土壌サンプル採取
原人と蟲人を連れて最後の土壌採取に出かけた。
協生農法は森羅万象の道理に逆らわず、最大に活用して生産量を高める農法。
肥料や農薬を使わず、草や虫や鳥達が多く集まる環境を維持、彼らが築いた表土構造から生まれる生命エネルギーを活用する。
つまり生命の表土が最も重要、農地が自然環境そのものであり、自然環境がそのまま農地にもなると言うことだ。
環境、生態系を破壊しなければすべての生き物が豊かに暮らせ、地球環境は陸も海も復元する。
土壌成分を調べるのは、自然界や協生農地と既存の農地との比較。
人間が言う「理想的な肥えた成分」ではないのに何故植物が育つのか、それは今の科学では解明出来ない部分だろう。
生命エネルギーの仕組みは、今は解明出来ずともその存在を知ることが第一歩なのだ。
植物は人が手をかけなくとも育つのが当たり前。
人間が土壌と植物そのものに手を加えれば食用植物としての本質を失う。
試しにJAに土壌分析を頼むとこれとこれの成分が不足、満足に野菜は出来ませんと言う結果が返って来た。
そりゃあそうだろう、成分で野菜を肥大させることは最初から考えてはいないし、養殖野菜の標準規格にサイズを合わせる予定もない。
土壌採取だけで終わらないのがこのセファリ隊。
蟲人はエノキを住処にする蝶の幼虫を木の根元から探して熱心に撮影。
野人原人は食材の確保だ。
土に埋まったオニグルミを掘りだし、ノビルも採取、ヤブランの実や根球も持ち帰った。
ヤブランの類似植物は毒草の彼岸花で、根は全く違うから掘ればわかるのだが葉は紛らわしい。
ヤブランの葉は薄く先が細くなり、根はヒゲ根の先に根球がぶら下がっている。
彼岸花の葉は肉厚で先が丸く、根は球根になっている。
戦時中の食糧不足には球根のでんぷんを食用にしたが、毒抜きが不十分で犠牲者も多かった。
ヤブランの根球は甘く生食可、山で遭難した時に命を繋ぐ貴重な食料で山には大量に自生している。
乾燥した根球の生薬名は「大葉麦門冬」(ダイヨウバクモンドウ)で滋養強壮酒にされる。
同じ薬効で「麦門冬」(バクモンドウ)と呼ばれるのは大型芝生のようなジャノヒゲで、通称リュウノヒゲと呼ばれている。
珍しい青い実に風情があり、庭の下草としても使われているが、昔は薬草としての目的もあった。
ナンテンがトイレの横に植えられるのもまた同じで、武家屋敷の名残りだ。
大事なお家の跡目争いが絶えず、当主が毒を盛られたら葉を食べて嘔吐、毒を消す為にかわやの手洗いの横に植えられた。
難を転ずるからナン・テン・・だな。
ヤブランはラン科ではなくユリ科の多年草で、薬草、園芸種としての記述はあっても食用、山菜としては知られていない。
山の遭難非常食として紹介出来たのは・・根も実も野人が生で食ったから・・
水分も豊富で甘くてなかなかイケる。
黒く熟した実も旨いとまでは行かないが、やや甘くて食べられる。
山で命を繋ぐ生食可能なものに「ムカゴ」があるが、春夏冬にはなかなか手に入りづらい。
ヤブランは何処でも周年見つかり、真冬でも根にジューシーな根球をぶらさげている。
だから山の非常食の筆頭に野人が任命した。
その名は藪に生えたランでもユリでもなく中途半端でダサイ。
そこで・・・勝手に改名することにしたのだが・・・
候補は・・
命を繋ぐ卵
「や~舞卵」 や~ぶらん・・
金の玉子のような根球
「金球」 こんたま・・
読者のご注文は・・どっち~?