猫の絵本用。第4話


改訂版、Vr.4



タイトル

「ぽこにゃんのラーメン」




ラーメンぽこにゃん。猫の毛が1本も入っていないスープと、猫の毛が1本も入っていない手打ちの麺が自慢のお店。オープンしたばかりで、今はまだ人気がない。



3日間で2人しかお客さんが来なかった。


ひとりめはちびた。そして、ふたりめはまたろう。


お客様がいない店内のラジオの音が、さらにわびしい気持ちにさせた。ヒマすぎてあくびが止まらない。


5日目。マミタスがミルクバンと来てくれた。


わたしは、ダイエットを忘れて、タンメンと塩ラーメンと味噌ラーメン。


じゃあ、わたしは、宇宙の平和を祈りながら醤油ラーメン大盛を3つ。それに餃子5人前。


つられてマミタスも餃子3人前。


あれ?他のみんなは?


すると、他のみんなは寝ていたり、先にたべちゃったから、またにすると言っていたとマミタスは伝えた。


だが実は違う!


その頃、家では、みんながラーメンぽこにゃんの噂話をしていた。


どうせすぐに潰れるよ。


ぽこにゃんがラーメンなんか作れるはずないじゃん!今までラーメンなんて作ったことないんだから。


なんか、スープにさ、猫の毛がいっぱい入ってそうだよね。みんな、言いたい放題だ。


ただいまー。


マミタスとミルクバンが帰宅した。どうだった?とたずねると、普通のラーメン屋だったよという。


味は?まぁまぁ。普通の味。乱立するラーメン屋の激戦区域と言われる中野で生き残るのは難しいかもな。という感想だった。



その時、オープン後、はじめて店内の電話が鳴った。あわてて受話器をとった。はい!ラーメンぽこにゃんです。


出前ですね!!はい!わかりました!ラーメン一丁!ありがとうございます!


初めての出前だ。ぽこにゃんは嬉しかった。


それにしても遠い。福岡県というところらしい。どこだろうか。ぽこにゃんはなんにも知らない。


貯金をはたいて新幹線に乗り込んだ。


半日かかって届けたが、遅い!冷めてる!麺がのびてる!盛り付けがぐちゃぐちゃで不味そう!と言われて怒られてしまった。玄関の足元には違う店のラーメンの器が置かれていた。その器を、まいど!と言ってどこかの店の店員が持って帰った。


せっかく張りきって来たのに。がっかり。こんな離れた長距離の出前を引き受けるのはもうやめよう。ぽこにゃんは元気をなくしてしまった。



人生はなかなか上手くいかないな。



夕暮れ時。うつむきながら、さみしく歩くぽこにゃん。



帰ろうか。肩を落としてとぼとぼと、落ち込みながら歩いていると、どこからか美味しそうな匂いがしてきた。つられて行くと川沿いにラーメンの屋台があった。


ぐグぅー。お腹のむしが鳴いた。朝から何も食べていなかった。早速、屋台に飛び込んだ。


ラーメンください。一杯頼んで食べてみた。すると、これが信じられないほど美味しかった。一気に食べた。夢中でスープを飲み干してマスターに話しかけた。


僕は、中野でラーメン屋をしている、ぽこにゃんというものです。今までこんな美味しいラーメンを食べたことがありません。どうか僕にこの美味しい味を伝授してください。お願いします!それから、お師匠様のお名前は?


わしか?わしの名は、たりん。ここで昔からラーメンをこしらえてきた老いぼれじゃ。


わしの弟子になりたいなら、まず、君のラーメンを作ってこのわしに一杯喰わせてもらえんかね?それから考えよう。


ぽこにゃんはいつものラーメンを作ってだした。屋台のおじいさん、たりんはぽこにゃんのラーメンをだまって全部食べた。かたずを飲んで見守るぽこにゃん。たりんはスープまで全部飲み干して器を置いた。



まずい!!スープがなっとらん!マタタビも入ってないな。これじゃだめじゃ。ラーメンになっとらん!!



たりん師匠の厳しい修行が始まった。



麺を叩け!爪をたてずに肉球で、やさしく強く美しくしなやかに、たおやかに叩け!最高の麺を作るために!


スープを煮込む!目を離すな!集中しろ!言わば月を指差すのと同じだ!いや、違う!指先にとらわれてはいけない!指先にとらわれていては、その先にある美しい物を見失ってしまうからだ。そこに最高のスープがあるのじゃよ!


ナルトを作るために釣りをする。油断大敵。耳をすませるんじゃ!心の目で見るんだ。気配を感じろ!そうだ!考えるな!感じるのじゃ!。



よいか?わしが作る様子を見せてやるから。よーく見て我が物にしていくがよいぞ!



ラーメンはな、心で作るんじゃ。


ハートがあたたかい猫にしか旨いラーメンは作れんのじゃよ。



ぽこにゃんの頬に泪がこぼれ落ちた。福岡にきてよかった。ありがとうお師匠様。



中野に戻ったぽこにゃん。目の輝きが違う!心機一転!材料から代えて、ラーメンを作った。


できた!これがあたらしいラーメンだ!


福岡の屋台のお師匠様の名前をつけて、たりんラーメンと名付けた!


たりんラーメンは大変な反響を呼んで、テレビでも紹介された。


その紹介のニュースをたまたまルナが見た。


ラーメンぽこにゃん、凄い反響らしいじゃん!


みんなで行ってみると凄い行列ができていた。


今日は、うちのみんなが来てくれたから貸しきり!


へい!お待ちどう!たりんラーメンだよ。


マミタス、ミルクバン、ルナ、ちびた、らいじろう、ねぎ、ショコラ、またろう、つくし。全員にたりんラーメンを出した。みんなが食べた。


どうだい新作のラーメンのお味は?


うまい!!!!!!!!!


一同に口をそろえて大絶賛!!好評!!


マミタスは4杯、ミルクバンは7杯おかわりした。


すごい美味しいよ!。どうやって作ったの?


ちょっこし修行をしてきたのさ。すごい先生を見つけてね。


ぽこにゃんの脳裏にお師匠様のたりんの面影が浮かぶ。



ぽこにゃんは立ち上がって胸を張った。



ラーメンはね、心で作るんだよ!。


ハートのあたたかい猫にしか旨いラーメンは作れないんだ!



ぽこにゃんは誇らしげに言いきった。


今日のぽこにゃんは、カッコいい!


ぽこにゃんはまた1つおとなになったように、みんなの目には見えた。



今度は、産まれて初めて食べたラーメンの味に感動した仔猫のつくしが立ち上がった。


ラーメン美味しかったから、みんなでぽこにゃんのお店を手伝おうよ!


マミタスは洗い場の手伝いをはじめた。


らいじろうとミルクバンはビラくばり。


ねぎとつくしはお花や猫じゃらしをつんできて店内にかわいく飾り付けした。


またろうは拭き掃除をした。


ちびたとショコラはホールで案内係やお水を注ぐ。


ルナはレジと接客係。絵もまたろうが描いてくれて店内に飾った。


みんな本当にどうもありがとう。みんなのおかげでかわいらしいお店になったよ!


こちらこそありがとう。
美味しいラーメンのお礼だよ。



華やかになった店内は活気に溢れていた。
もうラジオの音にわびしさを感じることもない。
あくびをするひまもないくらい繁盛した。



潰れそうだった。しかしぽこにゃんはみんなと共にお店のピンチをきり抜けることができた。


お師匠様のたりんに手紙を書いた。

前略お師匠様お元気でしょうか。
中野のぽこにゃんです。
お師匠様のおかげで味が良くなりまして
中野で一番人気のラーメン店になりました。
ありがとうございました。
今度、食べにきてください。

中野行きの往復切符を同封します。
お待ちしております。

ぽこにゃんより。


お師匠様のたりんは遠い空を眺めながら満足そうに微笑んでいた。



人気店の仲間入りができた。ぽこにゃんは今日も嬉しそうにのれんをかけて店を開けた。ラーメンぽこにゃん営業中だよ!



忙しい1日が終わろうとしていたその時、一人のお客様が扉を開けた!


いらっしゃいませ!


わしに、ラーメンを一杯くれんかのう。


ああ!!お師匠様だ!!食べにきてくれたんですね!


お師匠様との再会。涙が出るほど嬉しい!


ぽこにゃんは早速ラーメンを作り、お師匠様に差し出した。黙って食べるお師匠様。スープまで飲み干して器を置いた。



合格じゃ!!微笑むお師匠様。



ぽこにゃんはお師匠様の合格をいただき、嬉しさと誇らしい気持ちをしみじみと噛み締めた。



ラーメンぽこにゃん。猫の毛が1本も入っていないスープと、猫の毛が1本も入っていない手打ちの麺が自慢のお店。




「ぽこにゃんのラーメン」

おしまい。
 
 
              しようこ