タネの陰謀 樹木の意思2 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

これから11月にかけては木の実の季節。

5月から7月はキイチゴやクワなどのベリー類が中心で甘酸っぱい果肉を食べるが、秋はさらにシバグリ、シイ、クルミ、カヤなど種子を食べるナッツ類が出回る。

果肉を食べる秋の木の実にはサルナシ、イヌビワ、ムク、イチイ、アケビ、ムベ、ヤマボウシなどがあり、11月からは唯一冬に熟すベリー「フユイチゴ」がどの山でも見られるようになる。

甘い果肉を持つ実は鳥に食べさせて種子を運ばせるのが目的だから仕込んだ種は小さい。

硬い果皮を持つドングリなどのナッツ類は主に哺乳類に遠くへ運ばせるのが樹木の意思だ。重要な動物の食糧として食べさせる為に大量の実を付け、その一部が発芽すれば良いと言う「ギブ&テイク」の協生的な考えからその仕組みは出来上がった。

大きくて硬いナッツを丸呑み、消化もせずうんこと共に撒き散らす動物はいない。

甘い果肉に包まれた小さな種ならともかくナッツ類は鳥には困難。

猪や熊やタヌキなどは殻を食い破り根こそぎ食べて、まかり間違っても遠くに運び埋める趣味はないから対象外。

猿に至っては未熟な内から木に登り食べ尽くすので迷惑千万、棒で叩き落として家に持ち帰り種の中身だけ食う人間は樹木の天敵とも言える。

硬いナッツを実らせる樹木は、実を遠くへ運んで埋めてくれるリスの仲間と同盟を結び、協生して勢力を伸ばした。

冬に備えて大量の実を分散して土に埋めるのだが、埋めた場所を忘れてしまうからそのうちの何個かが発芽するのだ。

もう一つの方法が川を利用して下流に種子を運び流域に沿って発芽させることだ。

丈夫で水に浮く木の実はさらに海を渡って遠くへ運ばれて行く、ドングリだけでなく椰子の実もそうして海を渡り島々へ広がった。

樹木に限らず海浜植物のツルナやハマボウフウの種子も同じ方法で勢力を広げて行った。


続く・・


猿梨とあけび 果実本来の味

http://ameblo.jp/muu8/entry-11048979960.html

「苦味」は木の実の毒を見分ける為の味覚

http://ameblo.jp/muu8/entry-10836184353.html


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