鳥が描かれた曳山や襖絵など 来年の干支「酉」で曳山博企画展 | 近江毎夕新聞

鳥が描かれた曳山や襖絵など 来年の干支「酉」で曳山博企画展

 長浜市元浜町の長浜市曳山博物館で十二日から年末年始恒例の企画展「シリーズ干支『酉(とり)』」が始まった。近年国際的に評価が高まる江戸時代中期の絵師、伊藤若冲(一七一六~一八〇〇)の双鶏図を織物にした曳山まつりの曳山の胴幕(曳山両側面に吊るす飾り幕)や、京都から長浜に移り住んだ絵師、山縣岐鳳(一七七六~一八四七)や、その弟子で、浅井郡下八木村(現長浜市下八木町)出身の絵師、八木奇峰(一八〇四~一八七六)が描いた鶏図など十件を展示する。一月二十九日まで。
 展示品には、長浜の豪商・浅見又蔵が明治天皇の行在所として建てた迎賓館「慶雲館」の襖絵「群鶴図」が初めて館外展示された。同図は明治二十年の館完成当時にはなかったとみられ、作者は不明。狩野派や土佐派の描法と異なることから、地方の絵師が描いたとみられている。同襖は今月二十八日までの展示。また山縣岐鳳の旭鶴図、八木奇峰の「鶏図」は一月四日から同二十九日までの展示となる。
 曳山博のシリーズ干支展は平成二十五年の巳(み)から始まり今回で五度目。「酉」は干支の十番目、方角では西、時刻では午後六時前後、動物では「鶏」を指す。曳山博によると、鶏は飼育鳥として古代から日本人の生活と密接に関係し、各地に吉兆を告げる瑞鳥伝説や、鶏が神の使者とされる伊勢神宮など、鶏を尊ぶ風習があるという。 
 また館内無料展示コーナーでは長浜曳山まつりのユネスコ無形文化遺産登録を記念した特別陳列「山組のシンボル カンバン・扇・提灯」を同時開催中。
 開館は午前九時から午後五時。入館料は六百円。小中学生三百円。長浜、米原両市の小中学生は無料。二十九日から一月三日までは休館。
 展示の一部は次の通り。
 ▽諌皷山胴幕「紫陽花双鶏図」「旭日双鶏図」=若冲の精緻な描法で描かれた雌雄の鶏、アジサイ、岩、太陽、フヨウなど絵を綴(つづれ)織り錦地に、約三百色、合糸色約千色の絹糸、金糸で織り上げた作品。
 ▽慶雲館襖「群鶴図」=明治~大正時代の作品。作者不詳。金砂子を散らしたなかに、タンチョウヅル、マナヅル、ナベヅルなど二十羽が様々な姿態で描かれている。慶雲館完成の明治二十年当時の写真では確認されず、のちに制作、設置されたらしい。
 ▽八木奇峰筆「鶏図」=江戸時代後期、八木奇峰壮年期までの作品とみられる。大きな雄鶏、一回り小さい雌鶏が向き合い、手前にヒナ三羽、背景に朝顔を配して、独特の安定した構図としている。緻密な描写と抑制された彩色が特徴。県立美術館所蔵品。
〔写真〕八木奇峰の「鶏(とり)図」