。日本的な「和」の精神は、冷厳な国際政治には通用しない。従って、「全会一致」、「日韓関係の未来志向」にこだわったことで、日韓に未来に続く新たな禍根を残した可能性は否めない。


「第二の河野談話」になりかねない
 日韓関係は、目前の問題から目をそむけ友好関係を作ろうとしても、逆効果だと私は思う。「これさえ認めてくれれば幕引きだ」と言われ、信用して譲歩したら、また新たなスタートラインに立つ。慰安婦問題もそうであった。「全てこれで幕引きだ」と言われ、譲歩して発表した「河野談話」から問題が広がることとなった。今回の問題が「第二の河野談話」にならないか、新たな問題の幕開けにならないか、私は大きな懸念を抱く。

 与党の議員の一人として、外務省に対して対韓補償問題は既に「日韓請求権協定」で決着済みのはずだということを再度確認し、更に今回登録された世界文化遺産には徴用工に関しての広報はすべきでないということを改めて主張しようと思う。