護身術の真髄8 野人敗北する | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

屋久島に住んでいた26歳の時に国家権力に真っ向から立ち向かい敗北した。

道理と正義を通したのだがやり方がまずかった。

トカラ列島の海賊船長と島民から呼ばれ、海に国境はないと自由に黒潮本流の島々を走り回っていた野人を港で待ち伏せして捕獲、取り調べた海猿達を恐喝してしまった。

「お前らは間違っている 役にも立たん巡視船なら底に穴開けて沈めてやろう」

ここまで言っちゃったのだ・・・言っちゃったものは仕方ない。

多勢に1人、大乱闘になったかどうかはやがて「連載 東シナ海流」に書く。

その結果、罰金だけで穏便に済んだかも知れない法令違反は世間に公開されてしまった。

実名、年齢、ヤマハの社名、罪状まで詳しく・・

テレビ、ラジオ、新聞で報道されてしまったのだ。

長期滞在していた船員保険施設で夕食中、自分の名前がテレビから聞こえて来た。

アナウンサーは肝心な事情は語らず野人の罪状の数々を並べ立てていた。

施設のお姉さん方は「出てるよ出てる! すっご~い」と喜び・・

「現在余罪を追及中だって~!」と野人に向かって嬉しそうに言った。

まあ内容などはどうでもよかったのだ、何のことかさっぱりわからないだろう。

「ばかもん・・こうやって普通のメシ食っているではないか」と言ったが、鹿児島の飲み屋やホテルなど何処へ行っても「大変でしたねぇ」と同情されてしまった。

乗ったタクシーの中でも、ラジオの奴がニュースで野人の名を呼ぶのだ。

鹿児島事業所の趣味の悪い女子社員どもに至っては、2社の新聞の切り抜きを額に入れ、壁にかけて絵画展のように眺めていた。

しかし野人は誰にも迷惑などかけていない、人道を貫き、たまたまそれが法に触れただけで、何度でも同じことをやるだろう。

法もまた規則と罰則が一対になっているが、法の目的は人を裁くものではなく守るものなのだ。

他船の故障で磯に孤立した10名を収容、野人の船は既に満船、定員オーバーは承知でボートピープル船となって片道3時間の時化の海を越えて枕崎港まで運んだ。

船は十分な大きさで、乗る配置を決めれば復元力も問題ない。

野人は船長だが設計造船が専門だ。

この船の定員は船舶安全法ではなく海上運送法上での定員だった。

他にも幾つかわけのわからない罪をくっつけられた、逆に表彰状をいただいても良いのに。

その法がおかしいと抗議したのだが、この時は理を持たず敗北しただけのことだ。

通常この程度の事は報道されることはなく書類送検だけなのだが、野人はヤマハの看板を背負い、さらに神妙さに欠け、猿達に言いたい放題の無礼を働いた。

自業自得と言えばそれまでだが、我慢ならなかったから仕方ないだろうな。

調書確認で復唱されるとさらに・・

「そんなことは言っとらんし謝ってもいない 勝手に書くんじゃねえ その項消さんかいこのバカタレ!・・・と言っちゃったのだ。

あれも・・・まずかったな。

しかし、やり方が卑怯ではないか、猿・・・

本来の職務怠慢の上、人を闇討ちにして・・色んなインネンくっつけて。

トドメとばかりに野人を大衆のサラシモノにしちゃって・・

あとが・・こわ~~いぞ


続く・・