普通のタマゴが食べたいと毎日思っている。普通かどうかは生タマゴを食べてみればわかる。健康なタマゴは黄身がしっかりして味も濃厚だ。殻や黄身の色は鶏のエサで変わるからあまり関係がない。子供の頃、庭には鳥小屋があり朝はタマゴを取りに行っていた。最近のタマゴは殻も黄身も弱々しく味も薄い。タマゴかけごはんにして何とも美味しくない。無理やり産まされたような味だ。アヒルや野鳥のタマゴも随分食べたがやはり美味しく、中でもニワトリに一番馴染みがある。何十年も前から値段が変わらないのはタマゴとバナナくらいか。だいたいあんなに美味しく栄養価が高いものが、缶ジュースよりはるかに安いなんて考えられない。
朝食にタマゴ７個、バナナ４本、缶ジュース一本と、同じ価格のものを並べてみると一目瞭然。技術が進み、数万個という量産体制の産物だ。あるものを食べさせたとか、赤タマゴとか、やや高いものも出回っているが、満足出来るものにはお目にかからない。
缶ジュース一本の予算でも良いから美味しいタマゴを朝食に２個食べたい。これだけ遊休農地が有り余っていて何故出来ないのだろう。こうなったら自分で作るしかない。設備投資をかけず、エサ代をかけず、たいした世話もやかず、美味しくて、しかも何か他にいいことあるような、そんな虫のいい「タマゴ」を作りたい。さあどうやって楽をして食べるかだ。
一度だけ本来のタマゴにめぐり合ったことがある。食べて下さいと大量に送ってきたタマゴは美味しく、本来のタマゴだった。聞けば、エサから自分で栽培したらしい。一個６０円で売っているとの事だったが、高いとは思わなかった。今の物価からして高いと思う方がどうかしている。健康なタマゴはそれくらいかかるのが当たり前だ。実家に飼っていた鳥のタマゴより美味しいと感じたのは、農家の友達の庭で放し飼いにされていた鳥のタマゴだった。草むらにあったのをズボンの裾で拭いて、穴を開けて箸でかきまぜ、醤油をたらして飲んだ。たまごは子供にとって何よりの御馳走で、遠足や運動会の弁当には必ず卵焼きやゆで卵が入っていた。今でもその傾向はあるが味については問題にならない。
広い場所で十分運動させ麦を穂ごと食べさせる。確か小さい頃はギシギシを刻んで与え、ニワトリのエサ草と呼んでいた。山菜、薬草の本でギシギシを見た時、そのことが頭に浮かび、今もあまり山菜として食べる気がしない。何となくニワトリの気分になってしまう、偏見はよくないのだが・・・
旨い卵を食べる為の名案は、遊休地に各種果樹を植え、下は山菜、ほうっておいてもギシギシは生えてくる。一部刈り取った草を根元に集めれば微生物が集まり、虫やミミズが増え、木も鳥も育つ。周囲に柵を作り、それに沿って麦と大豆と唐辛子とニンニクを植える。麦の穂は鳥のエサに、大豆とワラで本物の納豆を作る。大豆の青い時期の枝豆はビールのつまみ。真中に寝床用の鳥小屋を作り、果樹園内で放し飼いにする。貝殻や海藻を木に与えれば木だけでなくニワトリも喜ぶ。糞をするから木が喜び果樹園の肥料はいらない。微生物と自然の原理で、数のバランスが良ければ糞の掃除も必要ない。ニワトリにしてやれる事は、麦の刈り取りと、タマゴを掠め取ってあげることだけだ。維持経費はほとんどかからず、うまくいって雑草も新芽のうちから食べ尽くしてくれたら草かりも必要ない。鳥に嫌われた雑草はしょうがないから引き抜いて退散願おう。
食べられて困る野菜には唐辛子の液を噴霧すれば良い。ニンニクとブレンドして虫よけの天然農薬も作ろう。花期には受粉の為、蜜蜂を飼えばローヤルゼリーがタダだ。池を作り、レンコンとドジョウ、ウナギでも入れておけば、鳥や、農産物の水やりの手間が省け、おかずにもなる。ついでに周囲の柵の外にはつる性の自然薯やアケビや豆類を絡ませよう。トロロにむかご飯、豆ご飯、デザートまで出来る。木陰には原木に菌打ちしたシイタケ、ナメコ、エノキタケ。その陰にはミョウガ・・周りの山林にヤブ椿を増やそう、見た目も風情があるが実を搾れば最高の天ぷら油が出来るはずだ。ツバキの葉でワラビやゼンマイのアク抜きも出来る。さらにヤギを飼えば雑草を食べるからエサはいらないし、乳からチーズが・・・そうだ、池にはスッポンだ！ どじょうをもっと繁殖させればエサの心配がない・・・・秋の果樹園での宴に友人を招こう。献立のメインは何と言っても「タマゴかけご飯」、麦トロに、ブツ切り地鶏とキノコ鍋、手作り納豆に山菜の天ぷら、レンコンにドジョウの柳川、天然ウナギの蒲焼、スッポンスープ、ヤギのチーズにヤマモモ酒、ローヤルゼリー、デザートは蜂蜜ヤギヨーグルト、各種果物、アケビ・・・・うーん デリシャス！ トリ、ヤギ、スッポン・・・生ゴミ処理係りもすぐ側に大勢控えている。
考えればキリがないが、たかが普通のタマゴでここまで遊べれば幸せではないか。