ヤハラヅカサ・・・琉球開闢の神アマミキヨがニライカナイから上陸した際の第一歩を印した場所と伝えられている。
7月2日の夜このヤハラヅカサで小さな奇跡が起きた。
この日友人夫妻と波乗りへ行く予定で、沖縄本島の南城市へ向かう途中夫妻からメッセージが届いた。
「実ちゃん、朝起きたら破水した。」
まぢかぁ、おぃおぃ君達ハワイで出産する予定だったよね(笑)
あまりの急な展開でてっきり病院へ直行と思っていた。
「どこの海で産むか検討中(笑)」
この婦人初産なのに余裕すら感じる。
友人宅へ到着すると丁度これから海へ行く所だった。
周りを見渡した所産婆さんも医者もいない。
二人だけで出産すると言う。
野次馬根性8割心配2割で遠巻きに見守らせて頂く事にした。
ヤハラヅカサに着いた頃には日が落ちて間もなく少し薄明かるかった。
神聖な場所にふさわしい荘厳な雰囲気が漂う。
二人が御嶽に向かい神妙に手を合わす。
海岸に出ると何人かのグループがテントを張りキャンプをしていた。
何か事があった時は人数が多いほうが何かと良い。
そんな考えがよぎる。
自分は心配性なのでその雰囲気を二人に悟られないよう距離を置く事にした。
夜空は満天の星空たちに埋め尽くされている。
夫人に陣痛が訪れたようで悲鳴のような、叫びが静寂を切り裂く。
あまりの痛みの為か夫人は一度家に戻ると言いだしたが、少しすると意を決したようで再び海へと戻る。
闇の中何度も何度も叫びがあがる。
医者へ連れて行こうか。
二人が決めた事。只ただ静かに見守ろう。
本人たちの納得の行くように。
思惑が固まる。
明け方くらいかな?
勝手に予想をたてて星空を見上げる。
ふいに叫びが聞こえなくなる。
「元気に泣いてるよ~」
旦那の声が聞こえる。
え?もう?空耳か?
「ついてるよ~」
え?男の子?鳴き声は?
あわてて駆け出す。
「オギャア~!オギャア~!」
聞こえた。赤ん坊の確かな鳴き声が。
思わず笑みがこぼれる。
とてつもない安産だ。
赤ん坊を見たかったが夫人が全裸なので近づけない。
「写真撮って~」
旦那の声。
なぜか自分もフルチンで海に入り記念撮影をする。
最高の笑顔。
ここでこうする事がずっと前から決まっていた気がする。
不思議な感覚。
他人の出産に立ち会うのは初めてだ。
生まれたての赤ちゃんは全く他人の気がしない。
もしかしたらこれはとても大切な事。
これが世界中に広がれば良い。
誰もが美しい海を望み、誰の子供も自分の子供のように感じる世界。
そうなれば世界は自然に良くなる。
もしもし赤ちゃん。
君は奇跡の始まり。
誰もが笑って暮らせる世界にしよう。
未来永劫続く子孫達のために。
初めて我が子を抱いた時。
満天の星空を見上げた時。
この世界は奇跡で出来ている。
ハッピーバースデー。
おちんちん。
君はどんなMy storyを選んだのかな。
素敵な人生へようこそ。