イチロー選手×小西慶三氏 対談③ | HERO

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私の尊敬するMichael Jackson、Audrey Hepburn、イチロー選手、中田英寿氏について熱~く綴っていきます。

その③~「僕は甘い球なんて待っていない」~



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           (オリックス時代のイチロー選手)


~92年当時の1軍昇格を伝えたマネージャーに話を訊けたのですが

51『ヤスイさんですね。僕はその時(1軍の遠征先が)福岡だったんですけれど、福岡に着いてスーツケースを開けたら“頑張れ鈴木”って紙にペンで書いたのが入っていて。かっこいい事をする人っだったんですよ。あれは感動しましたね。』


~当時一軍に合流したイチロー選手の事をヤスイさんは「すごく心配だった」と、心配だった理由を訊いても「上手く言えない」と仰っていました

51『僕の性格からして、多分生意気な事は分かっていたから、果たしてあれだけの面子の中に、18歳で一人でチームに入って行けるだろうかっていうのはあったと思いますね。(神戸から福岡に向かう新幹線で)いきなりグリーン車で行きましたからね、僕。』


~初ヒットを打つ前の晩は何をしていたのですか?

51『(福岡に)着いた翌日ではないんですよね、きっと。翌々日の事ですよね。だから、前日の晩って全然覚えていないんですよね。その前の着いた夜は覚えているんです。新神戸から博多に着いて、宿舎までタクシー移動したら、ロビーに松永さんとかの主力が3人くらい座っていたんですよ。コワ~って思って(笑)。「明日から合流させていただきます鈴木と申します。宜しくどうぞ」って言ったんですよ。「宜しくどうぞ」ではないですね、「宜しくお願いします」と。(うちわで扇ぐ仕草をしながら、先輩達が)「おお、あ~、ふ~ん」みたいな感じで。あれは強烈に印象に残っていますね。うわ、エライとこに来たなって。あれはまいりましたね。自由席で来るべきだったかな~って、その事を松永さんも知ることになるんだろうな~って(笑)』


~グリーン車で来たことを後でいじられるから?(笑)

51『だって嫌々乗っているんだから、グリーン車ぐらい乗せてくれって話ですよ(笑)。それがプロ野球の世界だって思っていたので、そこはいかせてもらいますとグリーン車で。行ったら、今度合宿所帰って朝ご飯食べてたとき、一人一人が(後ろから)頭をバチーンッバチーンッて叩いていくんですよ。「おはようございます!」って挨拶しても、誰も返事してくれないんですよ(笑)。みんな僕の頭を叩きに来てるんですよ。僕なんかしたかなぁって思ったら、そこ(グリーン車で行った事)だったんですよ。
 飛行機もそうだったんです。飛行機は東京から福岡とかは飛行機に乗るんですけど、その他の地方ではバスだったり、基本的には新幹線なんですよね。それで飛行機移動のときがあって、1軍に上がって少し経った時に、デカさん(高橋智選手)と小川さんと僕がよく一緒にいたので、(飛行機移動では)基本的にみんなエコノミーなんですよね。(ある時)監督は前だったんですよね。デカさんと小川さんは自分でお金を払ってスーパーシートに乗ったので、「僕は後ろに行きます」って言ったらデカさんが、「お前、イチも来いよ」って、「いやぁ、それはマズイですよ~、さすがにグリーン車のこともあるし」って言ってたら、デカさんが、「お前この世界に入ったんだから、自分の金払っていくんだから、それが体調管理なんだからな」と。それはそうだなと(笑)。そりゃそうだ、この世界そうだって。で、いくらか払ってスーパーシートに乗ったんですよ。凄いなって。それで(スーパシートに)乗っていたのは、土井監督とデカさんと小川さんと(ルーキーの)僕だけだったんですよ(笑)。で、松永さんとか(主力陣)は全員後ろで僕はスーパーシート。もうその時は頭ボッコボコですよ(笑)。「でもそんなぁ、デカさん言ってくれたし」って言っても聞いてくれないですよ。その事を鮮明に覚えていますね、この二つは。』



~その(グリーン車で行った)2日後に初ヒットを打ったのですが、どんなボールを打ったのか記憶にありますか?

51『スライダーじゃないですかね、インサイドに来るスライダー、ちょっと前気味でおよいだ感じになったと思うんですけれど。』


~打たれたピッチャーの木村恵二さんにその時の話を訊いたのですが、打たれてそのイニングが終わってベンチに帰ってきた時に「あいつ(イチロー選手)高校出のルーキーだよ」って聞かされてびっくりしたそうです。

51『その話聞いたことないですよ、本当の話ですか?』



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             (福岡ダイエーホークス時代の木村恵二さん)


~というのは、木村さんは社会人でもプレー経験があるんですけれども、やはり高校出の新人っていうのはまっすぐに負けたり変化球についていけなかったりっていうのがほとんどなんだそうです。そういうのが全然なくて綺麗に打ち返された、ベンチに帰って高卒ルーキーと知って凄く驚いたと仰っていました。

51『それは初めて聞く話です。木村さんってピッチャーとしてその当時はなんとも思わなかったんですよ。なんとも思わなかったんです。“僕プロでいけるな”って思わせてくれる存在だったんです。失礼な言い方ですけど。でも、段々違ってきたんですよ木村さんって。西武行ってから全然打ってないです。全然打ててないんですよ。なんとなく嫌なピッチャーになってきたんですよ。』


~木村さんは94年以降はもう駄目だと、イチロー選手がどんどん技術が上がっていって体制が崩されていても強い打球が飛ぶ割合が増えていてお手上げだと。じゃあどうするかとなって、西武に行ったくらいからとにかく、甘いスライダーを打ち損じる傾向が強いからそればっかり投げていた、と仰っていました。

51『やっぱり西武の時なんですよね。それを木村さんが感じているのは。だから打っていないんですよ。へ~面白いなぁ。』


~いいバッター甘い球を突然投げられたときに打てないのではないかと

51『それは確かに、正解だと思うんですよ。僕は甘い球なんて待っていないですよ、今は。昔は甘い球ばかり待っていたんです、18の頃は。甘い球しか打てないから。でも今は甘い球なんて来ないと思っているからそれ以外のところで待っていたりするんですよね。これも大きな変化ではないですか、18の頃からの。ピッチャーからそこに投げられて打ち損じるというのは、そういうことだと思うんですよね。待っていたら打ちますよ勿論。でも不意をつかれるとそうなるのは確かにありますよね。』


  ④につづく。。。