スイミン愚物語 スポーツマンヒップ6 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

発見した「二重人格泳法」とは、一言で言うなら前半と後半の泳ぎ方を全く変える泳ぎだ。見るほうも「ありゃ!!」となってしまうほどの泳法だ。

選手は自分の泳ぎを確立しようとフォーム調整に集中する。

これは陸上競技も同じで、おいそれとは変われるものでもなく、まして試合中には無理だ。ボクシングや野球では左右スイッチする場合もあるが、スタイルそのものが変わるわけではない。それを試合中にやることに決めた。

ゆっくりと水の抵抗を考えながら腕をかいていて発見した事は、水をかくラインによって使う筋肉が異なることだ。

元々ピッチが遅いのは、誰よりも深く大きく水をかいていたからで、この泳ぎでは速くかけるものではない。

浅く小さくかけば回転はあがるがこの時の使う筋肉の違いに気がついた。

腕を真っ直ぐに伸ばして深くかく時は押す力、つまり腕の外側の筋肉で、浅くかく時は引っ張る力、内側の筋肉だ。

全力ダッシュすれば筋肉に乳酸がたまり疲労する。つまりバテてしまう。

解決法は前半と後半に使う筋肉を交代させれば良いのだ。

前半が負荷のかかるスローピッチ泳法、後半が浅いハイピッチ泳法だ。

最初の25mは10回水をかくとすれば後半は20回で、二重人格泳法の極意は「スロースロー、クィッククィック」だ。

もう一つの課題、流体力学から水の抵抗を最小限に抑える泳法は、腕の入水から手首の返しと角度、体のグラインド、キックのバランスと、説明しても難しいが・・

名付けて「リーチ一発メンタンピンの法則」

泳ぐ時は常に意識して、「りい~ち、いっぱあ~つ、めんたあ~んぴん~」と頭の中でつぶやきながらフォーム調整をした。

新泳法が馴染んで来ると、今までの泳ぎよりもはるかに楽で速く泳げるのがわかった。

レースは勝利か敗北かの賭けで、その点はマージャンとまったく同じだ。

頭を使わず無欲で頑張って勝てるはずもない。

自分の力を出し切るのはどうするか、反則の水中蹴りはともかく、ファイティングスピリッツは必要だ。

勝てる方法がわかった以上、それからの練習は適当に手を抜いた。

そしてコーチの泳ぎを見て決心した、余興でもう一種目エントリーしようと・・

その種目は、いまだ泳いだ事がない「バタフライ」だった。

今からでも十分試合には間に合うはずで、試合当日までに泳げなければ「棄権」すれば良いのだ。

コーチに主旨を伝え「バタフライ教えろ!」と言うとまた・・・

「正気ですか?」と言われてしまった。