中東情勢の不安定化を考えると、日本もエネルギー安全保障の観点から、エネルギーの自給を真剣に考える必要があると思います。 これまで日本では、これを原子力に頼る考えをとってきましたが、私は総理として福島原発事故に直面した経験から、原子力ではなく再生可能エネルギーによってエネルギーの自給を実現すべきだ、と訴えてきました。

「そんなことは実現不可能だ」という意見は、今も根強くあります。しかし私は、日本国内はおろか、世界の人類が必要とするすべてのエネルギーを再生可能エネルギーに代替することは可能だと確信しています。全ての国がその方向に向けて積極的に政策を展開すれば、50年以内に実現できるでしょう。これは単なる希望的予測ではありません。科学的根拠に基づいての予測です。

水力、風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーは、地熱などを除いてほぼ全てが、太陽から地球に届くエネルギーを利用したものです。物理学者の計算によれば、太陽から地球に届くエネルギーの量は、現在人類が消費している全エネルギーの1万倍あるそうです。

太陽光をエネルギーに変えるには、ソーラーパネルを設置するための広大な土地が必要になります。しかし、日本にある約400万ヘクタールの農地に、3メートル程度の高さの柱を立て、間隔をあけてソーラーパネルを設置し、発電と営農を両立させた「ソーラーシェアリング」という方法を取れば、農作物の生産を減らすことなく、日本が1年間に消費している電力の約2倍にあたる2兆kwhを発生できます。農林水産省も「原理的にはその通り」と認めています。

太陽からのエネルギーは、北極と南極を除けば地球上どこでも利用できます。原理的には、地球上の全ての国において、エネルギー自給が可能になるということです。

再生可能エネルギーは「脱化石燃料」など環境問題の観点から期待を集めてきました。国際紛争の原因の多くがエネルギー争奪に関係してきたことを考えれば、環境的観点だけでなく国際紛争の大きな原因がなくなり、世界の平和にも貢献すると思います。